草原の町『ラティア』
城壁の近くまで来た美湖は、城壁を見上げていた。
「うひゃ~、たっかいな~。こんなに高くしてどうするんだろ?)
美湖は、城壁に沿って川から垂直に進んでいく。しばらく進むと、何やら人だかりができていた。といっても、列を作り整然と並んでいる。美湖は、その列の一番後ろに並び、一つ前に並んでいる女性に声をかける。
「あの~、すみません。この列は何の列ですか?」
「ああ、この列は、町に入るための検査待ちの列よ。さすがに、町に盗賊や犯罪者を入れるわけにはいかないからね。」
「なるほど、ありがとうございます。」
美湖が礼を言うと、女性は微笑んで、
「あなた、遠くから来たの?この町の入街税は、1000ルクスだよ。自分の順番が近づいてきたら、準備しておくといいわよ。」
と、親切に教えてくれた。美湖は重ねて礼を言うと、列が進むのを待った。
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美湖が並び始めてから、1時間くらいが経過したところで、美湖の順番が回ってきた。美湖はあらかじめ、女性に言われたようにお金を準備していた。
「ようこそ、草原の町『ラティア』に。この町にはどのような目的で来られたのですか? 」
門のところで、受付係をしていた男性職員が、美湖に対して質問をしてくる。
「初めまして。僕は、美羽といいます。この町には、探索者登録と、そのお仕事をしに来ました。しばらくここに住むつもりです。」
美湖は、職員の質問に対して返答する。
「わかりました。では、この石板に触れてください。」
「これは何ですか?」
「おや、見たことありませんか。これは、触れたものに犯罪履歴があるかどうか確認するものです。もし、履歴があったらこの石板が赤く光ります。なければ光りません。光った場合は、拘束、騎士団に突き出すことになります。」
美湖は、わかりましたと言い、石板に触れる。美湖は死んで、この世界に転移してから、魔物しか殺していないので、もちろん犯罪履歴などなかった。
「はい、大丈夫ですね。では、入街税として、1000ルクスをお支払いください。今後、この町に出入りする際は、探索者クランで、登録時に支給されるクラン証をお持ちください。それがないと、毎回入街税をいただくことになりますので。」
職員の説明に、美湖は礼を言うと、ラティアの町に入っていく。ラティアの町の町並みは、中世ヨーロッパのように、石造りの建物が多く、住民が着ている服も貫頭衣のようなものが多く見受けられた。門を入ってすぐに大通りがあり、さまざまな商店が並んでいて、店員が忙しそうに客引きしていた。
「うわ~、すごい。ほんとに異世界だねぇ。」
「お、嬢ちゃん。この町は初めてかい?どうだい?この町の周辺で狩れる『コケ』の肉の串焼きだ。うちは、自家製の調味料を使って焼いてるから、ほかの物よりもうまいと自負してるぜ。」
様々な店を見て、きょろきょろしている美湖に、露天で串焼きを焼いている男が声をかけてきた。
「ええ、そうです。おじさん、おいしそうな串焼きですね。もらえますか?」
「おう、任せな。一本50ルクスだ。半銅貨一枚だな。」
「なら、二本でお願いします。これ、代金です。」
美湖は、代金を店主に差し出し、代わりに串焼きを受け取り、一口食べる。
「おお、ジューシーでおいしいですね。少しピリッとしてますが、これが自家製の調味料というやつですか?」
「お、嬢ちゃん、わかるのか。そうだ。なかなかにうまいだろう。」
店主がご機嫌になってドヤ顔をする。
「はい、あと10本もらえますか?」
美湖は、銅の封じ札から、銅貨をさらに5枚出して店主に差し出す。それを見た店主は、驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり、
「へぇ、面白いスキルを持ってるな。あいよ、少し待っててくれ。」
と、新しい串焼きを作る作業に入った。美湖は、先に受け取った串焼きを食べながら、完成するのを待っていた。
「ほらよ、お待たせしたな。串焼き10本だ。だが、どうやって持っていくんだ?」
「ああ、これに入れていきます。」
そう言って、銅の封じ札に串焼きを封じた。胴の封じ札には、『ゴークの作ったコケの串焼き ×10』と表示された。
「...なるほどな。俺はいつも、ここで店を出してるから、また寄ってくれ。」
美湖は、店主―ゴーク―に、礼を言い、探索者クランの場所を尋ねる。ゴークは、快く場所を教えてくれた。美湖は別れを言うと、探索者クランの場所に向かう。
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大通りをまっすぐ進むと、ほかの建物とは大きさが明らかに違う建物が見えてきた。入口の左右には、剣を持った石像が建てられており、効いていた特徴と一致していた。
「ここがクラン支部か。確かに、よく目立つね~。」
美湖は、建物に入る。中には、鎧を着こんだ剣士や、大きな杖を持った魔法使い、豪華そうな服を着た人など、様々な人がいた。美湖は、入り口の近くにいた女性に、探索者の受付はどこか尋ねる。
「あの~、探索者になりたくて来たんですけど、受付ってどこですかね。」
「はい、探索者登録ですね。では、向かって左側にあるカウンターに行ってください。そこが、探索者担当部署になります。」
女性は、丁寧だが、事務的に場所の説明をしてくれた。
「ありがとうございます。」
美湖は、女性に礼を述べると、説明されたカウンターに行く。カウンターには、4人の女性がいて、それぞれに列が作られ、人々が、事務処理をしていた。美湖は、一番人が少ない列に並ぶと、自分の順番が来るまで待つことにした。
「お待たせしました。本日はどのような御用でしょうか?」
美湖の順番が来て、受付の女性に尋ねられる。今回担当の受付嬢は、腰くらいまであるピンクイルの髪の毛を、ツインテールでまとめており、少々幼さが残る整った顔立ち、つつましい胸が特徴だった。
(うわ、この人可愛い!!)
と、内心思いつつも、美湖は目的を告げる。
「はい。今回は、探索者への登録と、魔物の死体の処理の方法を教えてほしくて来ました。」
「わかりました。では、まず、探索者登録から致しましょうか。」
受付嬢は、カウンターの下から数枚の書類を取り出して、説明を開始し始めた。




