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メンバーの実力

 美湖がゴブリンに駆け寄ると、ゴブリンたちはとびかかるように美湖に襲い掛かる。しかし、美湖は、それらを横に避けてかわすと、すぐにゴブリン1体の首を剣で斬り落とす。その間にゴブリンたちは体勢を立て直すが、そのころには、美湖が生成した氷魔法のアイスバレットがゴブリンたちに向けて放たれていた。


「「ぐぎゃ!?」」


 ゴブリンたちは、何が起こったかわからないままその場に倒れた。


「ふぅ。とまぁ、僕の戦い方はこんな感じかな。」


 美湖は剣の血糊を飛ばして、ユーナたちのほうに向きなおる。


「おお、さすがご主人様。素晴らしい手際です。」


 ユーナは、美湖の戦闘を手放しでほめてくれたが、


「「...。」」


 新入りの二人は、美湖の戦闘を見て引いていた。


「あれ、二人ともどうしたの?」


 美湖は引いている彼女たちに、首をかしげながら近づいていく。するとアリサが、


「いえ、ご主人様、強すぎませんか?」


 と、苦笑いしながら訪ねてきた。美湖はきょとんとしながら、


「そうかな?ま、強い分には問題ないからね。さて、次はユーナちゃんの番かな。お願いね。」


「はい!任せてください。ご主人様に恥じない戦いをお見せします。」


 と、ユーナは自身の得物を抜き、周囲の警戒を開始した。しばらく草原をさまよっていると、コケとフレンジカウが4匹ずついる群れを発見した。


「ん~、ユーナちゃん。あの群れを瞬殺してみてよ。」


 美湖は、ユーナに提案してみた。その提案を聞いたアリサとスーリンは唖然としていたが、


「お任せください。では、ご主人様、少々失礼します。」


 ユーナはそういうと、美湖に近づき、彼女の首筋に牙を突き立てた。


「んっ!あぁ、ユーナちゃぁん…。」


牙を突き立て、美湖の血を吸うユーナ。美湖はそんな彼女の行動を咎めるどころか、受け入れされるがままになっていた。時間にして数秒だったが、ユーナが離れたあと、美湖は力が抜けたように、その場に崩れた。


「ちょっ、ユーナさん、何を!?」


「ああ、言ってませんでしたね。私はダンピールとサキュバスのハーフなんです。なので、ダンピールの吸血スキルでご主人様の血を吸って、一時的にステータスを爆上げするんですよ。一応、力を見せるという目的なので、全力をお見せしますよ。」


 そう言うと、ユーナは赤銅の短剣と海洋鉱の短剣をかまえ、群れに向かってものすごいスピードで迫り、一番手前にいたコケの首を一閃で切り落とす。コケやフレンジカウたちは、そのコケの頭が落ちる音で、ユーナが向かってきているのをようやく理解した。しかし、その時には、フレンジカウ2頭の首が落ちていた。


「ふふ、あとはこれで行きましょうか。」


 ユーナは、一度距離をとると、両方の短剣を鞘に納め、両手に闇魔法のダークボールを作り出し、残りの敵に命中させていく。


「ふぅ、終わりましたご主人様。ん?お二人は何を驚いているのですか?」


 ユーナが討伐を終え3人のところに戻ってくると、アリサとスーリンが驚きの表情を浮かべ、美湖が苦笑いを浮かべていた。


「いやぁ、ユーナちゃんの戦い方がすごかったからね。それより、体の方は大丈夫?」


「はい、まだ大丈夫ですが、あと数分で切れると思います。なので、少し休ませていただきますね。」


 ユーナはそう言うと、近くにあった岩に座ってもたれかかった。


「はいはい。ゆっくりしててね。さて、次は二人の番だよ。」


 美湖はアリサとスーリンに向き直り、調子を確認する。


「...あの、ご主人様たちに、私たちは必要ですか?」


 アリサが恐る恐るといった感じで美湖に尋ねる。


「ん?どうして?」


「だって、お二人ともとてもお強いじゃないですか。近距離、遠距離、どちらも使いこなして、スーリンさんはまだヒーラーとしての役割がありますが、私はお二人に比べたら霞んでしまいます。」


 と、最後の方は、声が小さくなっていった。アリサは、美湖とユーナが自分の役割を完ぺきにこなすことに、自身の必要性のなさを感じていた。


「ん~、アリサちゃん、それは違うよ。」


 美湖はそんなアリサの言葉を否定する。そして、頭をなでながら、


「確かに、僕たちは近距離も遠距離も使えるけど、だからといってアリサちゃんが必要ないわけじゃないんだよ。アリサちゃんの遠距離攻撃があれば、僕たちは後ろを気にせずに、敵と思う存分戦える。今までは、二人しかいなかったからね。できることは全部しないと、戦えなかったけど、これからは4人になるんだし、一芸に特化したほうがパーティーは強いんだよ?だから、アリサちゃんは、アリサちゃんの役割を果たしてくれたら、それで僕たちは助かるんだよ。」


