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第1話『邂逅―WHITE meets BLACK』


この世界には5つの大陸が存在する。


北のマキダナス大陸。

西のアイオニア大陸。

南のクリティ大陸。

東のグリシア大陸。

これら4大陸に囲まれた、中央のオライポス大陸。




運命の歯車は、クリティ大陸の辺境国・オーキス侯国で回り始める―――




嵐の翌日、オーキス侯国・ハルマス。

辺境国の貧民街(スラム)であるこの街には、様々な人種が入り乱れて暮らしている。

様々な様式の建物が並んでいるが、どれもが十数年前に打ち捨てられてボロボロになっており、辛うじて住居としての役目を果たせるか、と言った物ばかりである。


その一角。街の外周部分に近い場所に建つ、比較的荒廃が進んでいない一軒家。その一室で黒髪の少女は眠っていた。


「ん・・・あれ、ここは・・・?」


目を覚ました少女は起き上がり、辺りを見回す。見覚えの全く無い場所に、困惑を隠せないでいた。


「確かアタシ、屋敷から逃げて・・・」

「やっと起きたか」

「っ!?」


突然聞こえた声の方に顔を向けると、部屋の入口にタライとタオルを持った背の高い白髪の青年が立っていた。


「ア、アンタ誰よ!?ここは何処なの!?」

「助けた恩人に“アンタ”とは失礼だな?見知らぬ他人とは言え、心配してやってたんだがな」

「え・・・助けた?アンタが・・・?」


驚く少女の傍まで来ると、青年は彼女が座っているベッドの脇に有るサイドテーブルにタライを置き、その中の水にタオルを入れた。


「そうだ。玄関前でびしょ濡れのお前が倒れてたからな・・・流石に放っておく訳にはいかんだろう」

「そっか・・・ありがとう」


少女は気を失う前の自分の状況を思い出し、身震いしながらも命の危機を救ってくれた青年に感謝した。


「ああ、それと。お前が体に巻いてた布切れも、体を拭いてまともな服に替えるついでに処分しておいた」

「えっ?あ、ホントだ!アタシ服着てる!!」

「気付かなかったのか・・・お前は・・・」


ボロボロの布切れではなく、普通の服を着てる事に驚きながら喜ぶ少女に、呆れて溜め息をつく青年。どうやら彼女はどこか“抜けた”性格の様である。


「はっ!アンタ、まさかアタシに変な事してないでしょうね!?」


思い出した様に自分の体を抱き、身を守る様にしながら青年を睨む少女。


「はぁ・・・お前みたいな子どもに欲情する変態と一緒にするな」

「な・・・っ!子どもって何よ!?アタシは立派な16歳の乙女なんですけど!?」

「成人してないならまだまだ“子ども”だ。ほら、まだ熱下がってないだろ。大人しく寝とけ」


絞った新しいタオルを反論する少女の額に当て、正論を言いながら半ば無理矢理寝かせる青年。

寝かせられた彼女は、不服そうに頬を膨らませながら彼の顔を見上げている。


「・・・何だ」

「そう言うアンタこそ、幾つなのよ?」

「24だ」

「ウソ!?その髪で!?ホントはよんぐぅっ!?」


驚きの余り口走った少女の言葉を、その口を頬ごと掴んで抑え込み遮る青年。その左手には僅かに力が篭っている様だ。


「この髪は生まれつき(・・・・・)だ。次は無い、いいな?」

んん、(うん、)んんーん!(分かった!)んんーんんん!(分かったから!)


怒気の籠ったその声に、少女はただ頷く事しか出来なかった。


「ならいい・・・で、だ。お前、名前は?」


少女の口元から手を放すと、傍の椅子に座り問い掛ける青年。


「あ、アタシ?アタシはリア。リア・アネット」

「アネット?確かそれはエルフの家名だろう。エルフには見えないが・・・?」

「うん、エルフじゃないわ。アタシは人間。昔、アタシを拾ってくれた人がエルフでね、その人の苗字を貰ったの」


怪訝な表情を見せた青年に簡単な説明をすると、彼はふむ、と納得した。


「ねえ。アンタの名前は?」

「ん、ああ・・・コール・ヴェスパーだ」

「へえ・・・コール、ね。うん、覚えたわ」


一悶着有ったものの、自己紹介を終えたコールとリア。その時、部屋に異音が響いた。


「・・・」


自身の体が発した空腹を訴える音に、リアの顔は耳まで真っ赤に染まった。


「恥ずかしいだろうが、人間なら仕方無いだろ」

「うん・・・お腹、ペコペコ・・・」

「少し待ってろ」


そう言うとコールは立ち上がり、食事を用意する為に部屋を後にした。



―――数十分後。彼が用意した簡単な食事を瞬く間に平らげるどころか、7度目のおかわりを要求された時、コールは一際大きく深い溜め息をついていた。


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