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仲人管理職  作者: 野原いっぱい
8/10

変転(二)


挿絵(By みてみん)


「いったいどんな人なんだろうな、お父さんと一緒に会う女の人って」


啓太はいつものように居間でテレビを見ながら、次の休日に出会う予定の女性について考えていた。

数日前に聞かされたが、父親の再婚の相手だそうだ。

いや、まだ決まったわけではないが、かなり乗り気のようである。

ただ、そう言われても正直ピンとはこなかった。感想を求められたが何も答えられなかった。

その時は、啓太にとっては良いとも嫌とも答えようがなかった。

けれどもあとになって考えてみると、その人と一緒に暮らすことになるかもしれないし、戸惑いを感じてしまう。

またあのような目にあうかもしれない。

漠然とした不安、そして惨めな思い。


二年前に突然母親が啓太の前から姿を消してしまった。

いまだにはっきり覚えている。

『グズで身勝手』と言い置いて家から出て行ってしまったことを。

『愛想が尽きた』と言われたことも誰にも言ってないが耳にこびりついている。

それも実の母親に。

お父さんは悪いのは自分だと言っていた。

いつも帰りが遅く構ってやれなかったと。

けれども啓太には分かっていた。

母親がいなくなった一番の原因は自分だと。

学校にも行かず家に閉じこもってばかりいた自分だと。

周りから注意されても、ガミガミ怒られても返事もせず、怠けてばかりいた自分が悪いと。

ショックだった。負い目を感じてしまった。

けれども、母親に帰ってきてほしいとは思わなかった。

嫌われていたし、自分も母親が苦手だった。

その時は、もやもやした気分に陥ってますます自分の殻に閉じこもってしまった。

父親は困ってしまった。啓太の面倒を見るため仕事を休まざるを得なかった。


そして、母親が戻らないことがわかると、引きこもり相談の窓口を通して家政婦さんを雇った。

五十過ぎの女性で過去に問題児童を扱った経験があるらしい。

彼女は通いで来てくれることになり、食事洗濯等、家事全般をこなしてくれると同時に啓太の世話もしてくれた。

引きこもりの啓太には辛抱強く接した。


「学校など無理して行かなくてもいいのよ。いつまでも家にいても構わないわ」


彼女はそう言って啓太を安心させた。

時間の合間を見て穏やかに話しかけたり、一人遊びにも付き合った。

そして、啓太の内に巣食った対人恐怖心を徐々にほぐしていった。

一週間経って、突然啓太が学校に行ってもいいと言い出した。

どうやらこのまま外に出ずにいることは良くないとの意識が芽生えたのであろう。

チャンスではあったが、彼女は決して急がなかった。


「そう、行ってみる。えらいわね、でも嫌になったらいつでも帰ってきていいのよ」


と啓太に負担を感じさせないようさりげなく登校を促した。

そして次の日に学校に行くことになったが、一方で彼女は先生とも連絡を取り、周到な心遣いを行っていた。

無事に啓太が帰ってくると自分のことのように喜びを表した。もちろん父親にもほめてもらった。彼女はさらに、


「いじめっ子のことよく見るのよ。先生からも叱られ、皆からも嫌がられているから、気にすることないのよ」


と安心させた。

すると、家では相変わらず一人遊びに熱中するものの、登校が嫌だとは言わなくなった。

少しずつだが、勉強やクラスメイトの話もするようになった。

学校の行事もなんとか参加できるようになって、休むこともなくなった。


月日が流れ父親が転勤することになった。

もちろん啓太も一緒に引っ越しすることになったが、家政婦さんとの別れは辛かった。

啓太にとっては実の母親以上の存在になっていたから。


「大丈夫よ。啓太ちゃんならどこ行っても心配ないわ。もし嫌なことがあったら帰ってきてもいいのよ。おばちゃん待ってるから」


半分冗談もあったが、彼女はいつもと同様に啓太を励ました。


新しい土地での住まいも決まり、啓太も最寄りの学校に行くことになった。

もちろん初めて会う生徒ばかりで緊張し、大いに不安であったが、その都度以前の家政婦さんの言葉を思い出して我慢した。