 と、諭すようにアリサに告げる。それを聞いてアリサは、両目に涙を浮かべながら、


「ご主人様。ありがとうございます。私は私ができることを精一杯やらせていただきます。」


 と、力強く答えるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ユーナが岩にもたれかかり休み、ほかの3人も少し休憩をはさんでから、再び狩りを再開した。ユーナが休憩しているため、岩場の周辺を索敵しているとコボルトが3匹現れた。


「お、いい感じに出てきてくれたね。さて、二人は基本遠距離だから、僕が前衛を務めるよ。といっても、この辺りの魔物だと、僕の攻撃で一撃だからね。僕は防御に徹するから、二人が倒してね。」


 美湖は、アリサとスーリンにそう指示を出すと、コボルトを抑えるために駆けだしていった。


「ほんとに、私たちだけでやるんですね。スーリンさん、いきますよ。」


 アリサは、弓に矢をつがえ、美湖が抑えているコボルトに狙いを定め矢を放つ。矢葉山なりに富んでいき、コボルトの額から後頭部を貫き絶命させた。


「うわ!びっくりした。これがまぐれじゃないなら、すごい命中精度だ!」


 美湖は、自分すれすれで飛んできた矢を見て、驚いていたが、次に起こったことでさらに驚く。後ろで控えていたコボルトの頭に矢が次々と刺さり、残りの2体も絶命した。


「あ、全部倒しちゃった。ごめんなさい、スーリンさん。」


 アリサは、やっちゃったという顔で、スーリンに謝る。


「いえぇ、大丈夫なんですがぁ、アリサさんすごいですねぇ。」


 と、スーリンもどうしたらいいのかわからない感じで答えていた。そこに、美湖が戻ってきて、


「いやー、アリサちゃんすごいね!あんな遠くから、あれだけヘッドショット決めれるなんて、自分のこと下卑することないのに。」


「へっどしょっととはなんでしょうか?いえ、二人でという話でしたのに、すみません、私一人でやってしまって。」


 アリサは、申し訳なさそうに美湖に謝るが、


「何だ、そんなこと気にしてたのか。大丈夫だよ。むしろ、アリサちゃんの力が知れてよかったよ。スーリンちゃん、ごめんね。次の獲物探してくるから、もう少し待っててね。」


 と、美湖は気にした様子もなく、アリサの頭をなで落ち着かせた。アリサは、申し訳なさそうにしながらも、どこか嬉しそうにされるがままになっていた。


「ふふ、ご主人様ぁ?私が寝ている間に、新しい子とイチャイチャするとは、これは今夜お仕置きが必要ですか?」


 ふと、美湖の後ろから、底冷えするような声が聞こえてきて、美湖はびくっとして後ろを振り向いた。そこには、笑顔だが目が笑っていないユーナがいた。


「ユ、ユ、ユーナちゃん!?もう起きたの!?いや、これは違くって...」


 美湖はうろたえて、おろおろとしてしまっていたが、ユーナはふっと表情を軟化させ、


「冗談ですよ、ご主人様。それより、スーリンさんの力を見るには、誰かがけがをしないといけません。なので、私と模擬戦をしませんか?」

 

