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4人の食事

大変お待たせいたしました

 ラティアの町に戻ってきた一行は、クランには寄らずに安らぎの風亭に戻ってきていた。


「あ、美湖さん、ユーナさん、お帰りなさい。あれ、そちらの方々は?」


 扉を開けると、ソクラが迎えてくれたが、アリサとスーリンを見て不思議そうな顔をした。


「あ、ただいま、ソクラさん。この二人は、新しい仲間のアリサちゃんとスーリンちゃん。今日からこの二人も泊めたいんだけど大丈夫かな?」


「大丈夫ですけど、お二人が今泊まっている部屋は二人部屋です。4人では手狭になると思いますが、大部屋に移動されますか?」


「そうだね、お願いできるかなソクラさん。」


「わかりました。では追加で300ルクス必要ですので、あと、今うかがってる残りの日にちが10日分なので、3000ルクスですね。銀貨3枚いただけますか?」


 ソクラに言われ、美湖は銀貨3枚を支払う。


「はい、確かに。荷物の移動はどうしますか?」


「それは大丈夫だよ。僕のスキルがあれば簡単だしね。そもそもそんなに荷物出してないしね。」


 そう言って、美湖は新しい部屋の鍵を受け取ると、3人を連れて今まで泊まっていた部屋に向かう。そして、部屋に置かせてもらっていた荷物を一度封じ札にしまい込むと、部屋に何回かに分けて生活魔法の『クリーン』を発動させ掃除していく。


「ご主人様、どうして部屋の掃除を?お世話になってるとはいえ、掃除は宿の仕事では?」


 せっせと部屋の掃除―といっても、魔法をかけていくだけだが―をしている主人に、ユーナは疑問を持った。だが、


「ん?お世話になってるからこそだよ。いつもは、毎日掃除してくれているけど、せめて、部屋を後にする時くらいは、ありがとうの気持ちで掃除しないと。ま、気持ちの問題で、僕の故郷の習慣みたいなものだよ。だけど、みんなもこの気持ちは持ってくれると嬉しいな。さて、掃除も終わったし、新しい部屋に行こっか。」


 美湖は掃除を手早く済ませると、必要なものを持って新しく用意された部屋に向かう。新しく用意された部屋は、部屋の中が二つに分かれており、一つはリビングのような部屋、もう一つはダブルベッドが二つ置かれた寝室に分かれており、さらに、浴槽付きのお風呂がついていた。


「おお!!これはすごい部屋だね。うわぁ、ベッドフカフカ!」


 美湖は部屋に入るや否や、テンションMAXでベッドに飛び込んだ。そして、足をバタバタさせてベッドの感触を楽しんでいる。


「もう、ご主人様?まだお風呂にも入っていないんですから、先に体を清めましょうよ。」


 見かねたユーナが美湖に声をかけると、「はーい」と素直にベッドから降りて装備を外していく。もちろん、ベッドに『クリーン』をかけることも忘れない。

 全員が装備を外し、外出用のラフな格好に着替え終わる。護身用にそれぞれの武器はもったままだが。


「さて、んじゃご飯食べに行こっか。」


美湖は3人を連れて、宿に併設されている食堂に向かう。食堂は、相変わらずのアルコール臭が漂っており、美湖たちはあまりにおいのしない窓際に陣取る。


「んじゃ、今日は新しいメンバーが加入したことを祝って、豪華にいこうか!」

 

 美湖はそう言うと、いつも頼んでいる物より、少し価格が高いメニューを注文していく。もちろん、ソクラから渡されている木札を見せるのも忘れない。全部の注文を聞いたウェイトレスが注文を復唱する。


「はい、では確認しますね。

 フレンジカウのステーキが2つで600ルクス。

 コケの唐揚げが3つで180ルクス

 ビッグボアのシチューを小鍋で1つで200ルクス

 白パンが8つで80ルクス

 果実水がピッチャーで2つで40ルクスですね。

 それから、安らぎ亭の割引札で半額になって、合計が550ルクスになります。」


 内容に間違いがないのを確認すると、美湖は封じ札から出しておいた銅貨、鉄貨それぞれ5枚ずつを手渡す。ウェイトレスはそれを受けとると、厨房の方に下がっていく。


「ご主人様?そんなに注文して食べれるんですか?」


 ユーナが心配そうに美湖に尋ねるが、


「大丈夫大丈夫。食べきれなければ、僕のスキルでお持ち帰りもできるし。いつでも熱々が食べられるよ!」


 と、美湖はあっけらかんと言うだけだった。


「大丈夫なんですか?勝手にお持ち帰りして。」

 

 今度は、アリサが美湖に尋ねる。


「それも大丈夫。この間、ソクラさんに確認しといたから。器とかそういうのを自前で準備してくれたら問題ないんだって。」


 と、しっかりと調べていたようですぐに返した。


「はぅ~、ご主人様のスキルはぁ、大概ですぅ。」


「ちょっとそれは失礼じゃないかなぁ?」


 スーリンがぽろっといった言葉に、美湖はデコピンで返す。

 そんな感じで、料理が来るまで4人は他愛のない話に花を咲かせるのだった。


「ご注文の料理、お待たせしました~。」


 しばらくしてから、ウェイトレスがいくつかの盆を持ってやってきた。さすがに一人では持てなかったのか、数人が並んでいる。そして、美湖が注文した料理をテーブルに並べていく。


