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新三国志 退廃帝曹叡と賢英帝劉禅  作者: 水源
建興9年(231年)
26/41

諸葛亮は木牛流馬を用いて祁山を攻撃する

 諸葛亮は過去の北伐失敗を補給の問題と認識してその対応策として輸送用機器である一輪車の木牛と水陸両用のソリである流馬を開発し後方からの補給を円滑にし、再度の北伐を行った。


 このときも斜谷道から出て、郿を奪うと喧伝し、司馬懿をその囮の軍として箕谷に布陣させている。


 蜀の桟道では馬やロバを用いるよりも一輪車の木牛のほうが安心して荷物を運べるし、馬に食べさせるための食料確保に頭を悩ませることもない。


 兵士にしても荷物を背負うわけではないことから運搬の負担も小さかった。


 さらに麦の収穫の時期に敵地に侵攻することで、食糧の現地調達を容易にしたのである。


「今回はうまくいくでしょう」


「ええ、お互いに上手くやりましょう」


 諸葛亮年配はそう言って別れて兵を進めたが、曹真が病死したことで魏は新たな司令官を任命しなければならず、何度かの北伐を行っている孔明に比べれば誰が来ても経験差がでるはずであった。


 魏将の賈嗣と魏平を祁山において包囲し、木牛による輸送などを行いつつ、収穫期の麦を刈り取ってとって自分たちへの食料としたのである。


 これにたいして曹叡は曹真のあとを引き継ぐ曹宇に任せた。


「祁山が包囲されているゆえ大至急、救援へ赴くようにせよ」


「かしこまりました」


 曹宇は費曜、戴凌、郭淮、夏侯覇、曹爽らを引き連れて箕谷および祁山へ向けて出立した。


「郿のまもりは夏侯(覇)仲権と曹(爽)昭伯にまかせる」


「かしこまりました」


「かしこまりました」


 しかし諸葛亮は曹宇たちの援軍が到着する前に、この地域の麦を片端から刈り取ってしまい、それを我がものとした。


 魏は冀州・兗州・豫州から徴発した兵士と兵糧を、河を通じて洛陽まで運び、洛陽から長安と経由して隴西まで河川を通じて船で運ぶことができるという点で圧倒的に有利であるが、無論河が凍結している時期にはそれは無理であるために畑の麦をかられると祁山の兵は困窮することになる。


 蜀軍がいつものように食糧不足に苦しんで撤退するに違いないから援軍を送る必要はないとの意見もあったが、曹叡は援軍と共に食料を送り込んでいる。


 魏軍は当初は持久戦に持ち込んで蜀軍が撤退するのを待つつもりであったが、補給線を構築でき、現地でも調達を行った蜀軍は簡単には撤退せず、逆に祁山の状況が危うくなった。


 さらに蜀軍の攻撃に呼応して異民族である羌族が、曹宇の背後から挟撃しようとしたのである。


「これはまずいな……」


 費曜は王平の陣を攻撃したが攻めあぐんで、劣勢になり、曹宇は戴凌と郭淮を率いて諸葛亮への攻撃をかけたが、魏延と呉懿の奮戦を前に魏軍は破れた。


 しかし、凍結していた河の氷が溶けて、食料や兵士が補充され、魏の戦線は崩壊にいたらず、大雨により蜀の桟道が長雨にさらされて各所で崩落したために食糧輸送が途絶えると、撤退せざるをえなくなった。


「あと少しというところで、なんとも無念だ」


 諸葛亮が兵を引くと司馬懿も兵を引いた。


 それに対して総鵜は


「敵軍が撤退したならば十分だ。

 無理に追撃することはない」


 爽雨はそのように指示し、敵軍の動きを見ながら、洛陽へと戻っていった。


 蜀は戦術的な勝利は得て魏軍に大きなダメージを与えたが、魏の補給能力を考えればそれは加賀指した程度の痛手でしか無かった。


「相父よ。

 食料を途絶えさせ撤退させたこと誠に申し訳ない」


「こればかりは致し方ございませぬ。

 あちこち桟道が崩壊していた状況では攻撃を続けていればむしろ殲滅されていたかもしれません。

 むしろ懸命な判断であったかと」


「そう言ってもらえるならばよいのだが」


 このころ孫権は孫布に偽の投降をさせ、王陵と満寵の確執を突くが、その偽装投降を満寵が看破して作戦は未発に終わったことで後の合肥攻撃もなく何れにせよ撤退はせざるを得なかっただろう。


 呉との連動がなければ蜀が魏に単独で挑むのが国力差を考えても無謀なのである。

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