防具一新
武器を出た二人は、防具を買うために、防具屋にやってきた。
「いらっしゃいませ。あら、見ない顔ですね。」
店に入ると、奥から妙齢の女性が出てきた。
「すみません。ここで防具を買いたいんですけど。」
「あら、それはありがとう。で、買うのはどちらかしら?」
妙齢の女性は、美湖とユーナを上から下まで品定めするかの様に見つめる。
「防具を買うのはこの子の分です。ユーナちゃん、自分に合う物を選んでね。金額の上限はぁ、金貨2枚までね。」
そう言って、女主人に2枚の金貨を渡す。
「あら、奴隷にこれだけの装備を与えるなんて、なかなかいいご主人様に出会えたわね、貴女。」
美湖が手渡した金貨を見て、女主人はユーナに微笑みかける。
「ええ、ご主人様の奴隷になれて、私は幸せ者です。」
ユーナはそう女主人に返す。
「ふふ、その顔を見てると、いやいやでもなさそうね。じゃあ、あなたの装備を整えましょうか。あなたの戦闘スタイルはどんなのなの?」
「そうですね。私は、双剣術と、闇属性魔法を使った遊撃タイプだと思います。」
「なるほどね。なら、こんなのはどうかしら。」
ユーナの戦い方を聞いた女主人は、ユーナの装備を選んでいく。
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「できたわよ。どうぞ見てちょうだい。」
30分くらいして、防具を装備したユーナが、女主人に連れられて戻ってきた。その姿を見て
「おお~!ユーナちゃん、かっこいいよ!!」
と、一人盛り上がった。
そのユーナの装備は、頭には、鳥の羽をあしらったカチューシャ、胸の部分だけを覆ったチューブトップ型の胸当て、緑色の宝石が付いた幅広のバングル、滑らかな革を使って作られたスパッツ、膝から下を覆うブーツだった。
「はは、ありがとうございます、ご主人様。」
と、ユーナも頬を赤くしながらも笑顔を浮かべている。
「さて、じゃあそろそろ装備の説明をさせてもらうよ。」
女主人が装備の説明を始めるが、美湖はその話を聞きながら、装備に鑑定スキルを発動する。
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フェザーカチューシャ
風鉱石と鉄の合金を加工した羽の飾りがあしらわれたカチューシャ
装備者のSPを上昇させる。
DF +10
MD +10
SP +20
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ブロンズトップ
青銅片を編み込んだ胸部を覆うチューブトップ。
DF +20
MD +15
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ペリドットバングル
ペリドットが組み込まれた幅広のバングル。
装備者のSPを上昇させる。
DF +20
SP +30
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リザードスパッツ
アッシュリザードの川を加工して作られたスパッツ。
DF +10
MD +10
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ウルフレザーブーツ
フォレストウルフの革で作られたブーツ。
装備者のSPを上昇させる。
DF +20
MD +20
SP +20
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美湖が確認した装備の詳細はこのようになっていた。
(ふーん。速度上昇系の装備が多いな。ユーナちゃんの双剣術を活かすためかな。)
「...と、まぁ、この子の双剣術を活かすための装備だね。速度を上げて、当てて、避けてを繰り返す、ヒット&アウェイの戦法が有効だと思うよ。」
美湖が装備の詳細を確認しているうちに、女主人の装備の説明が終わったようだった。
「あんたから預かった金貨2枚で選ばせてもらった。今後ともご贔屓にしてもらえるとありがたいね。」
「わかりました。ちなみに、素材を持ち込んだら、装備を作ってくれたりします?」
美湖は、よくゲームである要素を聞いてみる。
「悪いね。私は販売専門なんだ。だけど、どんなのが欲しいか教えてくれたら、その要望に合うものを揃えさせてもらうよ。」
女主人は、肩をすくめてそう言う。
「なるほど。わかりました。今後もよろしくお願いしますね。」
美湖は、ユーナがもともと来ていた服を封じ札に封じると、店を後にした。
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「よし、次はユーナちゃんの探索者登録をしようか。」
「わかりました。では、クランに向かいましょう。」
美湖とユーナは、クラン支部に向かうことにした。
「そういえば、この町に来た時に買った串焼きが残ってたんだった。」
美湖は、一枚の封じ札から、串焼きを2本取り出し、1本をユーナに渡す。
「はい、ユーナちゃん。さすが封札スキル。買った時からの時間経過もない。暖かいまんまだよ。」
「ありがとうございます、ご主人様。ご主人様のスキルは凄いですね。物をそのときのまま保存できるのは、過去に人にもいないですよ。」
ユーナは、若干引きながらも、串焼きを受けとる。それを食べながら、二人はクラン支部に向かった。
クラン支部では、大勢の探索者や、騎士たちが仕事を探していたり、生産者たちが商品を卸していたりしていた。
