第1階層主 2
美湖が障壁を取り除き、美湖達はビーエンプレスに向かっていく。
「私が先行します。ダークボール!」
ユーナが右手で短剣を抜き、左手に闇魔法のダークボールを生成しビーエンプレスに放つ。ダークボールは、ビーエンプレスに命中し、注意はユーナに向く。
「おらおら!てめぇらの相手はこっちだ!」
アリサは、絶え間なく矢を放ち、ジャイアントビーを打ち落としていく。アリサの命中精度は健在で、一発必中で、打てば打つほどジャイアントビーが撃墜されていく。
「さすが二人とも。さて、大丈夫ですか?戦士さん。」
美湖は、先に挑んでいたパーティーの戦士に声をかける。封じ札からランク1ライフポーションを取り出しておく。
「あ、あんたらは一体?それに、階層主のエリアには障壁が...。」
戦士は美湖を見て驚きの声を上げる。
「まぁ、僕たちは結構おかしいパーティーなので。それよりもあなたたちの回復を先に。これを飲んでください。」
美湖は取り出しておいたポーションを戦士に飲ませる。鑑定スキルで見ながら飲ませると、少しずつだがHPが回復していく。
「ありがとう、私はユリカ。このパーティーのリーダーで、剣士だ。助太刀感謝する。」
ユリカは、何とか立ち上がり美湖に礼を言う。
「今はそんなことは後回しです。僕のパーティーが戦いますから、あなたたちのパーティーは、うちのヒーラーに回復してもらってください。では、僕も行きますから。」
美湖はそう言うと、海洋鉱の剣を抜きビーエンプレスに向かっていく。そちらでは既にユーナがヒット&アウェイの戦法で少しずつダメージを与えている。だが、敵は飛行しているため、遠距離攻撃が少ないユーナは攻めあぐねていた。
「ユーナちゃん!僕も参戦するよ。アイスバレット!!」
美湖は、ユーナの場所を確認すると、フレンドリーファイアにならないように、魔法を放つ。が、ビーエンプレスに当たる前に、何かにはじかれたように砕けてしまった。
「ご主人様!奴はどうやら、風魔法の障壁を纏っているみたいです。それである程度の魔法や、矢なんかはすべて防がれてしまいます。」
ユーナから声が届き、美湖は、氷魔法のアイスバレットを複数生成し放つ。が、それらも敵の魔法にさえぎられてしまう。
「うーん、これは困ったなぁ。僕やユーナちゃんの魔法が効かないなら、僕たちでは決定打に欠けるし。」
ユーナが引き続き、ビーエンプレスの注意を引く。が、ビーエンプレスは、苦にするでもなく、アリサによって減らされたジャイアントビーを、眷属召喚で増やしていく。
スーリンの方は、現在、剣士がある程度持ち直し、弓士と魔法使いが回復を受けている最中だった。
「もう少し時間が必要だね。ユーナちゃん!僕が魔法を発動したら、すぐに僕のところまで戻ってきて!」
美湖は自分の言葉にユーナがうなずいたのを確認すると、氷結魔法を発動する。
「行くよ!『ダイヤモンドダスト』。」
美湖が魔法を発動すると、彼女を中心に、細かな氷が発生し周囲に広がる。それにより、視界は奪われ、気温が急激に下がり、ジャイアントビーは寒さによって、次々と地面に落ちてくる。だが、ビーエンプレスは、風の障壁で気温変化のダメージが無いようだった。
「やっぱり、効かないか。でも、狙いはこっちだしね。」
美湖がつぶやくと同時に、ユーナが美湖の隣にやってきた。
「ご主人様、いったい何をしたんですか?」
「ん?氷結魔法で辺り一面、真っ白けにしただけだよ。それよりも、どうしよっか?」
美湖は、周囲を見ながら言う。現在は、ダイヤモンドダストの効果で視界が遮られており、また寒さで、敵の数が減っているのは確かだが、あくまで一時しのぎにしかなっていない。
「そうですね。一度、ほかのみんなのところまで下がって、体制を整えましょう。奴にはこの冷気は効いていないみたいですし。それに、しばらくしたら、眷属召喚のスキルで再び軍勢が復活するでしょう。」
「そうだね。今の僕たちじゃ、奴を牽制するしかできなしね。下がろうか。」
二人は、敵からは目をそらさず、5人がいる場所まで戻っていく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どうしたんだ、ご主人様?」
いきなり戻ってきた美湖達を、アリサは不思議そうな顔で迎えた。
「いやぁ、どうにも突破口が見つからなくてね。一度体勢を立て直そうかと思ってさ。」