一方で父親は新たな家政婦さんを探したが、なかなかいい人が見つからなかった。

時間面や賃金、さらに性格に難があったりで定まらなかった。

ところが、父親が以前の上司に相談すると、再婚すればいいと言われ、お見合い相手を紹介されたのだった。

そして、何度かその相手と会って、お互い気にいって話が進んだ。

今度は啓太も会うことになったが、心の中で不安が膨らんでいく。

もしかしたら、その人が母親になるかもしれない。

そうなったら、一緒に暮らすことになるだろう。

また、実の母親と同じで嫌われるかもしれない。

また、『グズだ、身勝手だ』と言われるかもしれない。

啓太はそのことで頭の中がいっぱいになっていくのを感じた。



「あら、この写真見て見て、お父さん、お母さん二人とも若いわね」


「そうねえ、確か二十年近く前の披露宴で初めての仲人じゃあなかったかしら」


「へえ、そしたら私まだ生まれてなかったかも」


「さすがに、その時は上がってしまってな。新郎新婦の名前を危うく間違えそうになったよ」


この日大藪家には長女の泉が孫の秀太を連れて来ていた。

大藪夫妻、次女の真知と一緒に送られてきた写真を見ながら話し合っていた。

来年開催の交歓会の演出で、それぞれのカップルの結婚式や披露宴等の写真やビデオを編集して見て頂くことになり、依頼したものが続々と届いているのであった。


「もしかしたら、私、その時の結婚式に刺激されて生まれたのかも」


「これ、真知、変なことを言うんじゃあありません」


八千代が色をなして叱りつける。

大藪もこれには苦笑いするしかなかった。


「そうそう、食べ物の方も豪華なものが出るそうね」


と泉が言うと、大藪もうなずいた。


「そうなんだ。先日、鹿鳥夫妻の店に立ち寄ったんだが、二人とも当日の食べ物を腕をふるって用意しますので、楽しみにしてくださいと言っていたよ」


鹿鳥夫妻は夫の消息不明で十四年もの間、離れ離れだったものを、大藪が偶然に引き合わせ再会させたのだった。

二人にとって大藪は恩人で、今回のパーティーに協力を申し出たのだ。

今は二人して新装の料理屋を開いており、品数も豊富で食材のお膳立てにはうってつけだった。

交歓会当日には店を休みにして、ホテルの業者とは別に、会場の一角にコーナーを設け料理をふるまうとのこと。


「そういえば、由紀ちゃんが私と一緒に受付をしたいって。今から楽しみよ」


由紀は鹿鳥夫妻の娘で真知とは親しかった。


「ところで例のカップルのことで新藤君の方に何か連絡はなかったかい」


大藪は気になっている件を泉に聞いた。


「ああ、例の連絡がとれないカップルね。まだのようだわ」


二人のその後の消息を娘婿に頼んでいた。

その時玄関のチャイムが鳴った。


「私が見てくる。秀ちゃんも行こ」


と真知が外に出ていき、秀太も続く。


「ビデオテープもいっぱい来てるわね。これ見るだけでも大変じゃない?」


八千代が聞くと、泉が答えた。


「直人さんの会社の人たちが手分けして見るそうよ。その中のハイライトシーンを選別してつなぎ合わすそうよ」


「会場にスクリーンを据え付けて映し出すようだよ。そうそうそれと当日雑誌社や民放テレビから撮影に来るそうだ。結構大がかりなショーになりそうだな」


大藪がそう話すと、八千代が慌て気味に言った。


「あら、それじゃあ着ていく服も今から考えないといけないわ」


真知が戻ってきて少し驚いた顔で言った。


「東山と言う夫婦と、それに子供が5人も来てる」


「東山?えーと、誰だっけ」


大藪が首を傾げると、八千代が思い出したように答えた。


「お父さん。もしかしたらあのカップルじゃなくって?」


「え!まさか」


大藪は首をひねりながら腰を浮かした。

そして玄関に向かう。

後に八千代、それに泉、真知も続く。

玄関には大人の男女が立っていた。

その顔には確かに見覚えがあった。

その脇には赤ん坊も含め5人の子供たちが並んでいる。

真っ先に母親が口を開いた。


「大藪様、それに奥様、突然に参りまして大変申し訳ございません。東山でございます。すっかりご無沙汰してしまいまして恥ずかしい限りでございますが、ちょうど家族でこちらに来る機会がありましたので、ご挨拶をと思いましてお伺いしました」


