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「じゃあ、頼んだよ」
渋沢さんはポンとぼくの肩を叩く。
「前川君なら大丈夫だよ。
だって剣聖と大魔導士の力をもっているのだから。
それに…
まあ、がんばってよ。
ぼくたちのサーカス団のために」
団長も気楽にぼくに微笑みかける。
「それにしても、渋沢さんの作戦はたいしたものです。
やっぱり弱そうにみせたら、つられるやつがいました。
青蛇派の仮面劇場ですか…
序列9位と言ったところですね。
作戦通りです。
さすがカリスマ経営者ですね」
え…どういうこと?
「普通にやってたら時間がかかりますからね。
これに勝ったら序列がひとつ上がります。
前川くんなら楽勝でしょう」
いや、だから…
「あとは前川君の仕事です。
よろしくお願いします」
団長は笑顔を崩さない。
まったく、ぼくが負けるなんて思っていないみたいだ。
そればかりかクロまで、たのんだというようにぼくを見上げる。
「じゃあ、前川君はおいしいものでも食べて明日にそなえてください」
大人たちは、気楽に食事をしながらお酒を飲む。
それに比べて、ぼくは明日のことを考えただけで食事どころじゃなくなる。
このレストランはメトロシティでも有名なところらしい。
向こうの世界でいう三ツ星とかそんなやつみたいだ。
たしかにすごく上品な料理が並べられる。
それから、魔王会議の参加者はタダで食べられるとのことだ。
だから、団長たちは高そうなお酒を楽しんでいるのだ。
ぼくの気持ちも知らずにだ。
もう、仕方ない。
これは僕のせいじゃないのだ。
もし負けても団長と渋沢さんの見通しが甘かったのだ。
ぼくは開き直る。
やっと味がわかるようになる。
たしかにすごくおいしい。
でも量が圧倒的に少ない。
ぼくは、目の前の料理を片付けて、ステーキのお替りをするのだった。
ナー。クロの鳴く声。
足元ではクロがぼくに肉のおすそ分けをねだるのだった。




