第1階層主 3
美湖は、ビーエンプレスのスキルを詳しく鑑定する。
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眷属召喚
自身より下位の同族を召喚する。
召喚できる上限は取得時に決まり、増減はしない。
残数は、1日に1回復する。
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「なるほどね。さっきの召喚で、残数を全部召喚したんだ。なら、あとは、あいつを叩くだけだね!」
美湖は、ユーナが遊撃している箇所とは反対側に回り込み、氷魔法での攻撃を加えていく。しかし、美湖やユーナ、アリサの攻撃はすべて風の障壁で防がれて、本体までには届かない。その間も、美湖は鑑定スキルで、敵のステータスを確認し続ける。
「はぁ、いくら何でも道遠すぎ。みんなの気力持つかなぁ。」
美湖は、味方の様子もうかがいながら、絶えず攻撃をし続ける。その姿を見た彼女の奴隷たちも、主人に続くように攻撃の手を止めることはない。次第にジャイアントビーも数を減らし、ついにはビーエンプレスのみとなった。
美湖は、ユーナを連れて一度、メンバーたちのところに戻る。アリサも、同じタイミングで戻ってくる。
「さて、ここからは、情報がないから出たとこ勝負になりそうだよ。あいつのスキルは、風魔法、毒、麻痺鱗粉と毒針だよ。とりあえず、アタッカーは、僕とユーナちゃん、そちらのユリカさんかな。狙撃を、アリサちゃん、魔法攻撃をそちらの魔法使いさん。」
「エリザよ。助けてくれてありがとうね。」
美湖が名前がわからず職業で言うと、それにかぶせるように、エリザは名乗り礼を述べる。
「ありがとう、エリザさん。魔法攻撃はエリザさんが動けるならって感じかな。スーリンちゃんは、続けて弓士さんの回復をお願い。エリザさんは、二人を見てあげてくれますか?」
美湖が全員を見渡しつつ確認する。それに対して、みんなうなずくことで答える。
「よし、それじゃまず僕たちが突っ込むから、アリサちゃん、エリザさん、援護をお願いね。」
美湖の言葉に、ユーナとユリカが駆け出し、美湖もそのあとに続く。各々が己の獲物を構え、ユーナ、美湖が両サイドに、ユリカが正面に向かう。それから少し遅れて、アリサがビーエンプレスに左から回り込み、資格に陣取る。そして、彼女の狙撃が始まると同時に、前衛3人がヒット&アウェイで攻撃を開始した。
「ちぃ、やっぱり障壁が邪魔だね。何とか消せないかな。」
美湖は、敵の風障壁により、攻撃を阻まれ悪態をつく。時折氷魔法を使うが、すべて阻まれてしまう。アリサの矢も、ユーナの斬撃も同様に防がれ、かすり傷一つ負わすことができないでいた。
「やっぱり、厳しいね。でも、あと半分なんだけどな。」
美湖は、再び鑑定スキルで、ビーエンプレスのステータスを確認する。
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ビーエンプレス
レベル 30
HP 820/900
ST 330/700
MP 320/800
AT 400
DF 350
MA 450
MD 400
SP 600
IN 420
DX 500
MI 300
LU 120
スキル
眷属召喚 (0/50)
風魔法 (19/20)
毒鱗粉 (10/20)
麻痺鱗粉 (10/20)
毒針 (5/20)
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「結構MPなくなってきたね。もう少ししたら、こっちの攻撃も通りそうだ。」
美湖は、ビーエンプレスのステータスを見て確信した。彼女が確認していたのは、敵のMP残量だった。このペースで行けば、あと1時間もしないうちに敵のMPは切れる計算だ。それまで、こっちは手数を絶やさず、攻撃を加え続けるだけである。
「問題は、ユーナちゃんの吸血のタイミングと、アリサちゃんの矢作成時間を稼げるかなんだよね。かといって、今すると手数が減っちゃうし、どーしよ?」
美湖は、悩みながらも、敵のステータスを確認しながら攻撃を続けていく。
それは突然だった。今まで沈黙を貫いていたビーエンプレスだが、一度大きく障壁を発動させると、障壁を解除し、風魔法の攻撃魔法、ウインドボールをこちらに向けて放ってきた。
「っ、皆!あいつが風の障壁を解除したよ。こっちの攻撃が通るから、今のうちにたたくよ!」
美湖の言葉で、ヒット&アウェイに徹していたユーナやユリカが攻めに転ずる。また、攻撃を繰り出してきそうなら、アリサが出ばなをくじいて牽制する。美湖もそれに続き、氷魔法と剣術を織り交ぜ圧倒していく。