大変丁重で大藪も面食らったがかろうじて応対した。


「これはこれはご丁寧に。こちらこそ大変恐縮です。よくここがわかりましたね」


「先日頂きました案内状のご住所をたよりに地図を見ながら参りました。ご近所の方に伺いましたら、すぐに教えてくださいましたわ。親切な方だったわね、あなた」


「そうだったな。迷うかなと思ったんだけど、早くこられてよかったな」


父親のほうは少し緊張気味であった。


「まあまあ、こんなところでなんだから、皆さん上がってくださいよ」


「いえ、あまりご迷惑になるとなんですから、ご返事だけして失礼しようかと・・」


「ちっとも迷惑なんかじゃ、それに色々お話も聞かせてほしいのでね」


「そうですよ。かなり歩かれてお疲れでしょうしね。少し休んでいかれたらよろしいわ」


八千代も誘う。


「ああ、そうですね。じゃあお言葉に甘えて少しだけ失礼しましょうか、あなた」


「では、人数も多いんで、少しだけお邪魔します」


東山夫妻は遠慮の面持ちで大藪達の案内に従った。

子供たちも大人しくついていったが、初めての家が物珍しくキョロキョロ見回していた。


リビングはさすがに多くの客で手狭となり、大人は予備の椅子を持ち出して腰掛け、ソファには赤ん坊を抱いた子供たちが座ることとなった。

泉と真知が飲み物の用意にキッチンへ立った後、あらためてお互いが挨拶と紹介しあった。

そして、今回家族で以前からの念願であったユニバーサルスタジオに来た後、大藪家に立ち寄り挨拶とご無沙汰のお詫びをする一方で、交歓会の出席の相談したい旨を、東山夫妻が交互に話した。

それに対し、大藪は家族そろってわざわざ訪問してくれたことに感謝し、もう一度来年の再会を歓迎した。

もちろん、家族の交通宿泊費は全額主催者が負担することも忘れずに伝えた。


「やっぱり、お伺いしてよかったですわ。なにしろ私たちの結婚式以来ですもの。すっかり義理を欠いてしまって、もしかしたら気を悪くなさっておられるんじゃないかと心配していたんです」


「いえちっとも気にしてませんとも。こうしてお顔を見せて頂いて私たち夫妻とても喜んでおりますわ」


八千代が答えると、飲み物を持ってきた真知がポツリと言った。


「あら、お説教するんじゃなかったっけ」


これには八千代が慌てた。

そして笑いでごまかしながら真知に言った。


「そうそう、お子さんたちにとっては話ばかり聞いていても退屈よね。別のお部屋に面白いゲーム機やアニメもあるわ。見せてあげなさい真知」


これを聞いた子供たちはいっせいに真知の顔を見た。

皆好奇心にあふれている。

真知は内心やれやれと思いながらも彼らの方を向き誘った。


「じゃあ、僕たち、お嬢ちゃんも行きましょ。飲み物も食べるものもあるわよ」


子供たちはガヤガヤとソファから立ち上がり真知に続く。

もちろん秀太も後を追った。


「あなたたち、あまり騒がないようにね。お姉さんを困らせちゃあだめよ」


母親が釘をさす。

そして皆が出ていくのを見届けた後、再び話し始めた。


「実はあの披露宴での醜態の後、あらためて大変恥ずかしい思いをしましてね。とてもショックで、しばらくは来て頂いた皆様に顔向けできないような気がしたんです」


大藪夫妻は妻の心境を首を振りながら聞くこととなった。

その時、電話が鳴った。

飲み物を配り終えた泉が取りに出ていった。


「正直言ってその時はこの人とも長く続かないんじゃないかなと思ったものでしたわ」


夫の方は淡々と相槌を打っていた。大藪はやはり妻に主導権があると思った。


「でもね、よくよく考えてみると頼りないこの人には私がついてないと駄目じゃないかと、それに、私もこのような気質ですから、結局二人で支え合っていくしかないと」


そう聞くと大藪は感慨深げに答えた。


「私もね数多くのご夫婦と親しくさせて頂いて実感するのは、それぞれの成り立ちが全て違っているし、同時に夫婦間の愛情表現も千差万別だということですよ。うちもそうなんだけど、東山さんところもスタートは危うかったかもしれないが、今では大変幸せそうに見えますよ」


