06
それは、まぎれもない星姫さん歌声だった。
ぼくがうまれて初めて、惚れ込んだ声だった。
べつにドルオタってわけじゃないけど、一度聞いただけで衝撃が走ってしまった。
だから、ぼくが星姫さんを好きなのは、普通のオタクの人と違うんだ。
その歌声がぼくにしみこんでくる。
そう、元の世界でもそうだったけど、星姫さんの歌はこころに直接入ってくるのだ。
特にヘッドホンで聞くと、ぞくっとするほどすごいんだ。
この世界ではそれ以上だった。
星姫さんの歌がぼくの身体にまでしみこんでいく感じ。
細胞のひとつひとつを修復していくって感じだ。
ぼくは星姫さんの癒しの歌に身をまかせる。
それは心地よく洗われていくよう。
たぶん、これはぼくが星姫さんのファンだからとかそういうのではない。
この歌は間違いなく何か力を持っているのだ。
まるで何かに包まれているようだった。
身体のだるさや痛みがうそのように消えていく。
星姫さんの歌が終わる。
ぼくは夢から覚めたような感じで、立ち上がろうとする。
なんかさっきまでは立ち上がれなかったのに。
普通に立ち上がれる。
「えっ?嘘」
ぼくは腕や足を動かしてみる。
すごく軽い。
それは、今日の朝、練習を始める前よりもだ。
「効いたみたいですね。
よかった」
星姫さんは微笑む。
「あんまり効かない人もいるんですよ」
たぶんぼくの場合、癒しの効果がなくても元気になれたと思う。
その上、癒しの効果があるなんて。
「ありがとうございます。
もう大丈夫みたいです」
「いえ、どういたしまして」
それにしてもかわいい。
天使以外のなんでもない。
ぼくは2人だけの時間を楽しむ。
「あれっ?
星姫が治してくれたの?
じゃあ、もう大丈夫だね。
練習の続きを始めようか」
その大切な時間は舞衣さんに破られる。
そして、ぼくは風太さんのところに連れていかれるのだった。




