05
ぼくたちは石の床に投げ出される。
そんな高いところから落とされたわけじゃないみたいだから、受け身はとれたみたいだ。
ぼくたちは光る円形の模様の中、魔法陣みたいなところにいる。
そしてその光はだんだん弱まっていく。
まわりを取り囲むのは、鎧を着た人、それからローブを着た人たち。
まるで、剣と魔法の世界から抜け出したような者たちだった。
鎧の人たちはぼくたちに剣を突き付けている。
「大丈夫か?啓之、マネカワ」
浩二が声をかけてくれる。
「ああ、大丈夫だ」
「大丈夫だよ」
ぼくも浩二に答える。
「ここはどこだ!
おい!どういうことだ!」
サラリーマンの人が立ち上がって、正面の老人に向かう。
しかし、その前に剣士が立ちふさがる。
「わかんないよ。これ。
帰してよ。わたしたちどうなるの」
女子高生のすすり泣き。
「ふざけるな!
説明しろ!」
サラリーマンの人が老人に詰め寄る。
剣士がサラリーマンの腹を殴る。
サラリーマンはその場で胃の中のものをぶちまけてうずくまる。
女子高生たちの悲鳴。
彼女たちはお互いに固まって抱き合っている。
大学生のカップルは男の人が女の人を守るように抱きしめる。
なんかやばい感じだ。
さからったらだめだ。
特に浩二、おまえは正義感が強いから。
ぼくが止める前に啓之が浩二を止めている。
「ぼくたちは逆らいません。
でも、この状況が飲み込めません。
できたら、説明してくれませんか」
啓之が丁重に老人に問う。
「そうですね。
申し訳ありません。
申し遅れました。
わたしはローランス王国宮廷魔術師ルーバルトです。
わたしはこの勇者召喚プロジェクトの責任者をやらせていただいています。
以後お見知りおきを」
老人は舞台挨拶のように大仰に頭を下げるのだった。