表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/40

クラン証発行

 クラン員が戻ってきて、美湖を個室に案内する。


「すみません。では、先程の能力について説明い頂けますか?」


クラン員は静かに聞いてくる。


「はぁ、といっても、この札に対象を封じたり、開放したりするスキルです。」


美湖は腰にある剣を封じたり、開放したりをくりかえす。


「それ、1枚にどれだけ封じれるんですか?」


「金、銀、銅で、100、50、20個ずつですね。あ、1枚につき1種類ですよ。」


美湖は、それぞれの封じ札をクラン員に見せる。


「それらの作成はどうするのですか?」


「封札スキルで作ります。それぞれ作るのに金鉱石、銀鉱石、銅鉱石が必要です。」


「なるほど。封じれるのは無生物だけですか?」


「いえ、生物も可能です。ただし、1枚につき1個体ですが。」


美湖が話し終わると、クラン員は頭を抱える。


「ミコさん。あなたのそのスキルは危険です。そのスキルで、味方の軍隊を封じて、敵の陣地で解放すれば、一気に敵陣を制圧できます。しかも、あなたの見た目から、町娘を装うことは可能でしょう。ほかにも、商人などに目をつけられれば、安全かつ、大量に物品を運ぶことができます。金鉱石なんて、商人にとってはいくらでも集めることが可能でしょう。ほかにも、危険はあると思いますが、あなたの力は、強力すぎます。」


「は、はぁ。とはいっても、どうしたらいいか分かりませんし。どうしましょう。」


 美湖は、クラン員に対して、困ったように尋ねる。クラン員は、ポカンとしてから、大きくため息をはいた。


「わかりました。あなたがそれなりの力をつけるまでは、私が全力でサポートいたします。この部屋で少々お待ちください。」


 クラン員は、そういうなり部屋を出ていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「お待たせしました。」


 20分くらいして、クラン員が戻ってきた。手には1枚の書類を持っている。


「お時間をとらせてしまってすみません。では、今日登録された、シタガイ ミコさんに対して、私、探索者クラン受け付け、アリア・スカーレットがあなたの専属担当となります。今後の依頼や、素材買取などは、すべて私が担当いたしますので。」


 いきなりの展開に、美湖はついていけなくなる。


「えーっと、いったいどうしてこうなったのか、説明していただけますか?」


「え?理解していないのですか?あなたの能力が強力すぎるので、クランとして、最大限にサポートしたいのです。あなたの能力は、使うものが使えば人族にとって、とても大きな力になるでしょう。しかし、世の中には、悪い人もたくさんいます。なので、私どもで、貴女を精一杯サポートさせてほしいのです。」


「はぁ、まぁ、お願いします。といっても、まったく実感がわかないですが。それで、僕のクラン登録はどうなったんですか?」


「はい、それも完了しております。こちらがクラン証になります。無くされた場合、10000ルクスの再発行料金がかかりますのでお気を付けください。ちなみに、10000ルクスは、Hランクの探索者が1ヵ月くらいかかって稼げる金額です。」


「うひゃ~、それはとんでもない金額ですね。そうだ。この町に来るまでに、何体かの魔物を討伐して、さっきのスキルで持ってきてるんですけど、お金になりますか?」


 美湖は、5枚の封じ札を取り出した。『ゴブリンの死体』『コケの死体』『天然水』の封じられている札だった。


「おお、何を持ってきてくれているのですか?」


「え~と、ゴブリンの死体が二つ、コケの死体が一つ、天然水が150ℓ分くらいですね。」


「は?」


 美湖の持ってきた素材の内容を聞いたアリアは、驚いた顔を見せたがすぐに持ち直し、


「なるほど、では、ゴブリンとコケは解体室で見せていただけますか。天然水は、容器を準備いたしますので、そちらでお願いします。」


 と言って、美湖を別の部屋に案内した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 アリアに案内された部屋は、20畳くらいの広さの部屋で、壁には、刃物や金づちなど、さまざまな道具が置かれたりかけられたりしている。


