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公演は1週間をすぎた。
ここでの滞在は2週間の予定だから、折り返しといったところらしい。
ぼくも体力が上がって、だいぶ楽にステージをこなせるようになった。
舞衣さんの練習はまだすこしきついんだけどね。
あと、舞衣さんとぼくで星姫さんの歌のコーラスを担当することになった。
元の世界でものまねをしていたときに覚えたのを星姫さんと相談してやってみた。
なんかすごくうまくいったから舞衣さんに聞いてもらってやることになった。
風太さんは歌が苦手みたいなので、参加しなかったんだけどね。
「これだけ大入りになると奴らが来るかもしれませんね」
夕食のとき、団長が風太さんに言う。
「ああ、そろそろだな
手ごたえがあるのがくればいいが。
今回は魔王さまはいらないぜ。
俺と舞衣だけで十分だ」
風太さんが答える。
奴らって?なに?
「他のサーカス団がちょっかいをかけてくるってこと。
本当にめんどくさいんだから」
舞衣さんが雑に説明してくれる。
星姫さんが補足してくれたところ。
この世界のサーカス団っていうのは、基本的にアウトローの集団であるらしい。
あくまで普通の市民がなるものではなく、はぐれものの集まりなのだ。
王宮で演じられるような伝統的な劇や踊り、歌はあるが、それは日本でいう能やオペラみたいなものとなっている。
大衆的なエンターティメントを担っているのは、この国ではぼくたちはぐれ者となっているのだ。
向こうの世界では芸能人ってみんなのあこがれの職業だ。
でも、この世界ではいきどころをなくしたものがいきつく先みたいな感じ。
ぼくたちはプライドを持ってショーをしているけど、ほとんどのショーはそうではないらしい。
ほとんどのサーカスはショーとも言えない子供だましらしい。
それで、ひとつのショーが人気になると、その周りにサーカスが集まってくる。
それは、良い漁場に集まる漁船にも似ている。
でも、それだけではない。
そのショーを乗っ取ろうとするサーカス団も存在するのだ。
表向きは芸人の集団だが、裏ではいろいろな悪事に手を染める。
麻薬、殺人、武器売買、人身売買。
マフィア顔負けの組織もあるらしい。
そして、金を稼げるショーは彼らの恰好の餌食となる。
そのキャストを捕らえて、恐怖で支配するのだ。
そのため、この黒猫サーカスは何度も他のサーカス団に狙われたことがあるというのだ。
「晃さぁ。
心配しなくてもいいよ。
こっちには魔王様がいるんだからよ。
ただ、出てきてくれるかどうかはわからないがな。
うちの魔王は気まぐれだからな。
まあ、俺がいれば大丈夫だけどな」
風太さんはそう言って胸を叩くのだった。




