06
飛空船の下に大きな町が見えてくる。
団長の話では劇場都市メトロシティ。
興行師たちの自由都市とのことだ。
その中心には劇場が軒を連ね、王国や共和国に統治されない都市国家だ。
税金が他の国に比べて安いから租税回避地となっている。
その中心にはオリンピア大劇場があり、そこで公演ができるのが12の興行団なのだ。
ぼくたちのサーカス団も今回その権利を手に入れたのだ。
ただ、大手の興行団の規模は大きく何百人という人員を誇るものも少なくない。
その中では、ぼくたちのサーカスは吹けば飛ぶようなものにすぎない。
だから、その地位を狙う興行団も少なくない。
その上、他の役員たちにふさわしくないと思われれば潰されてしまう。
それは文字通りの意味だ。
元の世界と違って腕力がものを言うこともあるのだ。
だから舐められないようにしないとならない。
グレゴリオ団長が言うには、はったりは得意とのことだ。
渋沢さんもすごく貫禄のある人だし…
いちばんやばいのがぼく?
ボディガードとしては身体も小さいし、強そうに見えない。
団長は黙って居てくれたらいいというけど、不安は隠せない。
とりあえず、豪華そうな剣を渡される。
あと、ピエロの衣装も渡される。
まさか、この格好をするの?
団長は静かに首を縦に振る。
「前川くんはまだ僕たちみたいに演技することはできないでしょう。
だから、表情を読まれないようにしないとならないんです。
ピエロの恰好をすればいつでも笑っているように見えます。
それはそれで不気味なものですよ。
交渉相手にとってはね」
団長はニヤリと笑う。
渋沢さんも同じだ。
この2人、やっぱすごい安心感がある。
ぼくの膝の上の黒猫も目を覚まして、伸びをする。
なんか、こいつも任せておけというようにニャーと鳴く。
君には期待はしていないよ。
でも、団長のことだ。
この子にもなにかの役割があるのかもしれない。
「その時は頼むよ」
そう言って、クロの頭を撫でる。
クロは自分からぼくの手に頭をこすりつけてニャーと鳴く。
クロは人間の言葉がわかるのかもしれない。
そうとしか思えないタイミングで返事をするのだ。
でも、それは猫バカのよく言うことだけどね。
猫の飼い主はみんな自分の猫は言葉がわかると思っているのだ。
ぼくもその域に達してきたのかな。
ぼくは膝の上のマスコットののどの下を撫でる。
クロはゴロゴロとのどを鳴らし始めるのだった。




