やっと。ー祐也sideー
ライブを終えた俺はシャワーも浴びずに楽屋の椅子に体育座りしていた。
他のメンバーはもちろん汗を流すためにシャワーへ行っている。
マネージャーはあの子を連れてきてくれるだろうか。
名前も言ってない。
あの時の映像で見せただけ。
用事があると断られてないだろうか。
少しでいいから、会って話ししたい。
あの後彼女はどんな生活を送ってきたか。
あのお店には、行けただろうか。
時計の秒針がカチカチとなる。
時が進むたびに緊張が走る。
ダメだったんじゃないか、と。
ライブで気分が高揚しているはずなのに割とネガティブモードなのが笑えてくる。
しばらくするとマネージャーから電話がかかってくる。
会えた...のか?
それとも....
意を決して電話に出る。
「...はい。」
『私よ。あの子。』
?!?!ってことは会えたのか!
一気に落ち込んでいたテンションは高まった。
電話の相手はかなり動揺しているのか雑踏の中に声がかすかに聞こえてくる。
『さ、ゆぅです!』
「へ....?」
声はたしかに彼女の声だった。
彼女は初めの頃よく緊張して噛んでいた。
名前まで噛むのは面白かったけど、ーってそんな場合じゃない!
は?さゆぅ?
俺の夢のあの子のあだ名は“さゆ”。
電話の彼女が名乗った名前も“さゆ”?
もしかしてーと思うと夢の内容が走馬灯のように映像となって流れた。
.....そゆこと、なのか?
そんな都合のいいように考えていいんだろうか。
でも、あの子のお母さんが名前を教えてくれた、今まで思い出せなかったところが今ははっきりと分かる。
その名前は、桜井優だった。
まだ幼かった彼女は苗字と名前の最初の文字しか言えなかった。
だから“さゆ”。
たしかにあの子の面影がある気がする。
特にはにかんで笑った時。
結婚の話をして照れてる時。
久しぶりに頭がスッキリとする。
電話の相手もずっと話さずに待ってくれたのか、噛んだショックで喋れなくなったのか黙っていた。
確認の意味を込めて「桜井さんだよね。」と確認する。
『は、はい!ご存知でしょう......え?もしかしてゆうーフガッ!!』
彼女も俺に気づいた様子は分かったけど、俺の名前を呼ぼうとしたため、マネージャーに止められていた。
そこで通話終了の音がなる。
もうすぐ、会える。