「おお、今日も賑やかだね。さて、アリアさんはどこかなっと。」
「あ、美湖さん。今日はどうしましたか?」
受付で、ちょうど探索者の相手を切り上げたアリアが、美湖を見つけて声をかけてきてくれた。
「あ、アリアさん。今日は、この子の探索者登録と、何かいい依頼があるか見に来ました。」
そう言って、美湖はユーナを前に押し出した。
「初めまして、ご主人様の奴隷となりましたユーナといいます。よろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いしますね、ユーナさん。では、こちらへ。探索者登録を行います。」
アリアは、ユーナをカウンターに促す。美湖はそのあとをついていく。
「では、ユーナさんの登録を行います。クランについての規則などは、美湖さんに一度説明していますので、省かせていただきますね。こちらの用紙に、必要事項を記入してください。」
アリアは、カウンターの下から、美湖の時にも使った用紙を取り出した。
「そういえば、ユーナちゃんは文字書ける?」
美湖は、ふと思ったことを口にした。
「...実は、書けません。ご主人様、申し訳ないのですが、代筆をお願いしてもよろしいですか?」
ユーナは、頬を赤めながら申し訳なさそうに言ってきた。
「もう、いちいちそんなことで気を使わなくていいんだよ。アリアさん、用紙を貸してください。」
美湖は、ユーナに代わり用紙に情報を書き込んでいく。
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氏名 ユーナ・ヴラドニル
年齢 15
出身 不明
スキル 双剣術
魔法 闇魔法
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「はい、書けましたよ。」
美湖は、記入した用紙をアリアに差し出す。
「ありがとうございます。どれどれ...、おお、双剣術ですか。しかも闇魔法持ち。ユーナさんて、もしかして、魔族の方の血を引いていますか?」
アリアの言葉に、ユーナの方がびくっと震える。
「やっぱりそうですか。その銀髪に紅い瞳、それから、闇魔法。おそらく、吸血鬼の血を引いていますね。」
「...どうして気づいたんですか?」
美湖は声を潜めて尋ねる。
「どうしてと言われましても、今、私が言った特徴が魔族に似てるからですよ。ああ、安心してください。クランでは、その個人、この場合は美湖さんの奴隷なので、連帯責任となりますが、個人が犯罪を犯さない限りは、拒絶することはありませんよ。」
アリアの言葉を聞いて、美湖とユーナは安堵のため息をついた。一応、羽根と尻尾は隠しているが、言わない方がいいだろう。
「ふふ、ユーナさん、美湖さんにとても気に入られているのね。それに彼女に対して高い忠誠心もある。素晴らしい主従だと思うわ。」
アリアの言葉に二人は赤面してしまう。アリアはそんな二人を微笑ましいと思いながら、ユーナのクラン証を作りに裏の方へ行ってしまう。
「よし、これで二人で冒険できるね!!」
「そうですね。ご主人様のお役に立つために頑張ります!」
二人は、アリアが戻ってくるまでの間、カウンターから離れて空いているベンチで待っていた。
「...お待たせしました。こちらがユーナさんのクラン証になります。それから、現在出ている依頼では、ゴブリンの討伐と、フレンジカウの肉の納品がありますね。ユーナさんの実力を見るには、ちょうどいい以来かと思いますよ。」
アリアが、ユーナのクラン証と、2枚の依頼票を持ってきてくれた。美湖は、その依頼票を受け取り確認した。
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依頼 ゴブリン討伐
依頼主 ゴザ村 村長
内容
最近、村の周辺にゴブリンの群れが現れ始めました。
このままでは、村に被害が出るので討伐してください。
目標
ゴブリン10匹以上の討伐。
報酬
10匹の討伐で300ルクス
11匹から、1匹ごとに50ルクス追加
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依頼 フレンジカウの肉の納品
依頼主 ガトフ肉屋の主人
内容
いつも買い付けてる相手がけがをしてしまって、品薄になってしまった。
怪我が治るまでの分でいいので採ってきてほしい。
目標
フレンジカウの肉 30kgの納品
報酬
1000ルクス
鮮度が悪い場合減額
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「この、フレンジカウの肉の納品、なかなか難しいんじゃないですか?」
美湖は、依頼票を見てアリアに聞いてみた。
「ふつうは、そうですね。ですけど、美湖さんのスキルがあれば簡単に達成できそうですし。」
アリアは、美湖のスキルを知っているので、達成できそうな依頼を持ってきてくれたようだ。
「ん~、ユーナちゃん、どうかな?」
「私は問題ありません。故郷にいたころも、ゴブリンくらいなら討伐したことがありますから。」
ユーナも、やる気に満ちた顔で答える。
「よし、わかりました。アリアさん、その二つを受けます。」
美湖は、依頼票をアリアに渡す。
「はい、では、そのように受理しておきます。気を付けてくださいね。」
アリアは、依頼票に受理したことを示すハンコを押して、手に持っていたファイルにはさんでいく。
「じゃ、ユーナちゃん。頑張って依頼クリアしようね。」
美湖は、ユーナの手を引いて、クラン支部を出ていった。