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依頼報告

 美湖たちは、ゴザの村を出て、ラティアの町に戻ってきた。門番にクラン証を提示してはいると、真っ先にクラン支部に向かう。


 支部のドアを開け、探索者ブースに行くとカウンターで、別の探索者の受付をしていたアリアが、美湖たちに気づき、担当を別の者に代わってもらって、美湖たちの元にやってきた。


「おかえりなさい、美湖さん、ユーナさん。こちらで報告を聞きますね。」


アリアは美湖のてを取ると、空いているカウンターに連れていく。


「では、報告をお願いします。」


「はい。ではまず、ゴザの村からの依頼はゴブリン10体の討伐でしたが、実際討伐したのは、ゴブリンが250体、上位種が49体、ゴブリンジェネラル、キングが1っ体ずつでした。おそらく、スタンビートが形成されていたと推測します。なお、ゴブリンの魔石は回収、僕のスキルにて変換済みです。なので提出はできませんが、死体はすべて回収しています。」


 美湖の報告に、アリアは眉間を抑えて、


「え、えーと、少し待ってくださいね。まず、ゴザの村の依頼を受けた。それはいいです。そこで、ゴブリン種を合計300体討伐した?それらの死体をすべて持ち帰ってきている?」


「あ、それと、囚われていた女性と、女性の遺体、蓄えられていた財宝も回収しています。」


「...美湖さん、支部長室に来てください。」


 アリアは、大きなため息をつくと、美湖を連れて支部長室にむかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「で、いきなり私の部屋に押しかけてきて、また厄介ごとを持ち込んでくれたのか?」


 美湖を引き連れてやってきたアリアの報告を聞いて、アヤメも眉間を抑えていた。


「おい美湖。とりあえず、そのゴブリンの死体が本当にあるという証拠を見せろ。」


 とアヤメは美湖に対して言う。美湖は、カードケースから、ゴブリンの死体が封じられた封じ札と、そのほか、今回の依頼中に手に入れたものが封じられた札を、アヤメの机の上に並べた。


「なるほど、お前のスキルはほんとに便利だな。それに、ほかに、ゴブリンに攫われていた女性たち、ゴブリンたちがため込んだ財宝か。」


 アヤメは、美湖が提出した証拠を見て、腕を組みうなる。


「それから、本来、ゴザの村で弔われるはずだったゴブリンに殺された女性たちもつれてきています。何とか、弔ってあげたいのですが、何とかしてください。」


「お前、本当に容赦ないな!?こっちにも考える時間位よこせ。まずは、お前が連れてきたという生存者についてだか、本来なら、村から教会に入った後、力あるものは聖職者に、それ以外は娼婦にとなるのだったな。確かに、それは少々酷なことだ。お前が怒るのもわかるが、かといってお前、20人もの人間、しかも心身ともに疲弊している者を養えるのか?」


 アヤメの言葉に、今度は美湖が黙る番だった。


「お前の気持ちはわかる。それに、今回の討伐報酬と、素材の提出である程度は養えるだろう。だが、そのさきは?もちろん、探索者や、騎士として活動していた者たちもいるだろうが、それ以外の村娘なんかは、まともに町で稼ぐことなんてできないぞ?」


「それは、わかってます。」


 美湖は、小さいながら返事を返す。アヤメの言うことはもっともだった。戦闘経験があるものですら、戦闘で負け、長期間嬲られ続けたという記憶は、今後の活動をやめようと思ってもおかしくない。それどころか、意識が戻れば、絶望とともに命を絶ってもおかしくない。


「はぁ、まぁ仕方ない。私から、お前の泊まっている安らぎの風に打診してやる。お前が連れてきた女性を宿泊させ、回復したら、仕事の斡旋も手伝おう。

 スタンピートを壊滅させた功は、考慮してやらんと今後、ほかの奴らに示しがつかん。」


 アヤメはそう言うと、アリアに美湖の討伐した魔物の換算と、回収した財宝の処理、亡くなった女性たちの弔いの準備、連れてきた女性たちの今後の対応を決めるため、幹部を招集するように指示を出した。アリアは、指示を受けるとすぐに行動に移した。


「さて、美湖。今回の件は、本来お前には任せられない案件だった。スタンピートってのは本来、駆け出しなんかには受けさせない依頼なんだ。それを、こちらも確認できなかったとはいえ、駆け出しに受けさせてしまった。しかも、その駆け出しは、そのスタンピートを壊滅させて帰ってきた。これを放置しては置けない。」


 アヤメは、一度言葉を斬り、再び口を開く。


「よって、従 美湖、ユーナ・ヴラドニル、両名のクランランクを、HランクからEランクに昇格する。ちなみにこれは決定事項だ。拒否は認めん。」


 アヤメの言葉に、美湖とユーナはしばし固まり、


「え?いいんですか?僕たち、ここに登録してから碌に日にち経ってないですよ?」


「私なんか、今日ですよ?」


 と、美湖とユーナが恐る恐るいう。すると、アヤメは面白そうに笑うと、


「はは、スタンピートを壊滅させたというのに、そんなに下手に出んでもいい。むしろ、これでも低いくらいだ。それに、お前はこれから、大勢の人間を養うんだ。少しでも、実力に見合った依頼を受け、金を稼ぐがいい。」