「この部屋は、解体室です。基本的に、持ち込まれた魔物の死体を解体する部屋です。では、死体を出していただけますか?天然水はこちらのタルに入れて下さい。1つ30リットル入りますので。」


 アリアに言われ、美湖は封じ札から、ゴブリンとコケの死体を解放する。すると足元に、美湖が封じた時と何ら変わらない死体が3つ現れた。そして、タルに天然水を入れていく。5コ目に入れたところで封じ札が空になった。


「おお、予想はしていましたが、なかなかにすごいですね。もし、今後、死体で納品されるときは、数に注意していただかないといけませんね。解体職人も無限にいるわけではありませんから。納品の報酬は、ゴブリンの死体が1体300ルクス、コケの死体が250ルクスです。天然水は30リットルで50ルクスです。後ほど、受付でお渡しいたします。」


 美湖はそれを聞いて納得した。今は、封じ札も少ないので、運べる量に限界があるが、今後増えればほぼ無限に運べるようになる。そうなったときに、処理が追い付かなくなってしまう。


「まぁ、気を付けます。それで、今日は宿に泊まろうと思っているのですが、どこかいいところはないですかね?」


「そうですね。クラン支部を出て、すぐ左に『安らぎの風』という宿屋がありますね。。新人の方にはそこを勧めております。隣に酒場も併設されていますから、食事もとれますしね。」


 アリアは、笑顔で進めてくる。


「わかりました。じゃあ、そこに泊まってみます。」


 美湖の返事に、アリアはうなずくと、美湖を連れて受付カウンターまで戻っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はい、ではこちらが今回の納品の報酬、1100ルクスです。」


 アリアはそう言って、銅貨11枚をトレイにおいて差し出した。


「はい、確かに受け取りました。」


 美湖はお金を受け取ると、封じ札ではなく、開いているカードケースに入れた。


「では、今後は、探索者クランで用があるときは私を呼んでください。専属となった受付嬢は、担当の探索者の方を最優先で対応するので。」 


「わかりました。では、今日はこれで失礼します。明日から、よろしくお願いいたしますね。」


 美湖は、アリアに別れを言うと、クラン支部を後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 美湖は、クラン支部の近くにある『安らぎの風』という宿屋に入る。入口の正面には、木でできた受付カウンターがあり、12歳くらいの女の子が受付に立っている。


「あっ、いらっしゃいませ!安らぎの風へようこそ!」


少女は美湖に気づくと、とびきりの笑顔を向けてくれた。


(何、この娘!?すごく可愛いんですけど!?僕、ロリコンじゃないはずなのに、すごく胸が苦しくなる。)


美湖は、頬を赤くして、少女から視線をはずす。


「ん?お姉さん、大丈夫ですか?うちは1泊300ルクスですよ。うちにとまってくれたら、隣の酒場での食事が半額になりますよ!」


 少女は、年相応の元気の良さで、金額を提示してくる。美湖は、カードケースから銅貨を9枚取り出し、少女に渡す。


「とりあえず、3泊分でお願いします。名前は、美湖です。」


「わかりました。美湖さんですね。私はこの宿屋の娘で、ソクラといいます。では、美湖さんの部屋は、3番の部屋ですね。こちらの廊下にありますのでごゆっくりどうぞ。食事の際は、一度受付に申してください。食事札を渡しますので。それがないと半額になりませんからね。あとは、お風呂の際も言ってくださいね。」


 ソクラは、代金を受け取ると、説明しながら鍵を取り出し美湖に差し出す。美湖は鍵を受け取ると、指定された部屋に向かう。部屋に入って、一番最初に目に入ってきたのは、二人で寝ても余裕がりそうなベッドだった。シーツも真っ白でよく手入れされているのがわかるほどだった。そして、勉強机くらいの大きさのデスクと、二人分くらいのテーブルと2脚の椅子が置いてあった。部屋の大きさもかなり広くて、美湖の着ている装備などを置いてもかなり余裕がありそうだ。