「そう言って頂きますととても嬉しいわ、そうよねえあなた」


「そうですわ。はた目からもうらやましいわ。お子さんにも恵まれているようで」


八千代がそう言うと、幾分恥ずかしげに夫が言った。


「いやあ、気が付いたら5人の子持ちになってしまいました」


皆が笑っていると、泉が大藪を扉の外から呼んだ。

彼は椅子から立ち上がり部屋の外に向かう。

幾分泉の顔が青ざめているのがわかった。彼女は父親の耳に口を近づけこう言った。


「警察からよ。鉄平を留置しているんで、誰か家族の人に来てほしいって」


大藪は一瞬言葉を失った。

眉をひそめ、そして電話口の方に向かった。



一時間後、大藪次郎は連絡のあった警察署で係官から話を聞いていた。

来客を八千代や娘達に任せ大急ぎで駆け付けたのだが受けた説明は腑に落ちないことばかりであった。

鉄平が大学の職員に暴力を振るい怪我を負わせたという。

警備員が取り押さえ知らせを受けた警察官に引き渡されたとのこと。

相手側も救急車で病院に運ばれていたが、幸いにも軽傷ですんだようだ。

事件の経緯としては、鉄平が職務中の相手を呼び出し口論の後、いきなり殴りつけたようである。

それも無抵抗の相手に一方的に暴力を振るう場面を数人の人間が目撃していた。

そしてそのことは取り調べで鉄平も認めている。

ところが、どうもお互いが初対面のようで、二人の説明もきわめてあいまいな部分があったようだ。

鉄平は以前に会った時の相手の言動が気に食わなくて制裁を加えたと言っているものの、いつ、具体的にどういう理由なのかきわめてあやふやであった。

挙句の果ては人違いかもしれないと説明が二転三転しているようだ。

さらに、被害者の方も、自分にも悪い面があったとむしろ鉄平を擁護する印象が目立ち、刑事告発する気は全くなさそうである。

ただ、こちらも話の内容が不明瞭で辻褄も合わず、どうやらあまり公にしたくなさそうな様子だとのこと。

したがって被害届が出ていないことを考慮し厳重注意だけで放免されることになった。

そして大藪は息子の鉄平の引き受けのため、控室で本人の手続きがすむまで待たされることになったが、理解できないことばかりで当惑するばかりであった。

鉄平は学生時代に柔道をやっており、社会人としてのマナーやモラルは充分認識しているはずだし、真面目な性格からしてもただ気に入らないというだけで、非力な人間を傷つけることは考えられなかった。

何か別の理由があるはずで、本人から聞くことになりそうだと思った。


その時、少し離れた場所から大藪の方を見ている女性に気が付いた。

髪型はショートで化粧気なく一見学生といっても不思議でなかったが、不安そうだが凝らした目に引き付けられた。

思わず大藪が会釈すると、彼女は顔を向けたまま、まっすぐ近づいてきた。


「あのう、大藪さんのご家族の方ではないでしょうか?」


彼女がおずおず問いかけると、大藪は椅子から立ち上がり即座に答えた。


「はい、私は鉄平の父親で大藪次郎と申しますが、あなたは?」


「私、高野茜といいます。突然呼びかけてすみません」


大藪は記憶を手繰ったがすぐに思い当った。


「高野さんというと、もしや事故にあわれた方では・・」


「そうです。それは私の姉です。私たち二人姉妹です」


彼女はやや安堵したように答えた。


「それはそれは失礼しました。このたびのご不孝大変お気の毒で謹んでお悔やみ申し上げます。またご家族の皆様もご心痛の面持ちとお察しいたします」


大藪はなんとか弔意を述べた後、少し心配になり、一呼吸おいて言った。


「もしや、今回の事件であなたにもご迷惑をおかけしたのでは?」


「いえ、そうじゃないんです」


彼女は慌てて打ち消した。そして、ややためらいながらも言葉が自然に出ていた。


「私が悪いんです。私があのようなことを言わなければよかったんです」


ほとんど泣きそうな表情になっていた。

大藪は困惑しながらも宥めた。


「立ったままじゃあなんですから座りましょう。それに無理にお話いただかなくてもいいんですよ。事情は息子から聞きますから」


大藪は彼女を座らせ落ち着くように仕向けた。

その気配りと紳士的な態度に安心したようで再び話はじめた。


「いえ、鉄平さんは悪くないんです。むしろ煽った私が悪いんです」


一呼吸置き続けた。


「姉からも聞いていますし、私も一度しかお会いしてませんがなんとなく分かるんです。鉄平さんは全て自分が悪者になって、本当のことを誰にも話さないんじゃないかって」


大藪は賢い娘だと思った。

鉄平の性格を言い当てていた。

そして聞き入るだけで、口を挟まないようにした。


「今日、鉄平さんが家にいらっしゃって、姉の自殺の理由を教えてほしいと言われたんです。私はむしろ来られるのを待っていました。姉に親しくして頂いた鉄平さんにはぜひ話しておきたいと。けれども今となっては間違いだったのかもしれません。いえ、私自身こうなることを期待していたのかも」


彼女は混乱しているようだった。が、しいて大藪は問い掛けようとはしなかった。

彼女が言うに任せた。


「姉には以前から付き合っていた人がいました。そうです。鉄平さんに殴られた人です。学生時代にアルバイト先で知り合った相手で、いったん就職したものの将来教員になるのが夢で会社を辞めて教職の資格を取るためにアルバイトしながら勉強していたそうです。お互いが好意を抱き、姉は彼を励ましながら交際を続けていました。その後二人はかなり親密になり、私には姉から将来誓い合った相手だと聞いていました。ただ、両親は彼に定職がなかったことで、これ以上に話が進むことを危惧していました」


