44/84
呼び方ー祐也sideー
「ぇぐ...」
ー泣かないで。と声をかけたかったけど、かけられなかった。
彼女は20年以上前に閉めた蓋を開けたから。
どうしていいか分からなくて、ただ抱きしめる。
「....俺も」
と言うと彼女は俺の胸から顔を上げる。
...せっかくおしゃれしてきたのに、泣きすぎて目が赤く、腫れていた。
そっと目尻の涙を拭き取る。
「ずっと会いたかった。
何も言わずに離れ離れになってごめんね...。
正直もう会えないと思ってたのに。
あのとき公園にいてくれて、ありがと。」
彼女は俺のことを見ている。
「大好きだよ。あの頃も、今も。
あの頃よりもかもしれない。」
彼女は大粒の涙を浮かべている。
また、そっとぬぐう。
「すごく落ち込んでたのに、負けない...優ちゃんみてたら、もっと好きになった。」
泣きながらだけど、ぽかんとした表情。
「な、名前...」
「今“さゆ”って呼んでもいいけど、もう自分の名前、言えるでしょ?」
笑いながら呼び方を変えた理由を伝えるけど、正直言うとそう呼びたかったからだった。
彼女はぶんぶんと縦に首を振っている。
かわいいなあー。
「俺のこと、いつもはなんて呼んでくれてるの?」
「...くん。」
「ん?」
小さい声で聞き取れない。
「祐也くん!」
「はあい」
とびっきりの笑顔で答えると、彼女は嬉しそうにはにかんでいた。




