03
天井に張られた綱も基本的には同じだった。
高いところは苦手だって思ってたけど、いつの間にか解消されていたのだ。
これも、風太さんのスキルを吸収したからなんだろうか。
向こうの世界でもやってたことだけど…
ものまねのコツは、なり切ることだった。
真似をするって感じじゃなくて、その人になったつもりで行動するのだ。
コピーするのは歌や踊りしゃべりじゃない。
その人自身なのだ。
その方法はこっちでも同じだった。
綱渡り自身をやろうとするとうまいこといかない。
まず、風太さんになってみる。
それから綱渡りをやるイメージだ。
それで、いろいろ試してみたんだけど、やっぱりこの能力はものまねに過ぎないことがわかった。
風太さんができることしかできないのだ。
風太さんは今一輪車で綱を渡る練習をしている。
でも、まだあと一歩で失敗している。
ぼくもやってみるけど、同じところで失敗するのだ。
ただ、ぼくがやらなくてはならないのはピエロだ。
うまくやっても面白くない。
わざと失敗しようとしてみるけど、うまくいかないのだ。
どうしても、ちゃんとやってしまう。
「俺の動きはまねできるんだよな」
「はい、そうみたいです」
「じゃあ、俺がピエロの動きをすれば真似できるんだよな
舞衣、指導たのむ」
風太さんはそう言うと綱に飛び乗って、怯えるふりをして足を震えさせながら綱を渡る。
そして、足をふみはずして、股間を縄でうつ。
大げさに痛がりながら縄の上に戻る。
スラックラインみたいな動きだ。
実際はわからないようにお尻で跳ねている。
「風太、うまい。
一度落そうになって縄につかまるなんてどう?
そこで鉄棒みたいに蹴上がりするとか」
「おっ、それいいね」
風太さんは、舞衣さんに言われた通りのことをする。
あくまで、コミカルにだ。
「こんなものかな?
晃もやってみろよ」
風太さんに声をかけられて、ぼくも縄の上に立つ。
そして、風太さんの動きを完全にトレースするのだった。