大藪は彼女の筋道を立てた説明に感心した。

とにかくうなずくだけに留めた。


「ところが教職免許は取れてお互い喜びあったんですが、すぐに教員として採用されるわけではありません。いくつもの段階があることは私も承知しています。その内彼に知り合いが大学の職員の話をもってきました。少し希望と違うものの、機会はこれからもあるだろうと考え就職することになったんです。姉も彼の生活が落ち着けば二人の今後は進展するだろうと歓迎しました。けれどもそれからしばらく経って、急に別れ話を持ち出されたんです。姉にとっては全く寝耳に水でした。姉が問い詰めてみると、彼と同じ職場に理事長の娘さんがいて、彼のことを気に入ったそうです。理事長にも耳に入り、娘のことをよろしくと頼まれ彼もその気になって、姉との約束を破ってしまいました。姉にとっては大変ショックだったろうと思います。私もそのことを姉から聞き、彼の心変わりに憤慨しました。と同時に地位や財産に目移りするような男性とは逆に別れてよかったと慰めました。そのころです。姉が鉄平さんと巡り合ったのは」


心なしか彼女の表情に親しみが垣間見られた。


「鉄平さんは落ち込んでいた姉に優しく声を掛けてくれたそうです。もちろん以前の彼との経緯は話さなかったようですが、彼と違って真面目で誠実な鉄平さんにすぐに惹かれました。休日にはよくデートに行ったんですが、帰るたびに鉄平さんのことを話してくれました。ご家族の方にも引き合わされたと言っていましたし、皆さんいい人だったと喜んでおりました。もうその頃には以前の悲しい想いはふっきれていたようです。ところが数か月して姉が体調を崩したんです。念のため病院に行くと妊娠していることを知らされました」


大藪はようやく彼女の死の理由を察した。

彼女は眉を曇らせ続けた。


「姉は茫然としましたが、月数と心当たりからいって以前の彼との子に間違いありません。思い悩んだ末に彼と会って相談しますと、今さらそう言われても迷惑だと、おまけに自分の子じゃなくて今付き合っている男性の子かもしれないじゃないかと言われたそうです。今の相手とはそのような関係じゃないと否定すると、誰の子かわかったものじゃない、これ以上つきまとわないでほしいと突き放されたそうです。彼のあまりの変わりように愕然としました。それから、両親に話しますと頭ごなしに怒鳴りつけられたそうです。だからあのような無責任な男と付き合うのを反対したと。おまけに結婚もせずに関係をもった姉も不道徳で身から出た錆だと。今では両親も取り返しのつかないことを言ってしまったと悔やんでいますが、姉にとっては悲嘆の底に突き落とされた思いであったろうと推察します。もちろん、鉄平さんにはお互い誠実な交際を進めていただけに、打ち明けることはできなかったし、むしろ騙すようなことになったと自嘲していました。私にはそのことを、笑顔を交えながら淡々と語ってくれましたが、まさか死を覚悟している前兆だとは気付きもしませんでした」


彼女の瞼からうっすらと涙が滲みだした。


「両親もとりあえず反省を促すつもりだったそうで、自殺するなど思ってもみませんでした。母もあれ以来寝込んでいますし、父も茫然自失となりましたが、せめて姉の面目を保ちたいという気持ちもあって真実は誰にも話しませんでした。私は姉が大好きでした。二人は仲が良く姉は私には何でも話してくれました。それだけに葬式にも来てくれなかった以前の彼には憤りを感じていますし、憎しみももっています。姉が可哀想でなりませんでした。誰かに本当のことを話したかった。話すとすれば姉からいつも名前の出る大藪鉄平さんしかありませんでした。鉄平さんなら私の胸の内をわかって頂けるのではないかと。そして今に来られると信じて待っていたんですが、いらっしゃった時の喜びを何と表現していいか。全く初対面でしたが、想像通りの人でした。見た目に真面目で実直な方で、鉄平さんから親しくさせて頂いた者としてぜひ自殺の理由を知りたいと聞かれた時は思わず涙が出てしまいました。もちろん私は姉について知っていることを全てお話しました。そうすることが自分の努めで姉の遺言だと思いながらお話しました。私たちの悲しみを共有して頂けば救われるような気持ちがありました。でも何かに期待していたのかもしれません。今回、鉄平さんがなさったことを心の内に思わなかったといえば嘘になります」


