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新三国志 退廃帝曹叡と賢英帝劉禅  作者: 水源
建興6年(228年)
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序章その1 魏の二代目皇帝曹叡という男

 建興6年(228年)南蛮制圧を完了した諸葛亮は第一次北伐を行い、街亭の戦いにおいて馬謖はここで山頂に陣を敷いてしまったが、蜀漢二代目皇帝の劉禅の介入により、馬謖は善戦し司馬懿はその結果戦いに敗北し、その後、家族ごと蜀へ投降した。


 北伐軍は長安を占拠し洛陽へ迫らんと意気を上げていた。


 ここで少し魏の二代目皇帝である曹叡の話をしたい。


 初代皇帝曹丕と、もとは袁煕の妻であった甄氏(けんし)の間に生まれた曹叡は天姿秀出(てんししゅうしゅつ)と呼ばれ、望み見ると侵しがたいほどの威厳があり、生まれつき美貌なことに加え、髪をほどけば立ったまま床につくほど長いことで有名で、しかもとても利発であったため、曹操は彼を可愛がりいつも側においた。


 だが、曹丕の寵愛は母から次第に薄れていき、徐姫や郭皇后・李貴人・陰貴人に移っていったため、悲嘆した甄夫人は曹丕に対して恨み言を述べ、これが曹丕の勘気に触れ、黄初2年(221年)6月に死を賜った。


 そして、曹丕は郭皇后に養育されるのを喜ばない曹叡に替えて、曹礼を後継ぎにしようと考えたため曹叡は長期間太子になれなかった。


 しかし、黄初7年(226年)建国7年にして突然の死期を悟った曹丕は、その後継者として年長で学問好きな曹叡を選択せざるを得なかったため、彼は皇太子に立てられた。


 しかしながら母の甄氏が曹丕の勘気に触れて死を賜っていたこともあり、即位以前の曹叡は公の場に出ることが少なかった。


 そのように幼い頃から父や叔父たちの権力争いを見て育ち、自分自身もそれに巻き込まれた彼も、同族や親類に強い警戒心を持つようになった。


 更に実子は次々と早世し子を亡くした絶望と、心を許した相手にも裏切られるような経験を多くした。


 更にはある噂が彼の心を蝕んでいた、それは実は袁紹の孫であるというものだ。


 彼の生年は建安9年(204年)、それは曹操が冀州を攻め落とし、曹丕が袁煕の妻であった甄氏をうばった年であり、袁煕の子として既に世に生を受けており、曹丕はその子を冷遇しつつも養子として養育した、というものだ。


 そして曹操も曹丕も当時の価値観的にはどちらかといえば不細工に分類されるが、袁紹親子は眉目秀麗で、曹丕に似ていたとは言い難い。


 であれば、見かけ上の祖父に実の父を、見かけ上の父に母親を殺されたということになる。


「実の父を殺し母を殺し土地を奪って、漢王朝を滅ぼした簒奪者の国を受け継ぐとは我ながら滑稽なことだ」


 そのような環境で育ったために彼は精神を病んでいた。


 しかしその頭脳は鋭く、軍事の才能は曹操の血を一番色濃く受け継いだといえる。


「報告いたします。

 司馬仲達は合戦に破れ蜀へと投降、そして孫礼がそれに合流し、長安が占拠されました」


「ふむ、わが祖父はあの男がいずれ謀叛をおこすであろうと言っていたと聞く。

 我が父はそれに構わずかばっていたと聞くがな。

 わが魏ではなく蜀がそれを抱えるようになったのはむしろ幸いであろうよ」


「は、はぁ……」


「で、そやつらは洛陽へと向かってきておるのか?」


「はい!」


「そうか、それは楽しみだ。

 曹(真)子丹と郝(昭)伯道を函谷関ヘ向かわせ、まずは守備を徹底するように伝えよ。

 兵の増員もすぐ送り、予も自ら出ると」


「かしこまりました!」


 そして曹叡は心の中では別のことを考えていた。


「(諸葛孔明と司馬仲達、お前たちは戦いで予を喜ばせることができるか?)」


 明哲すぎる頭脳を持った曹叡にとって敵も味方も殆どは馬鹿ばかりに見えたが、諸葛亮と司馬懿は彼から見て数少ない軍事的に有能な人物に思えたからだ。

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