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それは勝負にもならなかった。
刀は構えないとならない。
少なくとも、一度引かなくては威力が出ない。
鞘から抜くことでその動きを省略するのが、渋沢さんの使う居合だ。
鞘からいきなり斬り付ける。
それは、間合いをつかませないだけでなく、先を制するという意味があった。
ほとんどの勝負は、基本的に先手必勝なのだ。
これは、渋沢さんの教えのひとつ。
たとえば、武士の世界では刀は右側に置く。
それは、利腕の側の刀は抜きにくいからということだ。
しかし、その姿勢からでも渋沢さんは人を斬ることができる。
それに比べて、タナカさんの剣は稚拙。
少なくとも命のやりとりをする剣技ではない。
だから、風太さんのスピードについていけない。
刀を引くスピードで、風太さんはタナカさんの懐に入る。
そして、刀を持つ手を抑える。
それで、もう斬りかかることはできない。
たぶん、元の世界では格闘なんてしたことがないのだろう。
ボディががらあき。
そのボディに風太さんはひざを叩き込む。
勝負ありだ。
「悪いな」
風太さんは、そう言って、タナカを地面におろす。
スズキさんは手斧。
少し小太りで腕が短い。
でも、その攻撃はパワフル。
さっきのタナカさんより、さまになっている。
でも、ほんの少しの違い。
この程度では舞依さんの敵ではない。
両手の斧を素早く動かして、舞依さんを襲う。
でも、舞依さんにはぼくと同じスローモーションに見えているだろう。
最低限の動きで、斧を避けている。
それはギリギリの攻防なのではなく、余裕の表れ。
相手はもう少しと思っているだろう。
本当はそうじゃないのにね。
もう少し、狙ったらいいのに。
でも、相手は手数を多くする。
攻撃はより雑になる。
それから、スズキさんの装備。
すごい鎧を着ている。
たぶん、かなり重いだろう。
そんな装備で必死に動いたら…
スズキさんの息が切れ始める。
たぶん体力の限界だろう。
最後の力で突っ込んでくる。
その足を舞依さんが引っ掛ける。
スズキさんは豪快にこける。
打ち所が悪かったか、骨が折れたのか、スズキさんはすぐには立ち上がれないのだった。




