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ユーナとの依頼

 二人は、町を出てラティアヌス草原に来ていた。快晴の天気で、世界が違えば最高のピクニック日和な気候だった。


「ははは、魔物さえいなければ、この草原でピクニックも楽しそうだね。」


「?ご主人様、ぴくにっくとは、なんですか?」


どうやら、こちらの世界には、ピクニックの文化はないらしく、ユーナが首をかしげていた。


「そっか、この世界はピクニックってないんだね。ピクニックっていうのは、こういういい天気の日に、お弁当もって外、こんな草原に出かけることだよ。」


「いいですね!今度、安全な場所探していきたいですね。」


 ユーナも、笑顔で答えてくれた。二人は他愛もない話をしながら、草原を歩いていく。


「お、ユーナちゃん、楽しいおしゃべりタイムは終わりだよ。どうやら、魔物が来たみたいだよ。」


 ちょうど、会話が途切れたところで、美湖の声色が真剣なものになった。美湖の視線の先には、浅黒い肌をした子供位の背丈の魔物、ゴブリンがいた。数は二匹。手には、錆びついた鉈のようなものを持っている。


「ちょうどいいね。一人、一体ずつ相手しようか。ユーナちゃんの実力を見せてね。」


 美湖は、海洋鉱の剣を抜き、正眼に構える。対してユーナは、赤銅の短剣と、魔鉄の短剣を逆手に構える。そして、二人は同時に走り出し、それぞれがゴブリンに斬りかかっていく。

 美湖は、剣を振り上げ、ゴブリンの頭を狙う。彼女の接近に気づいたゴブリンは、手にしている鉈で剣を防ごうとした。


「だから、単純すぎるよ。」


 美湖は一言、ゴブリンにつぶやくと、剣を引き戻すように手首を回し、横から胴に斬撃を入れる。


「グギャ!?」


 ゴブリンは、一撃をもろに食らう。しかし、手首の回転だけでの斬撃のため、勢いが乗っていなかったのか、深めの切り傷を与える程度になってしまった。ゴブリンは、痛みによって一瞬、体が止まってしまう。


「その一瞬が命取りなのに。さよなら。」


 美湖は、ゴブリンが止まった一瞬に、体勢を整え、相手の脳天に斬撃を繰り出す。ゴブリンにそれを防ぐ手段はなく、一撃を受けて息絶えた。


 一方、ユーナは、ゴブリンに斬りかかるが、鉈で防がれてしまう。ゴブリンが鉈を押すようにして、ユーナを弾き飛ばす。そして、ユーナの体勢が崩れたところへ、ゴブリンが斬りかかる。しかし、ユーナは、魔鉄の短剣出鉈をいなしてゴブリンの体勢を崩し、ゴブリンの背後に回り込む。


「終わりです。」


 一言、その直後、赤銅の短剣により、ゴブリンの首は胴体と離れ、その切り口は肉の焦げた嫌なにおいを発していた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「いやー、ユーナちゃん、お見事。」


 無事に、2匹のゴブリンを討伐した二人は、美湖の封じ札にゴブリンの死体を封じて、一息ついていた。


「いえ、ご主人様も、素晴らしい剣さばきでした。」


 二人は剣を収めると、次の得物を探しに草原を歩き始めた。


「そういえば、ゴザの村っていうのは、どのあたりなんだろう?」


「え、ご主人様...。場所知らないのに、依頼受けたんですか?ゴザの村は、ここから5kmほど東に行ったところにある村です。近くに湖があって、農作も盛んです。しかし、魔物に襲われることも多いらしく、よく、この手の依頼が持ち込まれるらしいです。」


「そっかぁ。5kmか。それくらいなら3時間くらいかな。その途中に、フレンジカウの討伐をしようね。」


 二人は、茣蓙の村に向かって草原を進んでいく。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 村に向かう途中で、複数の魔物を討伐した二人は、ゴザの村に到着した。ゴザの村は、周囲は開けているが、ラティアの町の反対側の方向に、大きな森が広がっている。


