二人の奴隷
「まず、この子は、獣人種で、白狼種のアリサ・フェーリルです。」
カルアの紹介の後、アリサ本人が自己紹介をする。
「初めまして、お嬢様。私はアリサ・フェーリルと申します。白狼種という獣人です。得意なことは、弓術スキルによる遠距離攻撃と、ウッドクラフトスキルによる木材加工です。どうぞよろしくお願いします。」
そう言って彼女は軽くお辞儀をした。銀世界を連想させるほどのストレートの髪が、さらさらと揺れる。目鼻立ちは整っており、少々きつめの瞳が、勝気な性格を思わせる。引き締まった、しなやかな体つきは、活発そうに見え、それでいて女性らしさが共存している。
そして何より、頭と腰にある、狼の耳と尻尾が美湖の目を奪って離さなかった。
「彼女は、白狼種の中でも、とびぬけて美しい毛並みを持ち生まれてきました。しかし白狼種にとって、美しすぎる毛並みは、忌み子として忌避されるので、口減らしも兼ねて売られてきましたが、彼女の種族では忌み嫌われても、彼女ほど整った容姿と、優れたスキルを持っていれば買い手は引く手あまたでしょう。その前に美湖さんが訪れてくれたのは僥倖でした。」
アリサの自己紹介の後、カルアが引き継ぎ補足説明をする。美湖は、カルア、アリサに許可を取り、アリサのステータスを鑑定スキルで確認する。
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アリサ・フェーリル
年齢 14
職業 奴隷(主・カルア・スカーレット)
称号 白狼種の忌み子
Lv 13
HP 200/200
ST 110/110
MP 100/100
AT 130
DF 100
MA 75
MD 68
SP 147
IN 130
DX 80
MI 90
LU 70
スキル
長弓術 (16/30)
短剣術 (8/30)
ウッドクラフト(20/50)
料理 (4/20)
狼化 (3/80)
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「へぇ、なかなか優秀なステータスですね。アリサさん、各スキルの細かい説明をお願いしても?」
美湖は、アリサに自身の持つスキルの説明を求めた。ユーナのステータス同様、見ただけでは細かいところまでわからないからである。
「かしこまりました。では、
まず、長弓術、短剣術、料理に関しては、それぞれの分野で補正がかかります。超級、短剣では、威力工場や、武技のしようができ、料理は、スキルがあるほうがスキルがないよりもおいしく作れ、また各種バフの効果も向上します。
ウッドクラフトは、木や木材をもとに木工品を作り出すスキルです。レベルが上がるほど、一度に加工できる容量も増え、ロスが減り、また細かい加工ができるようになります。
最後に狼化ですが、狼人種で稀に生まれつき持っているスキルになります。使用すると狼に体を変化させ、ステータスも格段に向上します。ですが、レベルが低いと、理性を維持できなくなりただただ暴れる獣となります。狼化は10秒で1の魔力を使用し、魔力が尽きると5秒で1のスタミナを消費します。そして、スタミナが尽きるとスキルが解け、姿も元に戻りますが、魔力、スタミナが底をついていますので、意識があればまだいいほうで、ほとんどが気絶します。私はまだ完全に狼化スキルを扱えません。
スキルに関してはこれくらいでしょうか。」
アリサはスキルの説明をして、一息ついた。美湖はアリサのステータスのスキル欄を確認しながら、彼女を見ていた。
「あの、お嬢様?何やらすごく視線を感じるのですが...。主に、耳と尻尾に。」
アリサが恐る恐る美湖に尋ねる。そう、美湖はアリサの耳と尻尾に視線を集中させていたのだった。
「いえ、別に見つめていたわけじゃないですよ?ただ、そのふわふわな耳と尻尾をモフモフしたらどれだけ気持ちいいんだろうなって考えていただけで。だからユーナちゃん、僕の手をつねるのはやめてくれないかな?」