「なるほどな。なら、私たちが戦っていた内容を話そう。」
美湖の言葉を聞いたユリカが、美湖達が来るまでの戦闘を語る。
「まず、あいつは基本的に自分から動かない。ほとんどの戦闘を眷属であるジャイアントビーにさせている。あいつがすることは、自分を守る風の障壁を作り続けることと、眷属を追加で召喚することくらいだ。」
「でも、鑑定スキルでは、あいつのステータスに毒鱗粉と麻痺鱗粉ってのがあるのを確認したよ?」
ユリカの説明に、疑問を投げる美湖。
「...ということは、それらを使うほど追い込んでいなかったということか。なかなかに悔しいな。だが、そのスキルは危険だな。風魔法を使えば、その鱗粉は短時間で、なおかつ広範囲に広がる。毒に冒されたら、あっという間に蹂躙されてしまう。」
ユリカは、悔しそうに地面を殴る。だが、美湖は何かを考えて、
「んー、でも、何とかなると思いますよ?ユーナちゃん、アリサちゃん、さっきと同じように、あいつに攻撃を仕掛け続けて。スーリンちゃんは、引き続きそっちの弓士さんと、魔法使いさんを回復させてあげて。アリサちゃんとユリカさんは、3人を守って下さい。アリサちゃんは、ジャイアントビーが召喚されたら、そっちの殲滅を優先してね。ユーナちゃんは、とにかく攪乱して。僕も攻撃には参加するけど、絶対に無理はしないこと。僕があいつのステータスを確認して、魔力が切れたところで合図するから、そしたら全員で突撃って感じかな。」
美湖はそう言うと、海洋鉱の直剣に魔力を吸わせ、魔力を満タンにする。ユーナは剣を持ち替え、海洋鉱の短剣と、妖精の短剣を装備する。美湖はさらに、封じ札からアリサ用に、何本かの丸太を取り出し、ユーナが装備していた赤銅の短剣を封じる。
「おい、なんだそのスキル!?いきなり物が現れたぞ?それに、ステータスを確認って、どうやるんだ?」
ユリカが驚いているのを見て、美湖は締まったという顔をした。
「あっちゃ~、ユリカさん、他言無用でお願いしますね。これは僕のスキルで、この札1枚につき1種類、物をしまうことができるんです。数は封じ札の種類で決まっていて、この銅の札は、1枚につき20個までしまうことができます。それに、僕、鑑定スキル持ちなんで、あいつのステータスも見れるんですよ。」
美湖はそう言うと、各人にランク1ライフポーションと、マナポーションを渡す。ユーナたち美湖のパーティーは、それらを受け取るとポケットにしまう。ユリカはいいのか?と確認してから受け取っていた。
「さて、そろそろダイヤモンドダストも晴れてくるよ。とにかく耐えて、耐えてチャンスを待とう。そして、チャンスが来たら、全員で全力攻撃をぶつけるんだ。そうすれば、勝てると思う。」
美湖はそこで言葉を切ると、全員を見渡して、
「絶対に、生きて帰るぞ――!!」
と、大声で、気合を入れる。
「ご主人様!?こんな敵の真ん前で大声なんて出さないでください!」
ユーナは慌てて言うと、短剣を抜き、ビーエンプレスに向かっていく。それを見た美湖は、
「...ごめんなさい...。」
と、肩を落としたが、すぐに気を取り直し、敵に向かっていくのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「何というか、面白いリーダー殿だな。」
美湖の様子を見ていたユリカが、アリサに声をかける。
「だろう。私も今日が2日目だが、あの人に買われてよかったと思えているよ。さて、おしゃべりはやめて、しっかり役目をこなそうぜ。」
アリサはそう言うと、美湖が準備してくれた丸太にウッドクラフトスキルを発動し、丸太を矢に変えていく。
「おお、アリサ殿は、ウッドクラフトのスキル持ちか。うらやましいな。そちらのパーティーは、優秀な方が揃っているようだ。」
「そうでもないさ。ご主人様が、私たちの長所をしっかりとつかってくれる。だからそう見えるのかもな。そんな人だからかな?しっかりと答えたくなる。自然にな。」
ユリカの言葉に返すと、アリサは矢をつがえビーエンプレスに向けて矢を放つ。彼女の放つ矢は、敵の近くまでは狂いなく飛んでいくが、風の障壁に阻まれ命中することはなかった。
「ちっ、やっぱり当たらねぇか。これは精神的に来るなぁ。」
放っても当たらないとわかりきっている攻撃は、いくら重要な役割でもやる気が続きにくい。だが、アリサはしっかりと矢をつがえ、美湖に言われたとおり、矢を放ち続ける。