「鉄平の反応はどうでしたか」


今まで黙って耳を傾けていた大藪はようやく口を開いた。


「鉄平さんは私の話を真剣に聞き入り、何度もうなずいてくれました。途中で目頭を押さえて、くそう、くそうって、僕は何の力にもなれなかったって、まるで自分の責任であるかのようにおっしゃってくれましたし、私に頭を下げてくれました。その時鉄平さんが本当に姉のことを大事に想ってくれていたと確信しました。姉と同様に私も信頼を寄せましたし、以前の彼の名前と勤務先を教えるのに抵抗はありませんでした。でも、話をし終わりお互い共感を覚えて別れた後、私は不安になってしまいました。鉄平さんを信じたものの、相手のことを伝えたことで間違いが起こらなければと。いえ、先ほども言ったように心の片隅に煽る気持ちがあったのは事実で、胸騒ぎを覚えました。そして、しばらくして私が大学に行きますと、人込みの中で鉄平さんが警察官に同行されるところでした。ですから悪いのは私です。私がそそのかして鉄平さんは義務と感じて動かれただけなんですから。私は謝るつもりで後を追ってここに参りました」


彼女の目は真っ赤になっていた。大藪は驚いて言った。


「もうかなり時間が経っていると思いますが、今までここにおられたんですか?」


「ええ、鉄平さんが許されるまで待っていようと決心していたんです。もし出てこられなければ名乗り出て真実を話そうと思っていました」


「どうやらその必要はなさそうです。鉄平はもう間もなく解放されるはずです。それと、私が聞いた限りでは罪に問われることもありません」


その言葉で茜はほっとした表情を見せた。


「あなたのお話を聞かせていただき、鉄平の今回の行動が納得いきました。けれども私は親として鉄平を叱るつもりです。どのような事情があろうと自分より非力な人間に一方的に暴力を振るうことは許されるものではありません。ましてや昔、礼節を重んじる大学の柔道部で全国大会に出場経験がある人間だけに言語道断と言っていいでしょう」


大藪は一呼吸置いて続けた。


「だからと言って茜さん、あなたが責任を感じることは全くありません。おそらく鉄平はかつての交際相手に対して怒りを感じると同様に、自分自身をも責め立てたんじゃないかと思いますよ。もしかしたら、お姉さんへの謝罪の気持ちがあの行動に駆り立てんじゃあないかと。そして、自分が今何をすべきかを自問自答しただろうと想像できます。ひとつは相手の男性にお姉さんの死を招いた直接の責任を問うこと。もうひとつは自分が何もできなかったことに対しての償いの意識」


茜は大藪の言葉をひとつひとつ噛み締めながら聞いていた。


「けれども決して感情に流され、やみくもに行動したわけではなさそうで、係官から受けた説明では、鉄平は相手の男性をキャンパスの入り口付近に呼び出し殴りつけたといいます。すぐに警備員に取り押さえられたそうですが、わざとその場所を選んだように思われますし、早いうちに誰かに止めてもらいたかったのでしょう。もし本気で制裁を加えたのなら単なる打撲だけでは済まなかったでしょうし、殴るだけで柔道の技は使わなかったようです。また、相手の男性も助けを呼ばなかったそうで、お姉さんに対する罪の意識があったと信じたいですね。警察にも自分も悪かったと話していて、被害届けも出すつもりもないとのことで、鉄平と同様にお姉さんの事故との係わりについては話していないようですね」


大藪は少しためらい気味に話を続けた。


「二人ともお姉さんの事故の真相を表ざたにすることを、避けたかったのかもしれませんね。もっともそれがよいことなのかどうか私にはわかりませんし、一番悲しみの大きい茜さんには辛いことだろうと思いますよ」


茜は俯いて首を振った。


「鉄平については心配はいりませんが、お話を聞いた限りでの気がかりはご両親のことです。娘さんを亡くされたいきさつからしても、ご両親の嘆きは大変なものだろうと推察されますよ。同じような立場の茜さんには難しいことかもしれませんが、どうかご両親を慰めてあげてください。力づけてあげてください」