美湖が言い訳を始めたくらいから、ユーナが彼女の手の甲をずっとつねっていたのだが、美湖の一言で渋々、つねるのをやめた。
「まったく、いいですかご主人様?まだ仲間になっていない方に、そのような視線を送るのは無礼になりますよ。注意してください。」
と、少しすねたように美湖に言う。
「はっはっは。どうやら、ユーナは素晴らしい方に買われたようですな。私も売った甲斐がありました。さて、美湖さん、ユーナから、アリサに何か確認したいことはありますか?」
カルアは、期限をよくしながら、アリサについての質問を促した。
「うーん、じゃあ一つだけ。僕の元には、20人を超えるゴブリンの犠牲になった女性たちがいるんだけど、その人たちが回復するまで養わないといけないんだ。そういう人たちに忌避感はあるかな?後、僕は塔に登るのを目的にしているから、それについてくる気があればなお嬉しいね。」
美湖の言葉に、ユーナは隣でうなずいた。彼女もそれを聞きたかったのだろう。その言葉にカルアとアリサは驚きの表情をした。
「いやはや、少し前に話題になったゴブリンスタンピートの解決者は美湖さんたちだったのですか。まだまだ駆け出しの時期だというのに、なんとも、素晴らしいお方と縁を作れたものだ。」
と、カルアは感心した様子で、その言葉を聞いたアリサは、姿勢を正すと、
「ゴブリンの被害者は、人族の中でも忌避されることがあると聞きます。ほとんどがまともな生活に戻れず、身売りをしたりするほうがいいほうで、ほとんどの方が自害を選ぶと。その方々を忌避せず受け入れ、さらには養うまでされるとは。それに、スタンピートは災害ともいわれるほどの規模のはず。それを二人だけで掃討したとは、力が絶対の白狼主としても望む主の姿。力、精神、どちらも素晴らしいお方となれば、なにとぞ、貴女様に仕えたく存じます。」
と、美湖の足元に跪くと、彼女に向かって深く頭を垂れた。それを見た美湖は、
「うん。僕もアリサさんをパーティーに加えたい。是非ともよろしく。」
と、彼女の手を取った。
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「さて、一人目の紹介が終わって間もないですが、二人目の紹介に入らせていただきましょうか。
こちらは、スーリンといい、エルフと人間のハーフになります。」
カルアが場を仕切りなおすように声をかけ、二人目の女性に自己紹介を促した。その女性は、おっとりした雰囲気で、薄緑色のストレートの髪、たれ目気味の目元に、やさしそうな微笑みを浮かべる表情は包み込まれそうな優しさを覚える。美湖と同じくらいの背丈で、スタイルは整っており、何より目を引くのは、彼女が歩くたびに大きく揺れる胸元だった。
「初めましてぇ。私はスーリン・フォレストアと申しますぅ。紹介されたとおり、人間とエルフのハーフ、俗にいうハーフエルフというものになりますぅ。得意なことはぁ、精霊魔法と、回復魔法ですねぇ。」
と、気が抜けるような自己紹介に、美湖は呆れた表情を浮かべた。
「ははは、美湖さんの反応は正解でしょうな。なんせ、見た目はいいのに、このしゃべり方のせいで今まで買い手がつかなかったのですから。何でも気が抜けてしまうのだとか。では、彼女のステータスも確認なさいますか?」
カルアの言葉にうなずき、美湖はスーリンのステータスを鑑定した。
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スーリン・フォレストア
年齢 18
職業 奴隷(主・カルア・スカーレット)
称号 ハーフエルフ
LV 14
HP 140/140
ST 100/100
MP 170/170
AT 80
DF 50
MA 140
MD 130
SP 110
IN 70
DX 100
MI 105
LU 90
スキル
回復魔法 (25/30)