「いや~、遠かったね。ゴザの村。でも、ここまで来るのに、ゴブリン20体、コケ10体、フレンジカウ22体、ジャイアントビー10体。疲れたわ!!」


「しかし、ご主人様のスキルはすさまじいですね。自動解体に、魔石による札の造成。行商人が泣きますよ...」


「いいじゃん。おかげで、荷物はほとんど増えないんだから。でも、ゴブリン討伐の数終わっちゃったね。この村の周りにもまだいるのかな?」


「さぁ?ですが、多い分には問題ないみたいですし。とりあえず、村長さんに話を聞きましょう。」


 美湖とユーナは、ゴザの村に入るために、村の入り口を守っている守衛に近づいていく。


「待て、お前たち、どこから来た?」


 美湖たちに気づいた守衛の男が、槍を構えて威嚇する。


「大丈夫ですよ。僕たちは依頼を受けてやってきた、ラティアの町の探索者です。詳細を確認するために、村長とお話がしたいのですが。」


 美湖は、自分のクラン証を見せる。ユーナもそれに倣い、クラン証を見せる。それを見た守衛の男は、


「なるほど、失礼しました。村長は、一番大きな建物にいるはずです。どうぞお入りください。」


 と、威嚇を解いて、門を開けた。


「ありがとうございます。では。」


 美湖は守衛に挨拶をすると、ユーナを連れて村の中に入っていった。

 村の中は、人数こそ少ないものの、それに見合った賑やかさを見せていた。


「結構活気があるね。ゴブリンが沸いてるから、もっと怖がってるものだと思ってたよ。」


「一応、この村の近くでは、ゴブリンとは遭遇しませんでしたし、まだ、生活圏を脅かすほどではないのではないでしょうか。」


 二人は、村の様子を見ながら、教えてもらった建物に向かっていく。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「すみません、クランの依頼で来た探索者です。依頼についてお話を伺いに来ました。」


 建物に着くと、美湖は扉の前で来訪を知らせる。すると、少しの間をおいてから扉が開いた。


「おお、お待ちしておりました、探索者殿。ささ、中にどうぞ。」


 迎えてくれたのは、年を取っているが、精悍な顔つきの男性だった。二人は、男性に招かれるまま、建物の中に入っていく。

 応接間に通され、椅子に座るように促された。


「さて、まずは自己紹介から。私はこの村の村長を務めております、キリクといいます。この旅は、依頼を受けていただき、ありがとうございます。」


「僕は、探索者クラン、Hランクの探索者、美湖と言います。こっちは僕の奴隷でユーナ。よろしくお願いします。

 では、依頼について質問します。ゴブリンは、どのあたりで確認されたのですか?」


 美湖が、依頼について切り出す。


「ゴブリンどもが確認されたのは、村の周囲です。特に特定の個所はありませんが、村からある程度離れている場所ですね。上位種が確認された報告は受けておりません。」


「なるほど、では、相当大きい群れの可能性もありますね。報酬は大丈夫なのですか?規模が大きければ、その分討伐数も増える。11匹以降は50ルクスずつ上乗せするという内容でしたが。」


「それも心配ありません。今回の依頼は、国を通しておりますので。

 この村は開拓村なんですよ。まだ、開拓は終わっておりません。この村が、しっかりとした村として登録されるまでは、魔物の被害や、自然災害での負担は国が持つことになっております。ですので、報酬は国から出ると思ってください。」


「なるほど、なら安心ですね。では、この依頼を受けた探索者はほかにいますか?」


「ええ、しばらく前に、4人の探索者パーティが受けてくださり、20体ほど討伐されました。確か、5日ほど前だったと思います。」


「5日?ねぇ、ユーナちゃん、ゴブリンて、繁殖に必要な時間ってどれくらいなの?」


「ゴブリンは、妊娠して20日で出産。10日で成体となります。奴らは、異なる種族相手でも妊娠させる、することができますので、そこらにいる獣や、攫った人族などを苗床、種馬として扱います。使い終わったら食料として殺します。」


