09
馬車が止まって、何か言い争う声。
ぼくは、目をこすりながら、身体を起こす。
舞依さんと風太さんの声に知らない人の声が混じっている。
次の町までまだ時間があると思っていたけど。
渋沢さんも起きている。
ぼくは目で渋沢さんにどうするか聞く。
「行ってみましょうか」
「はい」
ぼくたちは馬車から外に出る。
風太さんと舞依さんの前に4人くらいの人。
サーカス団の人ではない。
鎧と盾に剣を帯びた人が3人。
ローブの人が1人。
なにか風太さんと言い争っている。
「だから、弱いものいじめはやめろって!」
「俺たちの経験値かせぎの邪魔をしようというのか。
俺たちはルセアニア王国の勇者パーティだ。
世界を救う俺たちのじゃまをしようというのか」
「だから、コボルトの子供を殺す必要はないだろ」
コボルトというのは顔が犬の獣人だ。
子供だけに顔も子犬っぽい。
倒すには罪悪感を感じるレベルの愛らしさだ。
「私は帝国騎士リンドグリーン。
勇者の教育係だ。
お前らはサーカス団か。
私たちが魔王と戦っているから、お前らが下等な芸とやらで食っていけるのだろう。
そんなおまえらが、私たちにはむかおうというのか」
「でも、魔族とはいえ、こんな小さな子供を殺すことはないでしょ?」
舞依さんも引かない。
「うるさい!
私は勇者を育てなければならないんだ。
この勇者は教育が終わったんばかりのひよっこたちだ。
スライムやコボルト、ゴブリンを倒すことからはじめないとならないんだ。
それに、転移者というのは、なんというか。
考えが甘いのだ。
中には血を見ただけで気絶するやつもいる。
この犬コロぐらいは平気で狩ってもらわないとならない。
彼らを育てるのは世界のためなのだ」




