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世界の狭間

「っは!ここはどこ?」


 美湖が目を覚ますと、辺り一面が真っ白の世界だった。何一つない、ただただ白しかない世界。そんな中に、美湖はただ一人でたたずんでいる状態だった。


「あれ、僕確か、矢岬さんにおなかを刺されて...。あれ、傷がない。」


 美湖は、刺されたわき腹を確認するが、傷がふさがっている。制服にも穴は開いていなかった。


「ほんとここ、どこなんだろう?」


美湖が、真っ白な世界を眺め続けること30分が経過した。しかし、白い世界は何も変わることなく美湖を包み続ける。


「まさか、ここが死後の世界?天国にいるのかな、僕。」


「いいえ違いますよ。」


 美湖のつぶやきに、どこからか機械音のような声が聞こえてきた。


「うひゃあっ!?誰?誰ですか?」


 美湖は、いきなり聞こえてきた声に驚き、周囲を警戒した。すると、目の前に、こぶし大くらいの光の球が、ふわふわと浮いていた。どうやら、機械音声はこの光の球から聞こえているようだ。


「ようこそ、死者の魂よ。ここは『世界の狭間』。世界と世界の隙間だと思ってください。あなたは、友人により刺殺され、魂となってここにやってきました。あなたには、二つの選択肢があります。

 一つ目は、このまま、輪廻の輪に戻り、貴女が前世で得たものをリセットし、新しい魂として元の世界に生まれ変わること。

 二つ目は、私の管理神が管理されている世界『ストライド』に転移するというものです。これは、死ぬ前のあなたの体を、向こうの世界で生きていけるように、最適化してから送り出します。

 どうでしょうか?」


 光の球からの提案に、美湖は考える。一つ目の選択肢は、まぁ、わかる。死後の世界についても、様々な考えが出されている昨今、同じような説があった。

 しかし、二つ目の選択肢がわからない。いや、アニメや、ゲームの世界ならわからないでもないが、行先の情報がなければ選択のしようがない。


「あの~、その『ストライド』という世界について、もっと詳しく教えてもらえませんか?」


美湖がお願いすると、機械音声は答えてくれた。


「かしこまりました。『ストライド』は、私の管理神が管理されている、いわば異世界というものですね。その世界では、あなたのいた世界のように、科学が発展しておりません。文明レベルも、中世くらいの物でしょう。ただし、魔法という概念が存在しており、そちらの文化が発展しております。

 種族に関しても、元の世界に比べて、多種多様に文明を築いております。しかし、その外見の差異から、種族間のいざこざも絶えませんね。」


 電子音声は、簡単な情報を教えてくれた。それによると、

・世界は、剣と魔法のファンタジーな世界。

・存在する種族は、

   森にすみ、精霊と心を通わすことのできる『エルフ』

   鉱山に住み、鉄と鍛冶の種族『ドワーフ』

   野原や林、川辺、海辺などに住む『フェアリー』

   獣や動物の特徴を持つ人型の種族『獣人種』

   海にすみ、海洋生物と心を通わす『人魚』

   霊峰や、洞窟に住み、世界の絶対強者『龍種』

   数が少なく、個体での活動を好む『魔族』

   逆に、一番数が多い種族『ヒューマン』

・このうち、『フェアリー』『獣人種』『龍種』『魔族』はさらに細分化されて、種族が存在しているが、総称として呼ばれている。

・世界には、魔力が満ちており、魔力が豊富な土地は、豊かな土地となる。

・魔力がたまりすぎると、魔物と呼ばれる生物が誕生する。

・魔物は、それ以外のすべての生物に対して、敵対行動をとる。

・魔物には、動物ような見た目から、人間のような姿まで、多種多様な存在がいる。

・魔物は、心臓がなく、代わりに魔石という核がある。


「と、『ストライド』に住んでいる生物についてはこのくらいでしょうか。」


 機械音声は、ここで一度呼吸を置いた。


「なんか、ゲームみたいですね。僕はどの種族になるんですか?」


「基本的には、『ヒューマン』となりますが、希望があれば別の種族になることも可能ですよ。」


 電子音声の返事を聞いて、美湖は内心、おおっと思った。美湖も高校生。そういった創作物もいくつか嗜んでいたので、そういった世界へのあこがれはあった。

 

