02
「これからどこに行くんですか?」
「次はチェスターの町ですよ。
ここから少し南の港町です。
今回のフーリカの町より少し大きいくらいです。
でも、まだ一週間はかかりますがね。
元の世界の電車とかがあればいいのですが…
こちらは馬車が主な移動手段ですからね」
「でも、なぜ僕がこの馬車なのですか?」
乗っているのは団長と事務のことを仕切っている渋沢さんというおじさんだ。
それから猫のクロ。
こいつはこの前からぼくになついている。
今日もぼくの膝の上に乗って眠っている。
本当は星姫さんたちの馬車に乗っててもおかしくないのにな。
あっ、でも星姫さんといっしょにいたいというのだけでなく、ステージのこととかいろいろ話し合いたいから。
まだ、もっといい演出とかできそうだし。
もう、ぼくも一端の舞台人の卵となっていた。
ショーのことばかり考えるようになっている。
それと同じ年代どうしで気をつかわなくていいからね。
他の配車はそんな感じになっているのに。
「それは少し寄り道をするからです。
大事な会議がありましてね」
「会議?」
「そう、世界興業者組合会議総会が開かれるのです。
別名、魔王会議です。
この間、黒猫サーカス団もその一柱に選ばれましてね」
「そうなんだ。
まあ、向こうの世界で言う商工会議所みたいなものだ。
今、役員に選ばれているのは12の興行団だ。
そのうちのひとつに数えられたということだよ」
渋沢さんが口をはさむ。
なんか、団長と違って偉そうなしゃべり方をする。
確かにロマンスグレイの髪をきちんとセットした初老の人だ。
それに言いようもない貫禄みたいなものを持っている。
元の世界では偉い人だったのかもしれない。
ん?
いや、見たことがある。
なんかニュースかなんかで…
そうだ。通信業界に参入してSモバイルデータを3大通信業者に育て上げたカリスマ社長。
たしか、渋沢社長と言ってた気がする。
「晃くん、もしかして気が付いた?
この人はSモバイルの渋沢社長だよ。
通信業界の革命児、わかる?」
団長は誇らしそうに言う。
そして、渋沢さんは温厚な笑みを浮かべるのだった。