「うわぁ。結構広い。しかも、なんか外国のホテルみたいでわくわくするなぁ。」


 実際、外国どころか、世界が違うのだが、美湖は気にしていないようだった。美湖は、装備を外すと、封じ札から銀貨を2枚、銅貨を10枚取り出し、腰のカードケースに入れ、部屋を出てカウンターに向かう。


「すみません、食事をしたいのですが?」


 カウンターには誰もいなかったので、奥に向かって声をかけると、ソクラが急ぎ目にやってきた。


「あ、美湖さんでしたね。お食事ですね。では、この札を持って、隣の酒場に行ってください。この札を見せれば、半額で食事が可能ですから。」


 と、いちまいの木札を渡される。美湖はそれを受け取り、隣の酒場へ向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 酒場の木扉を開けると、中から、アルコールの匂いが漂ってくる。美湖はできるだけ窓際の席に座った。


「お食事ですか?お酒ですか?」


 美湖が席に座ると、ウェイトレスが注文を聞きに来る。美湖は差し出されたメニュー表を見て、


「では、カウのステーキ定食をお願いします。あとこれ、隣の宿屋で見せるように言われました。」


「はーい。安らぎの風のお客様ですね。では、半額で200ルクスです。料金は前払いとなりますので、ここでお支払いください。」


 美湖は、カードケースに入っている銅貨を取り出して、ウェイトレスに渡す。ウェイトレスは、銅貨を確認すると、


「では、しょうしょうおまちください。」


 と、厨房のほうに戻っていった。美湖は、食事が来るまで、町の様子を見ていた。夜になり、いくつかの建物の明かりは消えているようだったが、まだ、結構な数の建物に明かりがともっている。


「中世みたいな文化だから、夜になると寝るものだと思ってたけど、そうでもないんだな。」


 と、独り言のように呟きながら、窓の外を眺めていた。


 10分くらいして、ウェイトレスが食事を持ってきた。


「お待たせしました。ステーキ定食です。食事が終わられましたら、食器はあちらにお持ちください。」


 ウェイトレスが示したほうを見ると、ファストフード店でよく見る、食器返却棚があった。美湖はうなずき、食事を受け取る。2cmはありそうな熱いステーキと、小振りなボウルに入ったサラダ、こぶし大くらいのパンが2つに、肉の入ったシチューもついている。


「うわ、名前だけで決めちゃったけど、結構量があるな。でも、おいしそうだし、いただきま~す。」


 美湖は、まず、ステーキをナイフとフォークで切り分け、一口食べる。すると、口の中に、熱々の肉汁がしみだして、


(んん~~、おいしい~。なにこれ、めっちゃおいしいんだけど!!)


 と、さらに二切れを口に入れる。続いて、サラダを口直しに食べてから、シチューを飲む。


(これも、濃厚でおいしい。お肉の味がすごい染み出てる。)


 美湖は、パンにシチューをつけながら、どんどん食べていく。間に、ステーキやサラダを食べて、ものの20分くらいで完食してしまった。


「うわ~、幸せ~。このご飯美味しかったよ~。」


 と、お腹をさすりながら食後の余韻を楽しんでいると、


「そういってもらえると、私もうれしいです。」


 と、後ろから声をかけられる。振り向くと、ソクラが立っていた。


「ども、美湖さん。この酒場、私のお父さんが経営してるんです。料理もお父さんが主体で作ってるんですよ。」


「ソクラさん、びっくりさせないでよ。でも、お父さんお料理上手なんだね。」


 ソクラは、美湖の正面に座り、笑顔を向けてくる。


「えへへ、なんか、美湖さんは、お姉ちゃんって感じで、いたずらしたくなっちゃったんですよね。」


 と、舌を出してくるので、美湖は、ソクラの額にデコピンをくらわせる。


「年上をからかうんじゃありません!」


「きゃうっ!?」


 ソクラは、額を抑えながらも、その表情は明るかった。それから、ソクラが食事を終えるまで、美湖はジュースを頼んで会話に花を咲かせていた。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