03
「ちょっとやめてよ」
ぼくは2人を止める。
「そうそう…その顔…マネカワらしいよ」
2人は口喧嘩をやめてぼくを見る。
うん、ちょっと気が晴れた気がする。
昔、アイドルが自殺したとき、たくさんのファンが後追い自殺をしたらしい。
自殺とはいかないけれど、その気持ち、今ならわからないでもない。
推しはそれほどぼくたちの心の支えとなっているのだ。
現にスターエンジェルズのファンからの悲惨な叫びがツイッターでつぶやかれる。
生きる希望を失いましたとか何もやる気がおきないとかね。
まだ、テレビに出始めたくらいのアイドルだから、まだ大丈夫なんだけど、もしこれがトップアイドルだったりすると社会問題にもなりそうな気がする。
でも、ぼくにはこうして心配してくれる親友がいるんだ。
それは紛れもない現実世界でのことだ。
だから、落ち込んでばかりもいられない。
元気をださなければね。
「マネカワはやっぱバカだよな」
啓之がため息をつく…
これが今日の結論みたいだ。
「うん、でもありがとう。
少し気が晴れたよ」
ぼくは2人に礼を言う。
「どういたしまして」
浩二がぼくの頭をつかんで髪の毛をくしゃくしゃにする。
「それにしても、あの消失事件って…」
啓之が話題を消失事件のほうに振る。
星姫さんの消失…
それは突然のことだった。
いきなり公式サイトからスターエンジェルの活動休止が発表された。
そして、ネットではいろいろな噂が流れ始めた。
警察もこの事件については正式に発表していないのだ。
ただ、まことしやかな話では、テレビ局の控室にいた人間がすべて消えてしまったとのことだ。
そのまえには軽い地震みたいなものがあったとも言われる。
それから、その現象は初めてではないとの話もある。
突然にある空間にいた人間がいなくなるという現象.
それが時々起きているとのことであった。
まあ、ぼくたちの近くで生じたことはないから真偽はわからない。
政府も原因がわからないことなので、いたずらに国民の不安を煽らないよう、秘密にしているというのだ。
某国の仕業ではないかともネットでは囁かれている。
でも人気急上昇中のアイドルをいきなり消失させて、何の利益もないだろう。
もう3ヵ月くらいたつし、話題づくりとも思えない。
たぶん、一種の超常現象と考えるしかない。
啓之も浩二も神隠しはあるって結論みたいだった。
ぼくたちはこの不思議な事件について、ハンバーガーを食べながら、いろいろと話しをするのだった。