 と、美湖に提案した。その言葉に、美湖も何とか持ち直し、


「う、うん。そうだね。確かに、ヒーラーとしてパーティーに入ってもらったのに、その力を見ないとね。それに、ユーナちゃんとの模擬戦、楽しそうだしね。」


 美湖は、海洋鉱の直剣を抜いてユーナに向かい合う。ユーナも、ファングククリと、魔鉄の短剣を抜いて構える。


「へぇ、その2本を使うんだ。あんまり使わないから、ユーナちゃんには向いてなかったのかと思ってたよ。」


「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、癖が強いので、使いにくかっただけですよ。」


 美湖は、「それが向いてないっていうんだけどなぁ」とつぶやきながら、ユーナとの間合いを詰め、大上段からの一振りを浴びせる。


「ご主人様、ずいぶん素直な行動ですね。」


 ユーナはそう言うと、美湖の一振りを横に飛ぶことで避け、美湖の胴にけりを入れ再び間合いを開ける。


「ご主人様にけりを入れるなんて、いけない子だね!アイスバレット!!」


 今度は、美湖が遠距離攻撃で間合いの意味をなくすが、ユーナはその氷の弾丸をすべて剣戟で切り落とす。しかし、美湖もその魔法を目くらましに、再びユーナに斬りかかる。


「ふふ、ご主人様は案外素直ですね。ダークミスト!」


 ユーナは、美湖の剣戟を短剣でいなし、闇魔法の『ダークミスト』を彼女に対して発動させる。『ダークミスト』は、黒い霧を発生させ、大将の資格を一定時間奪う魔法だ。


「うわ!何も見えない。これはずるいよ、ユーナちゃん!」


 美湖は、いきなり視界を奪われたことであわてているようだが、ユーナはそのチャンスに美湖に接近する。


「でもね、少しご主人様をなめすぎかな?」


 ユーナの剣が美湖目がけて振り降ろされる寸前、美湖の剣がそれを遮るように振られる。まだ、ダークミストは解けていないのにだ。


「っ、まだまだ!!」


 ユーナは、再び距離をとると、別方向から再び接近試験を振り降ろす。しかし、すべて見えているかのように、美湖の剣がそれらを防いでしまう。それどころか、


「あはは、そろそろこっちから行くよ?」


 美湖はいつもの軽い調子で言うと、視界がまだ戻っていないのにもかかわらず、ユーナの位置をしっかりと把握しているかのように、彼女との間合いを詰め、狙いを外すことなく剣を振るう。


「っ、どういうことですか、ご主人様!どうして私の位置がわかるのですか!!」

 

 普通ならあり得ない、視界を奪われ、速度に特化したユーナの戦闘スタイルも相まって、本来であればユーナの独壇場となるはずだったのに、それらをことごとく覆して久美子の行動に、ユーナが叫ぶ。


「ん?簡単だよ。それだけの殺気や気配を垂れ流しにして、僕に気づかれないと思ったの?」


 何を当たり前のことを?というように、美湖はユーナを追い詰めていく。ユーナはすでに正常な判断力がなくなり、次第に被弾するようになり、小さな切り傷が増えていく。そして、バランスを崩し、倒れたところで、首筋に美湖の剣がせまり、


「はい、勝負あり。僕の勝ちだね、ユーナちゃん。」


 と、いつもの笑顔で、美湖が宣言した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さて、それじゃ、スーリンちゃん。ユーナちゃんを治してあげて。」


 剣を収め、勝負が終わったところで、美湖がスーリンに声をかける。すると、勝負に見入っていたスーリンは我に返り、


「はいぃ、ユーナさん失礼しますぅ。」


 と、ユーナの体に回復魔法をかけていく。


「『彼の者の傷をいやせ『ヒール』』。」


 彼女がそう唱えると、ユーナの体を緑色の光が覆い、彼女の傷を治していく。


「おお、これはすごいね。ちなみに、どれくらいのけがなら治せるの?」


 その光景を見ていた美湖が感嘆の声を上げ、スーリンに問いかける。


「そうですねぇ。とりあえず、体から切り離されていなければぁ、ある程度は治せますがぁ、深すぎたりぃ致命傷クラスのけがは厳しいかと思いますぅ。」


 と、彼女は答えてくれた。その間に、ユーナの傷も癒えていた。


「なるほどね。よし、二人の力も申し分ないし、明日からは塔に挑むからね。」


 と、美湖は3人を連れて街に帰還するのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ところでご主人様。先ほどの模擬戦ですが、どうして視界を奪われているのに、私の攻撃を防ぎ、私に攻撃を当てることができたのですか?」


 町に帰る途中、ユーナが美湖に問いかける。ほかの2人も気になるようで美湖のほうを見つめる。


「ああ、あれね。僕の特技というか、なんというか。僕、そういうのに敏感みたいでさ。人の殺気というか、害意というか。そういうのに敏感なんだよ。それは別に悪意だけじゃなくて、さっきのような模擬戦の攻撃の意思にも反応しちゃうんだようね。おかげで、元の世界じゃ、ある程度の実力差なら、試合でも負けることはなかったなぁ。」


 と、思い出を懐かしむように説明する美湖に対して、3人は、


「え?それってほとんど無敵じゃないですか?ご主人様のステータスは同レベル帯なら結構高いほうですし、塔に挑むのなら、ある程度レベルに応じた階層に行くわけですし、ご主人様が負ける姿が想像できませんが...。」


 と、ユーナが呆れた表情で言う。美湖も苦笑いを浮かべるが、


「ま、どんな世界でも絶対はないわけだし、いくら気配や殺気を感じ取れても、実力が伴ってなければ防げないわけで。だから、油断しないで行こう。さ、もうすぐ街だよ。今日の晩御飯は、二人の歓迎会も込めて、豪華に行くよ!」


 と、戒めるように言い、3人を連れて街に向かうのだった。




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