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【番外編⑦】引っ越し
トントン...
『...どうぞ』と中から声がする。
いつもの祐也くんの声よりトーンが低かった。
...やっぱ落ち込んでるよね。
目を閉じて深呼吸をしてから部屋に入る。
「祐也くん、だいじょ...」
視界に入ってきた彼は衣装姿だった。
カラフルな衣装に包まれてるのに彼の表情は暗い。
私の顔をみると彼は苦笑いした。
「怪我しちゃった。いつもよりステージ狭いっつって聞いてたのにさ。
リハの時に落ちちゃったの。
剥離骨折っていうの?
骨折しちゃったからさ、しばらくステージ上がれねぇの。」
祐也くんは不安な時、それを隠すように言葉を連ねる。
私はベットのそばにある椅子に座り、彼と目線を合わせる。
「祐也くん、痛みはどう?」
「ん?ギプスされたから大丈夫。」
大丈夫な表情ではなかった。
「見てもいい?」
「いいよ」と言うと布団をめくって見せてくれる。
そっとギプスの上から撫でる。
「落ちた時、痛かったよね。
祐也くん、今日のライブもあんなに楽しみにしてたのに。
残念だったね...。」
今ちょうど夜の部が始まった頃だった。
「あー!悔しい。なんで落ちたかね?
まあでも怪我したのはしゃーないし、早く治すしかないわな。」
「祐也くん...」
強がってる祐也くんをどう励ませばいいのか、わからなかった。