「続けて説明させていただきます。

 文明レベルが中世くらいなので、あなたのいた現代に比べ、命の価値は低くなっております。盗賊などもいますし、人身売買なども行われております。また、ほとんどの国が身分制度を取り入れており、下から順に、奴隷、平民、貴族、王族となっております。貴族になかには、さらに細かい分類もありますが、それは、現地で学んでください。

 貴族、王族には、それぞれ、領地、国を管理するという仕事がございます。平民に関しては、農業、商業、加工業など、様々な職業を営んでおります。それらの仕事を、取りまとめて斡旋しているのが、『クラン』と呼ばれる組織です。商店や、行商人は『商人クラン』、町や村などを守る『騎士クラン』、様々な物資を作成する『生産者クラン』、そして、魔物との戦闘から、雑用事まで様々な仕事を請け負う何でも屋『探索者クラン』。この四つのクランが仕事を取りまとめ、斡旋しているのです。もし、あなたが何か仕事を見つけるなら、『探索者』になることをお勧めします。」


 電子音性は、身分や働き方を教えてくる。美湖は学生だったが、アルバイトをしていたので、働くということは少しはわかっているつもりだったが、命を懸けるほど危険があるという世界だ。少し躊躇してしまう。


「次の説明に行きますね。あなたが転移した際、『ストライド』にて生きていくために、ある程度の特典が与えられます。その力により、戦うこと、ひいては『ストライド』で生きていくことができるでしょう。そして、ここからが、この世界において最も重要なことになります。

 この世界『ストライド』には、塔と呼ばれる、魔物を生み出し続けるダンジョンがございます。塔は、神々が作ったとされている、世界の魔力を循環させるためのものです。魔力を塔が一時的に蓄積し、魔物を生み出し、それを人間たちが討伐することで、魔力を循環させているそうです。もともと、探索者も、『塔を探索する者』から名前が付けられたようですね。

 塔には、古代塔と呼ばれる7つの塔と、小塔と呼ばれる88の塔があります。どちらも機能に大差はありませんが、小塔は古代等の力で作られ、世界の魔力の均衡を保っています。

 と、『ストライド』について、簡単に説明しましたが、どうでしょうか。記憶をリセットして生まれ変わりますか?それとも、転移しますか?」


 電子音声は、ここで美湖の返事を待つように言葉を切った。


(どうせ、もう死んでるんだし、どうせなら面白そうなほうに行ってみようかな。)


「決めました。『ストライド』に転移して、新しい人生を歩みます。」


 美湖は光の球に向かって、そう宣言した。すると、


「承りました。ではこれより、あなたの体の再編成、および、精神の最適化を開始します。」


 電子音声がそう告げると、美湖の頭上と足元に魔方陣が浮かびあがり、頭上から足元へ、足元から頭上へを繰り返し、二つの魔方陣が上下に動く。それを幾度と繰り返したところで、魔法陣の上下運動が終わった。


「これにて、あなたの体の再編成、精神の最適化、因果の最適化、完了いたしました。これで、あなたは『ストライド』にて、生活することのできる状態となりました。あとは、管理神より、詳しい説明がございます。少々お待ちください。」


 そう言うと、光の球は消えてしまった。


「ちょっ、このまま置いてきぼりですか!?まだ詳しい説明もないのに、担当者でてこ~い!!」


 美湖はいきなりおいていかれたので、少し慌てて叫んでしまっていたが、すぐに、先ほどの光の玉よりもまぶしい光が出てきた。


「...騒がないでください。こちらにも、準備というものがあるんですから。」


 そう言って、光の中から現れたのは、一人の女性だった。しかし、ただの女性とは言えない。絶世の美女という言葉さえ、彼女を表すにはふさわしくないほど、美しい女性がそこにいた。