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ビーエンプレス
レベル 30
HP 420/900
ST 220/700
MP 150/800
AT 400
DF 350
MA 450
MD 400
SP 600
IN 420
DX 500
MI 300
LU 120
スキル
眷属召喚 (0/50)
風魔法 (MAX)
毒鱗粉 (10/20)
麻痺鱗粉 (10/20)
毒針 (5/20)
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「あいつの体力、魔力が半分を切ったよ!だけど、風魔法の熟練度が最大になってる。みんな気を付けて!!」
美湖の鑑定スキルで表示されたビーエンプレスのステータスは、先の状態から明らかにダメージを与えているが、先ほどからの風の障壁を張り続けていたのか、熟練度が上がり最大になっていた。
それを聞いたユリカが、
「確か、風魔法スキルの最大魔法は、トルネードだったはずだ。小規模の竜巻を起こすことができる魔法だったはずだ。」
と説明してくれる。それを聞いたエリザは、
「あれを使われると広範囲に被害が出るわ。私は火属性の中級スキル『炎魔法』スキルを持ってます。その魔法を打ち込みますので、少し時間を稼いでください。」
と、杖を構えて詠唱に入る。その様子を見た美湖は、ユーナのタイミングに合わせてビーエンプレスに斬りかかる。
「だってさ、ユーナちゃん。」
「では、彼女の望みに応えるとしましょう。ダークミスト!」
ユーナは、『闇魔法』のダークミストをビーエンプレスの周囲に発生させる。視界を奪われたビーエンプレスは、半混乱状態になり周囲にウインドボールやウインドカッターを放つ。そのうちのいくつかが後衛のアリサやエリザのもとに飛来するが、
「アイスウォール!」
美湖の『氷魔法』アイスウォールが壁となり、その攻撃を防ぐ。
「さすがご主人様。助かった。」
アリサも風魔法には驚いたのか、アイスウォールの陰で安どの表情を浮かべている。そして、エリザの魔法詠唱が完了した。
「『フレイムサンクチュアリ』!」
エリザが魔法名を唱えると、ビーエンプレスを中心に魔方陣が生成され、細い炎の柱が敵を囲む。それは半球状になり、ビーエンプレスが逃げられなくなると、魔法陣からビーエンプレスを飲み込むほどの火柱が吹き上げる。
「うわぁ、なんかひどい...。」
その状態を見た美湖は、ビーエンプレスに同情の念すら抱いていた。
「フレイムサンクチュアリは、この状態を40秒維持します。おそらく倒しきれると思いますが、気を抜かないようにしてください。」
エリザは肩で息をしながらなんとか立っている感じだった。美湖は再び鑑定スキルでビーエンプレスのステータスを確認する。
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ビーエンプレス
レベル 30
HP 120/900
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先ほどは400近くあったHPが見る見るうちに減少していく。
「おお、これなら何とか倒しきれるかも。頑張れ、エリザさん!」
美湖が声援を送る。ほかのメンバーも固唾をのんで見守っている。が、
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ビーエンプレス
レベル 30
HP 30/900
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あと僅かといったところで、エリザの魔法が切れてしまった。
「ああっ!足りなかった。みんな気を付けて!」
エリザの悲痛な叫びが全員の耳に入る。それにより、全員に緊張が走る。
「ユーナちゃん、吸血!」
美湖は自身の首筋をさらけ出し、ユーナに吸わせようとする。が、
「うわぁぁ!!」
ユーナは、ビーエンプレスが放ったトルネードに巻き込まれ、空高く舞い上げられる。そして地面にたたきつけられる。
「ユーナちゃん!!」
美湖は急いでユーナの元に駆け寄る。彼女は、高所からの落下で、意識を失っているようだ。
プツン
美湖の頭で、そんな音が鳴ったように感じた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




