08
サーカスの初日が始まる。
真ん中にサークル状の舞台があって、それを囲むように客席が設置されている。
小さなときに元の世界で連れて行ってもらったサーカスと同じだった。
ただ、元の世界ほど大掛かりではない。
観客も100人くらい。
それでほぼ満席だった。
この世界ではサーカスが唯一の娯楽だった。
映画やテレビがない世界。
都会では劇場もあるけど、普通の町や村には劇場はない。
それで移動式の劇場として、サーカスは重宝されていた。
だから、サーカスは広い意味でエンターティメント全般を内包する。
ぼくたちみたいに普通の意味でのサーカスだけでなく、サーカス団にはいろいろな色があった。
演劇中心のサーカス、音楽中心のサーカス、マジック中心のもの。
黒猫サーカス団は小さなサーカスにしては人気のある方だってことだ。
その売りのひとつが猫のショー。
犬と違って芸を教えにくい猫たちによる芸。
これがサーカスの名前にもなっている。
それから星姫さんと舞衣さんが入ってから人気が急上昇らしい。
最後に星姫さんの歌があることも売りとなっている。
「レディース、アンド、ジェントルマン。
黒猫サーカスにようこそ」
大仰に礼をする。
シルクハットにモーニングの団長。
「わたしはこのサーカスの団長、グレゴリオと申します。
これから、みなさんにこの世界最高のショーをお見せしましょう」
グレゴリオさんは通る声で大袈裟なしぐさで、観客に挨拶をする。
「空中ブランコ、綱渡り、玉乗り、一輪車。
さあ、どれがお好きです。
それとも歌や踊りがいいですか?
大丈夫です。
このサーカスにすべて任せてください。
それから、猫のショーもお楽しみください。
この世でいちばんかわいい動物のショーです。
きっとみなさんは魅了されるでしょう。
では、まずサーカスの主役ピエロを紹介しましょう。
クラウン・アキラ」
ぼくはテント裏から花道を走っていく。
白塗りの顔に星や月のフェイスペイント、鼻には赤いボールをつけている。
それからぶかぶかの派手な服。
そして、先の丸まった大きな靴。
それから先が2つに分かれて飾りのついた帽子。
ぼくはグレゴリオさんの横に着くと、大きく手を振って観客にアピールするのだった。