精霊魔法 (35/50)
エレメンタル (10/50)
料理 (10/20)
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「へぇ、魔法使い系のステータスですね。料理はアリサさんにもあったのでわかりますが、ほかのスキルの説明をいただけますか?」
「わかりましたぁ。
回復魔法はぁ、その名の通り、けがや病気を治します。ほかにも状態異常回復、呪いの浄化など、結構幅が広いんですぅ。ですが、熟練度が低いとできることは広く浅くってぇっ感じになりますぅ。熟練度が上がると、広く深くなっていくので様々な場面に対応できるようになりますぅ。
精霊魔法はぁ、各属性の精霊たちにぃ、魔力を与えてぇ代わりに魔法を行使してもらう魔法ですぅ。契約している精霊の位階によってぇ、行使できる魔法の威力が変わりぃ、できることも増えたり減ったりしますぅ。
エレメンタルスキルはぁ、熟練度マイナス10の、火、水、風、土、光、闇の初級魔法スキルの魔法が使えますぅ。熟練度が10を超えるまではぁ、熟練度1のスキルのみ使えますぅ。またぁ、消費魔力も2倍消費しますぅ。燃費は悪いですがぁ、ほとんどの属性魔法が使えますのでぇ、その場その場で対応できると思いますぅ。
料理はぁ、アリサさんと被るので省きますねぇ。
スキルの詳細はぁ、このくらいですかねぇ。」
スーリンの説明の後、カルアが補足で説明をする。
「彼女は、先ほども言いましたが人間とエルフのハーフになります。しゃべり方もそうですが、人間にとっても、エルフにとっても、ハーフエルフというのは受け入れにくい者でして。人間より長寿で魔法に適性がある。しかし、エルフからしたら、短命で魔法も中途半端というどっちつかずの存在となっていおります。そのせいもあり、どちらの種族からも受け入れにくい状態といえるでしょう。ただ、美湖さんはそのようなことを気にする方ではありますまい。いかがでしょうか?」
カルアの話を聞いて、美湖は少し考えるそぶりを見せる。
(別に断る理由なんてないんだよね。可愛いし、回復魔法を使えるからヒーラーとしても役に立ってくれるだろうし、精霊魔法とエレメンタルスキルで、器用貧乏にはなるだろうけど、その場その場に応じた対応をお願いできるし。なにより、)
美湖はそこまで考えて、スーリンの体の一部に視線を移す。
(こんなに大きいのに、わざわざ見逃す手はないでしょうよ。)
「あのぉ、さすがに凝視されると恥ずかしいのですがぁ...?」
美湖の視線に耐えかねたのか、スーリンが恥ずかしそうに声を出す。それを聞いたユーナが、
「ご主人様?先ほどアリサさんに不躾な視線を送ったのに、懲りずにまたですか?」
と、ご立腹のようだった。カルアも大きくため息をついてあきれるように苦笑いを浮かべている。
「だってだって、あんなの見たら、仕方ないじゃん。僕だって不可抗力だよ...」
と、美湖は力なく言い訳をして、ユーナに再び手の甲をつねられていた。
「あははぁ、この方たちは面白いですぅ。先ほどのアリサさんへの質問もぉ、私も素晴らしいことだと思いますしぃ、ぜひご主人さまにお仕えしたいですぅ。」
ユーナの反応を見たスーリンは、小さく笑うと美湖に買われたい意思を示した。
「さて、では二人とも美湖さんに買われたいということですね。では、美湖さん、どうされますかな?」
「ふふ、当然購入しますよ。それで、代金はいくらですか?」
カルアの質問に、美湖は不敵に答える。二人とも答えを確信していたのだろう、薄く笑っている。
「さすがは美湖さんだ。代金はユーナと同じ、金貨1枚ずつ、合わせて金貨2枚ですな。」
美湖は、封じ札から金貨を2枚取り出すと、カルアに手渡す。カルアも確認すると、
「では、譲渡の儀式を行いましょう。美湖さん、二人と手をつないでください。」
こうして、美湖のパーティーに、新たにアリサとスーリンが加入した。




