03
「しかたないです。
協会前の広場に移動しましょう」
団長がみんなを集めて言う。
ぼくたちは移動の準備を始める。
「それにしても、無茶言うよな」
風太さんは高所の仕事をしながら愚痴る。
そう、元鳶だったことがこういう時に生きてくるのだ。
そして、その技を真似できるぼく。
今なら、はしごの上で逆立ちができるレベルになっている。
高所の仕事の進行度が飛躍的に上がったって言われている。
「そうですね」
ぼくもテントをバラしながら返事をする。
「やっちまえばいいのにさ。
どう考えても向こうが悪いだろう」
「でも、あの仮面の人。強いですよ。
この前、魔王会議で戦ったんですけど、なんかとらえどころがないというか。
一発もあてることができなかったです」
「晃で、無理なのか。
じゃあ、難しいな。
魔王さまが出てくれたらいいんだけど…
あの人は神出鬼没だからな。
いつ出てくるかわかんないからな。
なんか連絡をとれる方法があればいいんだけどな」
「そうなんですね。
あの人を呼ぶことはできないんですね」
「そう、気まぐれなんだ。
まるで、猫みたいに。
でも、なんかあったら出てきてくれるから、大丈夫じゃね」
本当に適当な人だ。
でも、あの魔王が出てきたら仮面劇場くらいぶっ飛ばしてくれそうな気がする。
その時クロが梁を歩いてくる。
そう、猫たちにとって、サーカスのテントはキャットウォークとなる。
とくに、クロは運動神経がいいのか、どんなところにも上ってくるのだ。
ぼくを見つけるとこっちに歩いてくる。
そして、ぼくの肩に乗る。
そう、こいつは仕事のじゃまをする天才だ。
人間を働きすぎないようにしているのかもしれない。
「晃さん、休憩の時間です」
下から星姫さんが手を振る。
「じゃあ、休憩にするか」
風太さんも手をとめる。
ぼくは、クロを抱えたまま、ロープを伝って下に降りていくのだった。




