再会
祐也くんのあの姿が忘れられなくて、その後はちっとも集中できなかった。
確かに私の方みてたよね...?
気づいてくれたんだよね?
トークの時もいつもより祐也くんは話してなかった気がする。
いや、話はしてたんだけど、いつもよりテンションが高かったのかも。
やや早口で、いつもよりたくさん笑っていた。
モニターに映る祐也くんはすごく、すごくかっこよかった。
好き...そっと呟く。
周りの歓声や音楽でかき消される。
でもいいの。
本人へは言えなかったもん。
面と向かってファンでしたとも言えなかった。
今でもあの女優さんと付き合ってるのかな...?
祐也くんは幸せになってほしい。
だから、ちゃんと祐也くんのことを好きになってくれる人と一緒にいて欲しい。
一時期の話題のためとかじゃなくて。
これから50年先まで幸せでいられるように。
私に願えることはこれくらい。
祐也くんたちが輝けるようにこれからも追いかけ続けるよ。
いつか私のことなんて忘れちゃうと思うけど、それでもいい。
私が祐也くんにたくさんもらった優しさを忘れない。
大好きだよ。
あっという間に終演を迎えた。
ブロックごとの退場。
先にスタンド席から案内される。
その間も祐也くんのことが頭から離れなかった。
しばらくして私の場所の退場の順番に。
椅子から立ち上がり、前の人に続こうとすると肩をたたかれる。
「え?」
振り返ると知らない女性が立っていた。
「あなた、ちょっと来てくれない?」
「ふえぇえ?!誰ですか?!」
「えー...ちょっとここでは言えないわよ。」
女性は周りの人の目を気にしている。
怪しい。
適当に理由をつけて断るべき...?
「あのーちょっと用事がー」
「....はぁ。嘘つくならもっと演技しなさいよ。棒読みじゃない。」
「はい...」
なぜか怒られる。
この女性は誰なんだ!
「もう。しょうがないわね。騒がないでよ?」
と女性はケータイで誰かに電話をし始める。
「私よ。あの子。」
相手はすぐ電話に出たのか、そういうと私にケータイを差し出してくる。
「へえぇえ?!」
早くしなさいよ、と顎で促されるまま受け取り、
「さ、ゆぅです!」
...やってしまった。
誰かもわからない相手で緊張してかなり噛んでしまう。
自分の名前も言えないなんて...。
『へ....?』
そりゃそうだよね!わけわかんないよね!
まず名乗ってるかどうかも伝わんないよね...。
相手も黙っている。
前にいる女性はノロマな私をみてたぶん、怒ってる。
深呼吸して落ち着いて...もう一回名前を!と思っていると『桜井さんだよね。』と電話主から返事が。
「は、はい!ご存知でしょう......え?もしかしてゆうーフガッ!!」
「はいストーーップ!!」
女性が私の方を急に塞ぎ、ケータイを奪う。
そゆこと?そゆことなの?
もう足に力入らない。
すとん、としゃがんでしまう。
「会いたがってるわよ。それでも断るの?」
「いえ....はい....え?いいえ!」
どっちなのよ、と女性は笑い手を差し伸べてくれる。
その手を掴み、立ち上がった。
「行きます!」




