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第3話『予感―STAGNANT SKY』


ハルマス市街地・商店


店の前には4、5人の黒服が気を失って倒れており、薄暗い店内ではコールがそのリーダー格の男と対峙している。

背負った剣の柄に右手を掛け、左掌を上に向けて“来い”とハンドサインを送る。そんなコールの簡単な挑発に乗った黒服のリーダーは、不敵な笑みを浮かべながら懐から大振りのナイフを取り出した。


「ふふふ・・・なかなか出来る様だが、あの様な三下とこの私を一緒にするなよ?私はかつて、Aクラスの冒険者(ハンター)として死地を潜って来たのだ」


順手で持ったナイフの切先をコールに向けて構え、腰を落とす。それに合わせてコールも剣を抜き、その白銀の刃を晒す。男と違って構えないが、その出で立ちには油断も隙も見えない。


「死ねぇえ!!!」


叫び、勢い良く駆け出す黒服。腕を伸ばし、彼の喉元目掛けてナイフを突き出す。

切先が喉元を捉える、その寸前。


コールの姿が男の視界から消えた。


その刹那。


「ぅ・・・ぐ、は・・・っ!?」


腹部に激痛を感じた時には、既に男の体は宙に浮き、後ろへ飛んでいた。


「ぐっ!が、はっ・・・!」

「大口叩いた割に、この程度の当身も避けれないか。まあ用心棒如きに落ちる程度だ、仕方無いか」


ナイフが突き刺さる寸前、コールは身を屈めて左の掌底を男の鳩尾に叩き込んだのだ。そのあまりの速さに、男は彼の姿が消えた途端に吹き飛ばされた様に感じていた。


「どうした?俺を殺すんじゃないのか?」

「きっ・・・貴様ぁ・・・ッ!!」


店の外に出たコールは再度挑発し、黒服は気を失った部下達の傍でなんとか立ち上がる。彼は落としたナイフを拾って再び構え、すぐ様駆け出す。


「ブッ殺してやるぅああああ!!!」

「・・・芸が無いな」


呆れた様に呟くと、コールは右手を前方に突き出し、水平に剣を構えた。

すると剣が赤いオーラに包まれ、次の瞬間オーラは炎に変わった。


魔法剣技(マギアアーツ)炎裂刃(バーストエッジ)』」


構えた剣を振りかぶり、突進する黒服目掛けて振り下ろす。その刃は黒服には当たらず空を切るが、纏った魔法の炎が爆発を起こした。


「ぐあああっ!!?」


爆発の衝撃をまともに喰らった黒服は吹き飛ばされ、廃屋の石造りの壁に叩き付けられた。


「ガ・・・ハッ」

「ん・・・はっ!リーダー!?」


爆音と衝撃で目を覚ました黒服の部下達。倒れたリーダーの意識は無く、返事は無い。


「お前ら、さっさと帰ってマルクスに伝えろ」


剣を収め、黒服達に告げる。


「お前の奴隷など知らんが、俺を殺したきゃもっとマシな奴を寄越せ・・・とな」

「ひ、ひぃぃぃい!!!」


コールの暗く重い声色に、黒服達は情けない悲鳴を上げながら、倒れたリーダーを抱えて逃げて行った。


「フン・・・」


そして彼は店内に戻り、店主の元へ歩み寄る。


「騒いで悪かったな。修理代だ」

「気にせんでええのに・・・まあ、有り難く貰っとくよ」


紙幣を2枚店主に渡し、野菜が詰め込まれた紙袋を受け取ると、コールは何事も無かった様に家路に就いた。


(しかし・・・奴隷探しに用心棒を使うとは、な・・・何か裏が有りそうだ)


帰宅する道中、そんな事を考えながら歩くコールは、自身が助けた少女を思い出す。


(そう言えば、リアの背中に妙な紋様が有ったが・・・それと関係が?)


妙な胸騒ぎを覚えるも、コールはそれを記憶の片隅に追いやった。


(まあいい・・・いずれ分かる事だ)



その日のスラムの空は、いつにも増して淀んでいる様に見えた。

まるで、嵐の前触れの様に。

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