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【番外編⑦】引っ越し
しばらくして祐也くんの腕から解放され、ぬるまったコーヒーを飲んでいた。
「今日のライブさ...」
彼はポツリと話し始める。
「うん。」
たぶん私に聞いて欲しいのかなと思って、言葉の続きを待つ。」
「俺のこと、待ってくれてたファンの子たちに申し訳なくて。」
「うん...。」
「あと、俺が出ないからってブーイングきたりしてないかなって。スタッフとか、メンバーたちに。みんなに申し訳なくて。」
こういうとこ、優しいなぁって思う。
ライブに出られなくて悔しいのは、今までのやってきたことを出せないことじゃなくて、周りの人のことを考えてのことだった。
「俺がその場にいれば謝れるのに。
直接言われた方がマシだよ...。」
そこまで言うと彼は机の上に突っ伏してしまう。
その頭をそっと撫でる。
「祐也くんは優しいね。」
嫌がらないから、私はそのまま撫で続ける。
「でも、みんな祐也くんが出られなくて残念って思うかもしれないけどさ。
祐也くん、大丈夫かなって。
心配してる気持ちの方が強いと思うよ?」
「!?」
彼は隙間から私を見る。
「だって、祐也くんのことが大好きだから。
早く良くなって元気な姿みせて欲しいって。
きっと思ってると思うな。」
「優ちゃん...。」
彼を抱きしめて「早く治りますように」と心を込めて言った。




