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ぼくは口を袖で隠す。
その間もぼくの視界の灰色は濃くなっていく。
目も閉じないと、蚊が入ってきたらだめだ。
手品の種はわかった。
でも、どうしようもない。
たぶん、こういうのは渋沢さんにもどうしようもないだろう。
ぼくたちの負けなのか。
ただひとつ勝ち目があるとすれば、魔王さまが来てくれること。
それには、ぼくは時間を稼ぐことしかできないのだ。
ウィルスじゃないから、なんとか侵入を防げる。
耳も閉じるようにして、蚊の侵入を防ぐ。
ぼくの身体は露出が少ない。
手袋に帽子、服もぶかぶかのものだ。
外に出ているのは顔と首だけ。
ただ、この姿勢では攻撃はできない。
ぼくが防御の姿勢をとると相手は集合して殴ってくる。
剣に手をかけるとぼくを包み込んで防御させる。
目も開けていられない。
なんとか、相手の動きを読んでバリアで攻撃を受け止める。
魔力と体力だけが減っていく。
そう、ぼくの弱点は基礎体力と基礎魔力が足りないこと。
確かに身体も魔力も鍛えている。
ただ、それは一気にあがることはない。
だから、ぼくは燃料タンクの小さい車みたいなものだ。
スピードは出せるけど、すぐにガソリンがなくなる。
もう、あんまり魔力はない。
あと一回魔法剣ができる程度か。
これを使い切ったら終わりだ。
ぼくは剣に手をかける。
そして、剣を引き抜く。
最後の勝負だ。
やっぱり、蚊の大軍はぼくを包み込む。
目を閉じて息を止める。
一つ確かめてみたいことがある。
剣に魔法をまとわせることができるんだ。
だから…
自分の身体にまとわせるくらい簡単だ。
ただ、それに身体が耐えられるかどうか…
それが問題だ。
でも、これしかない。
だから、剣を抜いた。
こうすれば、蟲たちはぼくを包み込む。
ぼくは、自分の身体に炎をまとわせた。