 そう言うと、話は終わりだというように手を振る。美湖とユーナは、釈然としないまま、支部長室を後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんか、すごいことになりましたね...」


「だね...」


 美湖とユーナは現在、クラン支部のロビーでアリアを待っていた。その間、先ほどアヤメに言われたことを考えていた。


「お待たせしました。こちらに来てください。」


 カウンターの方から、アリアの呼ぶ声がして、二人は彼女のもとに向かう。


「お二人とも、大変お待たせしました。それでは、まず依頼の報酬からですね。」


 そう言うと、アリアはカウンターに大きな布袋をいくつか置いた。


「まずは、ゴブリン討伐の依頼報酬からさせていただきますね。

依頼としては、10匹で300ルクス、さらに、290匹分が50ルクスに換算されるので、合計14800ルクスが依頼報酬となります。

 それから、フレンジカウの肉納品の依頼分は、まとめてこちらで対応させていただきます。先ほど提出させていただきました肉は、鮮度もよく、すでに依頼主に渡し済みです。よって、成功報酬1000ルクスが支払われます。

 次に、スタンピートを壊滅させた特別報酬として、50000ルクスと、ジェネラル、キングの討伐の特別報酬が発生しています。ジェネラルが、5000ルクス、キングが20000ルクスとなり、75000ルクスが特別報酬です。

 それから、美湖さんたちが持ち帰ってくれた財宝についてですが、金額が金額ですので、個人を特定出来そうな以外は、美湖さんに返却いたします。また、個人が特定できそうなものに関しては、所有者を名乗る方がいらしたら、美湖さんと交渉を行い、返却金を決めてください。期限は1週間で、期限が切れたら全て美湖さんの物となります。

ここまでで、何か質問はありますか?」


「返却交渉って何ですか?」


「そうですね。たとえば、持ち主じゃないのに、持ち主だと言い張ってくる方や、逆に被害者の遺族が遺品を求めてきたりと、いろいろあるんですよ。ですが、規則上、回収物はすべて美湖さんの物ですので、美湖さんの判断で返却するかを決めていただく必要があるんです。ちなみに、今回救出された方と、お亡くなりになられた方の名前を掲示板に張り出すので、おそらく、どなたかは来られると思いますよ。」


 アリアの説明を聞いて、美湖は、


「うへぇ~、めんどくさそう...」


 と、あからさまにいやそうな顔をした。


「ちなみに、金銭に関しては、一割はクランが回収しましたので、その差額として、360万ルクスをお受け取りください。」


 と、依頼報酬、特別報酬、見つけた財宝の金額、合わせて、3690800ルクスがカウンターの上に置かれた。


「...ごめんなさい。もう、頭が追い付かない...」


「ご主人様、大丈夫ですか?」


 頭を抱えてしまう美湖を、ユーナが支える。


「すごいですね、美湖さん。一気に大金持ちですよ。まぁ、これから美湖さんは、大勢の方を養わなければならないので、多くて困ることはないでしょう。」


 まるで他人事というように、アリアは微笑みを浮かべていた。


「とりあえず、お疲れさまでした。返却希望者がいれば、私どもの方で知らせるので、その際はよろしくお願いしますね。」


 美湖は、アリアから渡された報酬を封じ札に封じると、ユーナとともにクラン支部を後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はぁ、マジでめんどくさい。」


「仕方ありませんよ。それに、被害者の遺族の方の気持ちも考えれば、必要なことですし。」


「そうだよねぇ。それより、ユーナちゃん。お腹すいたし、どこかでご飯食べようか。」


 連れ帰ってきた女性たちは、返却交渉期間が過ぎるまでは、クランが預かるとのことだったので、現在美湖の封じ札には入っていない。ただ、亡くなった女性たちは、時間をおいてしまうと腐敗してしまうため、封じ札に封じて預かっている。


「今日は、少し高級なところに行こうか。この変だと何かあるかな?」


 美湖は、考えながらも、待ちゆく人たちに聞いて回った。すると、遠い地域に生息する魔物の肉を提供するレストランがあると聞き、そこに行くことにした。

その店は、噂通り少し高級だったが、食べたことの無い食事に、二人は終始舌づつみを打っていた。



翌日、


「おはようございます、美湖さん。早速、返却交渉待ちの方がみえてます。よろしくお願いします。」


朝遅くに、美湖とユーナがクランに行くと、待ってましたと、アリアがやって来て、クラン内にある応接室に通された。そこには、すでに交渉相手が待っていた。


「ああ。あなたがシタガイ ミコ様ですか?

私は、この街で花屋を経営している、サヤカといいます。」


待っていた交渉相手、サヤカが立ち上がり会釈してきたので、美湖も返す。


「では、サヤカさん。返却交渉ということですが、何を返却希望なのですか?」


美湖は、椅子に座ると交渉を開始した。


 


 

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