 ユーナは、暗い表情で語る。美湖は、ユーナの頭をなでて、


「ごめんね。説明してくれてありがとう。では、村長さん。僕たちはゴブリンを討伐してきます。証拠として何か必要なものはありますか?」


「ゴブリンの体にあるものなら何でも構いませんが、眼なら1対で1体分。魔石なら一つで、異なる部位の提出は無効とします。確認後は、もちろんご返却いたします。よろしいですか?」


「それで構いません。では、失礼します。」


 美湖は、キリクに一礼すると、ユーナを連れて建物を出ていく。そして、村を出て、ゴブリンを探しに行くのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「20体目!」


 美湖の声が、森の中に響く。村を出て、美湖はまず森に向かった。草原のような見晴らしのいい場所ではなく、森に潜まれるほうが村に危険があると思ったからだ。予想は当たっていたらしく、森に入ってすぐにゴブリンの群れに襲われた。


「これでラスト!!」


 美湖の斬撃が、ゴブリンの横腹に炸裂する。ゴブリンは、血を吹き出しながら息絶えた。


「ふう。やっと倒した。いきなり24匹の群れか。多すぎじゃない?」


 剣を鞘に納めながら、美湖は、ユーナに問いかける。


「そうですね。本来、いくら大きくても10匹以下のはずなんですが。それに、5日前に20匹も討伐されているのに、まだこんなにいるなんて。」


 ユーナも、剣を収めながら、美湖に返す。


「こりゃ、相当大きな群れだね。こんなに多いんじゃ、この村が襲われたらひとたまりもないんじゃ...」


 美湖は、言葉を途中で切り、周囲を警戒する。


「!?どうしました、ご主人様?」


 ユーナも、美湖の様子を見て、再び剣を構える。そして、美湖のにらみつけるほうを見ると、またゴブリンが群れで現れた。


「嘘、まだ、こんなにいるなんて。」


 ユーナは、現れた数を見て驚愕している。今回現れた数は、先ほどと同じ20匹ほどだが、通算で、60匹以上いることになる。


「ご主人様。これは群れではありません!!」


「え!?」


「これは、ゴブリンのスタンビートです!!」


 ユーナは、剣を構え群れに斬りかかる。美湖も、驚きながらも、それに続く。


「スタンビートって何!!?」


 ゴブリンの相手をしながら、ユーナに問いかける。


「スタンビートは、単一、もしくは複数の魔物の、大規模な群れの氾濫です!!その数は、最低でも100は超えるといわれ、人族の住む場所をつぶして回る、一種の災害です。」


「は!?メチャクチャやばいじゃん!!」


 ユーナの答えに、美湖は驚愕する。


「はい、とても危険なんです。今回の場合、ほかの魔物の姿が見えないので、ゴブリンの単一スタンビートだと思いますが、スタンビートには、その魔物の上位種が指揮官という立場で存在するんです。」


 ユーナは、ゴブリンの首を切り裂きながら答える。


「もう!!僕たちは運がないね。いきなりそんな依頼を受けちゃうなんて。」


 美湖も、半ば呆れながら、ゴブリンを切り捨てていく。再び遭遇した20匹を討伐し、美湖は、死体を封じ札に封じていく。これで、ゴブリンの討伐数は、60を超えた。


「やばいね。60も倒したのに、全部普通のゴブリンだよ。上位種ってことは、それに連なる種類もいるかもってことでしょ?それがまだ出てきてない。たまたまかもしれないけど、この群れの規模は数で言えば、ラティアの町に匹敵するんじゃ?」


「あり得るかもしれませんね。とにかく、ゴブリンを狩りましょう。数が減り、大将がいなくなれば、群れは瓦解していきます。」


 ユーナの言葉い、美湖はため息で返す。


「はぁ、とんでもない依頼を受けちゃったね。」


 


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