茜は俯いたまま、小さな声で「はい」と答えた。


その時廊下の奥から係官に伴われた鉄平の顔が見えた。彼は大藪を認め気恥ずかしそうに声を掛けた。


「お父さん、悪かったね、来てもらって」


「ああ、どうやら終わったようだな」


大藪はそう言いながら係官に挨拶した。

鉄平は傍にいる女性に気が付いた。


「茜さん、どうしてここに?」


戸惑いながら声を掛けると、彼女は詫びるように頭を下げた。


「話は茜さんから聞いたよ」


大藪がすぐさま鉄平に目配りして言った。


「話したいことは色々あるんだが、とりあえずここから出たほうがよさそうだな。行きましょう茜さんも、家まで送っていきますよ」


と大藪が促すと、茜はコクリとうなずいた。

その様子は父親の指示に素直に従う娘のようであった。


影山啓太は父親と一緒に駅前ホテルのラウンジに来ていた。

父親の交際相手の女性と会うためであった。

娘も伴って来るようだが、啓太は大変緊張していた。

もしかしたら自分の母親になるかもしれないからだ。

母親というとどうしても以前の家から出て行ってしまった実の母親を連想してしまう。

いつも苛々していて怒りっぽい性格。

疲れ気味で憂鬱そうな顔しか思い浮かばない。

啓太にはその理由がわかっていた。

それだけに今日の対面が億劫であった。自分のことをどう思うだろうか。

やっぱりグズって言われるかもしれない。

あれこれ考えているとやがて不意に父親が立ち上がり手まねきした。


「立花さん、こちらです。ここにいます」


どうやら相手の女性が来たようだ。

その声で啓太はますます固くなり俯いてしまった。

足音で近づいて来るのがわかった。


「すみません遅くなってしまって、待たれました」


「いえ、私たちも先ほど着いたばかりですよ」


「そうですか、実は時間と場所を間違っていないかと少し不安でしたの」


「ああ、どうぞお座りになってください」


二人のやりとりの間、啓太は上目づかいにその女性の顔を眺めた。

笑顔を浮かべた明るい表情に心なしか安心を覚えた。


「ありがとうございます。真矢も座らしてもらいましょ」


娘とともにソファに腰掛けるのが、甘い香水の匂いでわかった。


「それじゃあ紹介しましょう。こちらが息子の影山啓太です」


皆の視線を感じて啓太は縮こまってしまった。


「こんにちわ。啓太君ね。立花です。よろしくお願いします」


優しそうな声に気分が少しほぐれた。


「ハハハ、どうも恥ずかしがっているようだな。啓太、挨拶は?」


父親に促されると、


「こんにちわ」


小さな声であったがかろうじて言えた。


「まあ、しっかりしているわね。じゃあ今度は私たちの番ね。娘の真矢です」


注目が彼女の娘の方に移り啓太は安堵した。

ところがその子の口から出た言葉にびっくりしてしまった。


「パパがいい。やっぱりパパの方がいい!」

甲高い声を発して立ち上がりラウンジの外に走り出した。

啓太はその時初めてその娘が髪に赤い花柄のリボンを飾り、青いワンピース姿だと知った。


「真矢、待ちなさい」


母親は慌てて立ち上がった。

そして蒼白な顔で啓太の父親に向かって言った。


「すみません。こんなことになってしまって。また後で連絡させて頂きますから」


「いえ、ここはかまいませんから、早く行ってあげてください」


父親がそのように言うと、彼女は何度も頭を下げながら娘を追いかけて行った。

残された二人はともに呆気にとられていた。

ただ啓太は緊張から解放されるのを感じた。


「やれやれ、ここまで来たんだから何か美味しいものでも食べにいこうか」


顔合わせをあきらめた父親は、ソファから立ち上がって声をかけた。


「確かレストラン街が向うの方にあったな、行ってみようか」


啓太も立ち上がり父親と一緒にラウンジの外へ歩き始めた。

ホテルは駅ビルと棟続きになっており、通路に沿って様々な売り場が並んでいる。

広くて人通りの多い店内は目新しい陳列品が多く、啓太にとっては興味を引くものばかりであった。

特に玩具類やアニメ関連商品のコーナーは、日常趣味として親しんでいるだけに思わず立ち止まってしまった。

その都度父親から急かされながら進んで行くと、人気のアニメを放映しているモニターを見て再び立ち止まった。

啓太はその前で画像を一心に見つめている少女に見覚えがあった。

赤い花柄リボンと青いワンピース。

後姿だったが間違いなかった。


「おとうさん、あれ」


と父親を呼び止め手で指し示した。

父親もその方向を見つめ少女を認めた。


「うん、あの娘に間違いないな」


そしてあたりを見回した。

けれども母親らしき姿はなかった。


「どうやらはぐれているらしいな」


父親は考え込んだ。

携帯は持っているものの、母親の携帯の有無を聞いてすらいない。

また、あの娘の気性からして、声を掛けても逃げられる恐れがあった。

やはり自分で捜してくる以外ないと思った。

悩んだ末、啓太に賭けることにした。


「啓太、お父さんはあの娘のお母さんを捜しに行くから、ここに居てほしいんだ。もしあの娘がここを離れようとした時にできれば引き留められればいいが、無理はしなくていい。ただ戻ってきた時にどの方向に行ったか見ておいてほしい」


