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殺戮劇の幕があがった。
ぼくは魔王というと、あのRPGのラスボスみたいなのを想像していた。
悪魔みたいな恰好をしていて、とにかくでかくて強い。
そういうのが魔王のイメージだ。
でも、目の前の魔王は違う。
黒い毛皮のコートを羽織った小学校高学年の少年。
そして、それにしても華奢な感じもする。
ただ、その発する気みたいなのは、とんでもないものだ。
まるで、黒いオーラが見えるような気がするくらいだ。
あのおっさんたちが、まったく相手にならない。
格が違う。
おっさんたちはファイティングポーズも取れないのだ。
逃げ腰のおっさんたちは次々と魔王に撃破されていく。
おっさんたちは力はあるが、スピードはそれほどでもない。
魔王は空中を飛ぶように移動する。
いつの間にかおっさんたちの懐に居る。
まるで、テレポートしているようにも見える。
首を斬られるもの、心臓をえぐり取られるもの、上空に飛ばされるもの。
おっさんたちはだんだん数を減らしていく。
もう、最後の一人となっている。
いちばん身体のおおきいやつだ。
おっさんは覚悟を決めたのだろう。
魔王に向かって腕を振るう。
そう、初めての抵抗だった。
もし、運よく決まれば魔王は遠くに飛ばされてしまうだろう。
それにかけたのだ。
魔王が無事だとしても、逃げるだけの距離を稼ぐことができるかもしれない。
でも、それはいちかばちかの博打。
あの、すばやい魔王におっさんのパンチがあたるわけがない。
おっさんのパンチは魔王に届く。
魔王は避けずに、そのパンチを左腕で受ける。
それは愚策だ。
体重差、力の差は歴然。
ダメージは受けないにしても飛ばされるだろう。
おっさんの目論見どおりになる。
そう思った瞬間。
おっさんの拳は静止する。
おっさんは必死に力を籠めるが、魔王の小さな拳に止められている。
そして、その拳を引くこともできない。
そののびきった腕を引くと、魔王が懐に入ってくる。
魔王が拳に力を入れる。
そのとたん、おっさんの腕が爆ぜる。
つぎにおっさんの懐に飛び込む。
そのまま、腹にパンチ。その部分に風穴があく。
これで終わりだ。
魔王は、その場でぼくたちに振り向いて不満そうな顔を向けるのだった。