「…お待たせしましたぁ。魔法使いさんの治療終わりましたぁ。」
スーリンの声を聞きアリサ達が振り替えると、彼女の腕に抱かれて薄く目を開けた。
「...ん、ここは?」
目が覚めた魔法使いは、そのまま周囲を見渡し、今自分が置かれている現状を思い出したようで、
「って、ユリカ!?敵はどうなったの?レイクは無事?」
近くにいたユリカに矢継ぎ早に質問を投げかける。
「落ち着け、エリザ。まだ戦いは終わっていない。今お前を抱えてくれている方々が、私たちを助けてくれたんだ。それよりも、立てるか?」
ユリカは、エリザと呼んだ魔法使いに手を差し出す。エリザは、その手を取り、少し揺らめきながらも、しっかりと立ち上がった。
「...もう大丈夫。あなたたち、どうもありがとう。私はエリザ。ユリカと同じパーティーで魔法使いをやってるわ。」
「私はアリサ、こっちはスーリン。二人とも、あそこにいるご主人様の奴隷だ。」
アリサはそう言って、ビーエンプレスに向かっていっている美湖を指す。
「そう。って、レイクは?彼女は無事なの?」
エリザは、自分の仲間である弓士が心配なようだが、スーリンが落ち着かせる。
「大丈夫ですよぉ。とりあえず、安全なところまでは回復させてありますからぁ。あとはぁ、しっかりと回復魔法をかけてぇ、動けるまでに体力を戻すだけですねぇ。ですがぁ、その前にぃ、少し魔力回復させてもらいますねぇ。」
スーリンはそう言うと、美湖から渡されたランク1マナポーションを飲み、レイクと呼ばれた弓士の状態を見ていく。
「弓資産のことは彼女に任せておけば大丈夫だ。それより、敵さんはいつになったら動くのかねぇ。もう眷属もいなくなってるってのに。」
アリサは、矢を放ちながら、周囲の警戒も行っているが、現在はビーエンプレスのほかには、周囲に魔物の気配はない。
「確かにな。だが、油断は禁物だ。いつ召喚してくるかわからないからな。っと、言ってたら来たぞ。あれが奴の眷属召喚だ。」
ビーエンプレスの警戒をしていたユリカが、眷属召喚の前兆を確認し伝えてくれた。ビーエンプレスの周囲にいくつもの魔方陣が浮かび上がり、その魔方陣の中心に、ジャイアントビーが現れる。しかも、一度に30体は召喚しているようだ。
「おいおい、なんだよあの数。あんなの、普通に戦線崩壊するだろ。」
「ああ、私たちの時も、やっと全部倒したと思ったら、これだ。一気に戦意が失わわれるだろう。」
二人は、現れたジャイアントビーに向き直り、アリサは狙撃で、ユリカは近寄ってきた個体を切り伏せていく。
美湖やユーナも、ジャイアントビーを処理しつつ、ビーエンプレスの意識を自分たちに向けるため、攻撃の手を緩めてはいなかった。
「くそっ、一気に30はつらいな。ユリカさんよぉ、そこの3人はしっかり守ってやってくださいよ?」
アリサは、スーリンたちの元を離れ、様々な方向から敵を射抜いていく。スーリンたちに寄っていく個体、ユーナや美湖に背後から寄っていく個体。それらを絶妙な位置で撃ち落としていく。
「さすがアリサちゃん。でも、自分のことが疎かかな。『アイスバレット』。」
アリサがジャイアントビーを打ち落としていくのを見ていた美湖だが、アリサの背後から近づいていく個体がいるのに彼女が気づいていないのを確認すると、氷魔法を放ち、その個体を打ち落とす。
美湖の魔法が自分を助けたことに気づいたアリサは、美湖に向かって頭を下げる。
「さて、あいつのステータスハッと。」
アリサの安全を確認した美湖は、鑑定スキルを使い、ビーエンプレスのステータスを確認する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ビーエンプレス
レベル 30
HP 820/900
ST 330/700
MP 420/800
AT 400
DF 350
MA 450
MD 400
SP 600
IN 420
DX 500
MI 300
LU 120
スキル
眷属召喚 (0/50)
風魔法 (19/20)
毒鱗粉 (10/20)
麻痺鱗粉 (10/20)
毒針 (5/20)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「え、眷属召喚の数字って、熟練度じゃなくて、残数だったの!?」
敵のステータスを確認して、一番最初に美湖が驚いたのはそこだった。