「では、ごゆっくりどうぞ~。」


 と、ウェイトレスたちは、料理を並べ終えると厨房のほうに戻っていった。


「さて、料理も来たことだし、アリサちゃん、スーリンちゃんのパーティー加入を祝して、かんぱーい!!」


「「「かんぱーい!」」」


 美湖の音頭で、グラスを打ち合う4人。そして、食事が始まった。


 4人は料理に舌鼓を打ちながら、今後の方針について話していく。


「そういえばご主人様、アリサさんとスーリンさんが加入して人でも増えたことですし、塔の攻略に本腰を入れていくということでよろしかったですか?」


「そうだねぇ。でも、様子を見ながらだよ。薬や道具をバンバン使わないといけないなら、いったん引いて、自分たちのレベルを上げていく感じかな。別に無理して上がっていってもいいことないしね。しっかり地力をつけていこうと思ってるよ。」


「そういえば、ユーナさんは双剣術が得意なんでしたよね?なら、私にも剣術を教えていただけませんか?」


 アリサがユーナに向かって剣術の指導を請うていた。


「ん?どうしてですか?アリサさん。」


 ユーナが首をかしげながら問い返す。


「私のことはアリサでいいですよ。いえ、私は短剣術のスキルがありますが、まだ低レベルでして。万が一、近距離戦に持ち込まれたらあんまり役に立てないので。もちろん、弓矢での射撃が私の役目というのは理解していますが。やっぱり、手札は多いほうがいいと思いまして。」


 と言い、一度言葉を切り果実水で口を潤す。それを聞いたほかのメンバーは、


「ん~、僕はいいと思うけど。でも、まずはパーティーとしての連携をしっかりするのが大事だからね。まずは基本からって感じかな。最初から上層に登るつもりもないから、しっかり連携をとれるようにしてからにしない?」


 と、美湖が言う。


「今日は、それぞれの役割を知るためにも少し狩りをしたけど、明日からは4人でどんな風に動けばいいかを確かめていく感じだからね。だから、最初はそっちに専念してほしいかな。」


「ご主人様の言う通りですね。確かに、手札が多いほうがいざというときに助かりますが、この周囲の魔物や、第1階層くらいの魔物であれば、そんなに無理をする必要もありませんからね。ですから、アリサ、スーリンも自分の役割をしっかり体で覚えることを優先したほうがいいでしょう。」


 ユーナも美湖の言葉に続ける。


「わかりました。出すぎたことをいって申し訳ありません。」


「ううん、そんなことないよ。むしろ、そういう風に自分からやりたいことをいってくれるほうが、僕としてもうれしいよ。もちろん、ユーナちゃんもスーリンちゃんも、自分たちがやりたいことがあったら遠慮せずに言ってね。」


 と、美湖は言いながら、料理を口に運ぶ。ユーナたちも美湖に続き食事を再開する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はぁ~、食べた食べた。もうお腹いっぱい~。」


 食堂での食事が終わり、美湖たちは一度部屋に戻ってきていた。


「もう、ご主人様?食べてすぐ寝転がってたら、豚さんになっちゃいますよ?」


 ベッドで転がっている美湖を、ユーナが諭す。


「あ~!ひどいんだぁ。ユーナちゃん、最近言うようになったよね。」


 美湖も、笑いながらユーナに返す。


「はぁ、ご主人様とユーナさんてぇ、いつもこんな感じなんですかぁ?」


 美湖とユーナの掛け合いを見たスーリンがあきれ顔で聞く。


「ん~、まぁ、最初はユーナちゃんも奴隷根性がやばかったけど、いい感じに僕に毒されてきたよねぇ。」


「そうですね。今でもたまに思いますよ。こんな関係でいいのかと。ですが、ご主人様がこんな調子なので、気にするのもばかばかしくなってきて。」


 と、二人は微笑みながらスーリンに返す。


「だから、二人ともそんなに気にしなくてもいいよ。特にアリサちゃん、そろそろ口調、元に戻したら?辛くない?」


 美湖は二人に態度を崩すように促しながら、アリサに口調を元に戻すように言ったが、ほかの二人はぽかんとしていた。


「...はは、すごいですね、気づいちゃうんですね。」


「まぁね。それに、もし奴隷だから口調なおしてたってのなら、気にしなくていいから、素の口調に戻していいよ。」


 美湖がそういうと、アリサは今までの真面目そうな表情を変え、不敵な笑みを浮かべた。


「ええ、わかりましたよ。しっかし、どうして気づいたんですかい?自分で言うのもなんですが、結構素の感じにできてたと思うんですがね。」


 アリサが、不敵な表情のまま美湖に尋ねる。美湖は、やわらかい表情を浮かべながら、


「ふふ、僕をなめちゃいけないよ。なんせ、僕の性癖は少し常識はずれだったしね。だから、周りの共同にはけっこう気を使ってたんだよ。だからかな、僕からしたら、若干違和感があったんだよね。」


 と、一度言葉を切ってから、


「それに、素のアリサちゃんのほうが可愛いよ?」


 と、何気ない感じで言った。それを聞いたアリサは、一気に顔を赤くして、


「は!?なに言ってんだよ!私が可愛いとか、ったく、ご主人様は調子いいんだから。」


 と、語尾がどんどん尻すぼみしていき、うつむいてしまった。


「はは、案外初心なんだねぇ。さて、それじゃ皆でお風呂に行こっか!」


美湖が3人に声をかけると、ユーナは普通に準備し始めたのだが、アリサとスーリンが案の定引き下がったので、美胡は二人の手をとると、少し強引に風呂まで連れていくのだった。


「ふふ、あの子達がご主人様色に染まるのも、時間の問題かしらね。」


ユーナはその様子を見て微笑みながら呟くと、美湖達を追いかけて行った。






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