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「わたしはしがないサーカス団のものです。
なにも金目のものはありません。
だから、見逃してください」
グレゴリオさんが土下座をして命乞いをする。
たぶん、この人の交渉術は半端ない。
任せ説いたら大丈夫なはずだ。
盗賊たちはぼくたちを見る。
そして、首の奴隷紋に目を止める。
「異世界人か…
奴隷だな」
「はい、サーカスでこき使うつもりの奴隷です」
「では、奴隷だけ置いていけ!」
盗賊の中でいちばん強そうな身体の大きい中年男が言う。
たぶん首領だろう。
そう言った貫禄を持っている。
「しかし、せっかく大枚はたいて買った奴隷です。
なんとかこれで勘弁してください」
グレゴリオさんは懐から皮の袋を取り出す。
「だめだ!
俺たちは異世界人には恨みがあるんだ。
こいつらを使って憂さ晴らしさせてもらう。
さいわい、そっちの女、なかなかの上玉じゃないか」
うそだろ。
グレゴリオさん、嘘つきってJOB、うまくつかえないのかよ。
ぼくは、魔法を使えないか探ってみる。
この姿勢でも、なんとかならないだろうか。
でも、使い方がわからない。
頭の中で火の玉を思い浮かべて…
「しかし、それは勇者や賢者の異世界軍でしょう。
こいつらは違います。
ただの村人です。
王国にむりやり呼び出された犠牲者です」
「いやちがう。
異世界人はみんな同じだ。
俺たちから仕事を奪い、居場所を奪っていく。
とくに俺たち下層のものはいつの間にか異世界人にとって代わられているのだ。
俺たちも傭兵をやっていたが、異世界人の召喚が始まって依頼がなくなった。
つまらない薬草あつめや魔獣退治。
それも相当買いたたかれるようになったのだ。
それもこれもお前らのせいだ。
こいつらの奴隷紋のキーを教えろ!」
盗賊の頭目はそう言ってグレゴリオさんに詰め寄るのだった。