啓太がうなずくと父親はその場から足早に離れて行った。

もちろん啓太には少女をこの場から母親が来るまで留める自信はなかった。

ただ少女が見ているアニメに関心があった。

以前そのストーリー展開に夢中になったのを覚えていた。

もう少し間近で見たいと思い、ゆっくりと少女に近づく。

音声を耳にしたいとさらに近づく。

そしてためらうことなく横に並んだ。



影山が立花早苗を見つけ出したのは、啓太と別れてかなりの時間が経ってからであった。

彼女は広い駅ビル構内を方々捜しまわっていたが、娘が見つからず困り果てていた。

影山は何度も彼女から感謝されたが、子供たちがおとなしく元の場所にいるか少し不安であった。

二人は店内通路を急いだ。


「あ、いるいる。二人ともいましたよ」


影山はほっとして早苗に声を掛けた。


「ありがとうございます。本当に助かりました」


「でも二人で何か話しているようですね」


「どうもそのようですね」


「どうでしょう。少し聞いてみませんか?」


影山は二人の話声が聞こえるところまで来て立ち止まった。


「そうですわね」


早苗も影山の意を察して聞き耳を立てた。


『おにいちゃんのママはどうしちゃったの?』


『お母さんは僕が自分の部屋でアニメに夢中になっていた時、家から出て行ってしまったんだ。それっきり帰ってこなくなっちゃって・・』


『ふーん』


『僕が悪いんだ。僕のことをグズだ、グズだって・・学校にも行かず遊んでばかりいた僕が悪いんだ。グズな僕が嫌で母さんは出て行っちゃったんだ・・』


「違う、違う」


影山は息子の本音を聞き思わず苦笑いしながら呟いた。

彼は前妻が故郷に帰り、昔交際のあった幼なじみと一緒になったことを知っていた。

また、啓太が気がかりで時々見にきていることも知っていた。

が、甲高い声がその思いをさえぎった。


『男のくせにめそめそしちゃダメでしょ!』


「ま、真矢ったらなんてこと」


母親の早苗は娘の言いように慌てたが、相手の啓太は気にしている様子はなかった。


『じゃあ、真矢ちゃんとこのお父さんは?』


『真矢のパパはね、外国に行ったきり帰ってこないの』


『ふーん』


『親戚のおばちゃんが言ってた。パパは外国にいい人ができて一緒に暮らしているって。だから、わたしパパのこと嫌いよ。大嫌い!』


「まあ、そんなこといつの間に」


今度は早苗が赤面した。

彼女は前の夫が報道の仕事を辞めて親密な仲間たちとともに海外支援活動に身を投じていることを知っていた。


『そのパパがわたしのことを、おしゃまっ子、おしゃまっ子って呼んでたの』


『へえー、おしゃまっ子かあ。じゃあ、僕のことはグズっ子って言われるのかなあ?』


『うふふ、おしゃまっ子にグズっ子、なんかおもしろーい。きゃきゃきゃきゃ』


『おしゃまっ子にグズっ子、そう言えば、あははは』


子供たちは二人とも笑いが止まらなくなったようだ。

それを聞いていた大人たちもつられて苦笑してしまった。

影山はもしかしたらうまくいくかもしれないと思い、早苗に声を掛けた。


「どうでしょう。もう一度最初からやり直しませんか?」


「ええ、私のほうこそぜひお願いしますわ」


彼女の返事を聞いて影山は子供たちに近づいた。

そして言った。


「真矢ちゃん、ママを連れて来たよ」


「あ、ママ!」


「心配したのよ真矢。あちこち探し回ったわ」


「ごめんなさいママ」


「今まで何をしていたの?」


「おにいちゃんとお話していたの」


「そう、どんなお話していたの?」


真矢は啓太の顔を見て微笑みながら答えた。


「それは、内緒よ、ね!」


啓太は一瞬戸惑ったが、すぐにうなずく。

大人二人は顔を見合わせ笑った。

そして、影山は子供たちに言った。


「どうだ二人ともお腹空いてないかい」


「そういえば真矢、お腹ペコペコ」


啓太もうなずくのを見て影山は誘った。


「よーし、それじゃあ4人で何か美味しいものでも食べに行こうか?」


「賛成!」


と真矢がすぐに答えた。


「何か食べたいものはあるかな?」


「お寿司、回転すしがいい」


「まあ、真矢ったら」


母親の早苗があきれ顔で言った。


「啓太はどうだ?」


「僕もお寿司でいい」


「じゃあ真矢ちゃん、おじさんがこの近くに回転すしの店があるのを知っているんだ。そこにこれから4人で行こう」


「真矢、よかったわね。一緒に連れて行ってもらいましょ」


そして、4人は会話しながら歩きだした。


「真矢ちゃんはお寿司の中で何が好きかな?」

「えーと、マグロにイクラそれにホタテも好き」

「まあ、真矢ったら贅沢ね。啓太君は何が好き?」

「僕は卵にそれとハンバーグ」

「あらあ、お魚と違うものばっかり、きゃははは」

「まあ好きなもの何でも頼めばいいから」

「楽しみね、啓太君も真矢も」


期待外れと思われた顔合わせが一転和気藹々に。










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