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「何をしたんです。
その嘘つきとかいう能力を使ったのでしょう。
言ってみなさい」
仮面の紳士が机をたたく。
紳士の横は13日の金曜日と言った巨艦の仮面が2人で固めている。
その筋肉は仁王といったところか。
団長と渋沢さんが顔を見合わせる。
相手の怒りに対して、こっちは何を言ってるのかわからないという様子。
「いえ、わたしたちは普通に公演をしているだけですよ」
団長が答える。
「そ、そんなはずはありません。
わたしたちの高尚な舞台が、あなた方の低俗なサーカスに負けるなんて。
誰にでもできる芸と伝統が鍛えた芸術。
素人にもどっちが優れているかわかるはずです」
「ええ、確かに。
仮面劇場様の仮面劇には定評があります。
わたしも一度見せていただいたことがあります。
見事な伝統芸能でした」
「そのとおりです。
だから、こんなことはありえないのです。
なにかずるい手を使ったのでしょう」
「しかし、周りを見渡すと寝ている人が大半でした」
「中にはそういう輩もいます。
芸術なんてわからない下賤の者がね」
「それが、わたしたちのサーカスを見に来てくれたと思っていただけませんかね。
つまり、わたしたちのステージは大衆芸能なのです」
「それだけでは説明できないほどの客の入りです。
どうせ、何かじゃまをしているのでしょう。
知っていますか。
他の舞台の妨害をすることは、協会でも禁止されています。
表現の自由を守るためというのが、その理由です。
主に公権力に対してのものですが、協会員にも適用されます。
我々の憲法は舞台での自由を守ることにあるのです」
「まだ、近くで興行していれば、あなた方のところにお客様が入ったかもしれません。
こっちは女子供中心に考えています。
ちかくでやっていれば、別々のものを観ることができました。
しかし、私どもは北の丘まで追いやられたのです」
気の毒そうに言う団長。
「覚えていてください」
仮面紳士は、おきまりの捨て台詞を唱えてテントを出ていくのであった。