「初めまして、従 美湖さん。私は、世界『ストライド』を管理する女神―デュナミス―です。以後、お見知りおきを。」


 現れた女性、女神―デュナミス―は、美湖に対してあいさつをするが、当の美湖は、いきなり美しすぎる女性が現れたせいで、思考がフリーズしてしまったようだ。しかし、デュナミスはそれに気づかず、


「あの...大丈夫ですか?」


 と、美湖の顔を覗き込む形で、あと5cmくらいまで顔を近づけた。それがいけなかった。


「んっ!!?」


 いきなり、美湖の顔が、デュナミスの顔に近づき、美湖の唇が、デュナミスの唇をふさいだ。その、突拍子のない行動に、デュナミスも反応できず固まってしまい、美湖にされるがままになっていた。


「ぷはぁ...。もう死んでもいい。」


美湖は、恍惚の笑みを浮かべていた。デュナミスはしばらく放心状態だったが、我に返ると顔を真っ赤にして、


「なななな何てことをするんですか!!?頭大丈夫ですか!?」


「もちろんです。お願いします。どうか僕と、清いお付き合いを!!」


美湖は、デュナミスに向かって、あろうことか交際を申し込んでいた。


「んな!?だめにきまっているでしょう!私は、女神なんですよ!そんな私が、人間と、ここ交際なんて、できませんよ!!」


 デュナミスは、顔を真っ赤にして激怒するが、美湖はそれを照れ隠しと受け取ったようで、


「大丈夫です。ぼくは、絶対あなたを幸せにして見せます。どうか!!」


 美湖は、さらに調子に乗っていくが、しかし、美湖の態度をふざけていると思ったデュナミスは、大きくため息をつくと、


「はぁ~、ふざけるのもたいがいにしなさい!!!」


 と、右手に身の丈ほどある杖を出現させると、それを両手で大きく振りかぶり、



「え!?ちょっ、まっ!?」


 美湖の頭目がけて、全力で振り降ろした。その全力を受けた美湖は、その場で気を失ってしまったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「いや~、まさか本物の神様が現れるなんて思ってもないですよ。しかも、こんな美少女!さっきも僕の行動も、なにもおかしくないと思うんです。」


「いやいや!!明らかにおかしいでしょう!?いったい、どこの誰が、見ず知らずの女性に対して、出合い頭にキスするんですか!」


「僕です!!」


「そうだった~!」


 そのあと、美湖は5分も経たないうちに目覚め、デュナミスと漫才みたいなことをしていた。


「こほん、もうその話は終わりにして。

 改めまして、私は女神・デュナミス。あなたの元居た世界と、『ストライド』とほかにもいくつかの世界を管理する管理神です。あなたは、友人の女性に刺殺されて、この世界の狭間にやって来ました。そして、『ストライド』に転移すると選択されたので、詳しい説明をさせていただくために私が来ました。」


 デュナミスは、改めて挨拶をした。


「どうも、僕は従 美湖です。一応、さっきの光の球から説明は受けましたが、これから僕はどうなるんですか?」


「そうですね。まずは、あなたの最適化された体に魂を入れて、あちらの世界での当たり前のことと、最低限必要な物資をお渡しします。

 まず最初に、あちらの世界、『ストライド』では、森羅万象すべてに、『ステータス』が与えられています。これは、その者の能力だと思ってください。実際に見てみたほうがわかりやすいと思うので、自分の能力を見たいと念じながら、『ステータス』と唱えてください。」


 デュナミスに言われるままに、美湖は『ステータス』と唱える。すると、彼女の胸の前くらいに、半透明の板が現れた。そこには、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 従 美湖

年齢 17

職業 高校生

称号 女神と接吻せし者・転生者


レベル 5

HP  500/500

ST  400/400

MP  450/450

AT  250

DF  200

MA  250

MD  200

SP  220

IN  150

DX  100

MI  200

LU  140


スキル

 言語理解  (MAX)

 鑑定    (MAX)

 片手剣術  (MAX)

 氷魔法   (MAX)

 封札    (―――)

 生活魔法  (―――)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 と、表示されていた。





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