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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag7―牢獄の住人―(21)

 ……相殺したとは言え、押されている。《宣告のフルール=アッティア》の風に真っ向から挑むのは効率が悪いか。


「〝光鎧〟」


 今度は光の鎧を纏って俺はユーリ=カリエールへと近付き、《宣告のフルール=アッティア》に風を纏わせる隙を与えない様に何度も斬りかかる。


「しつこい……! 何故君がそこまでして戦う? そんなにあの没落貴族が大事か? 〝ビロウ・ウィンダ〟」


 しかし疲労が溜まってきているせいか隙を与えてしまい、吹き飛ばされ、地面に体を打ち付けてしまう。


 足取りも覚束ず、残り魔力も少ない……このまま属性強化を使えるのは、維持する時間にも依るが、属性強化の切り換え時のロスを含めて多くて五回程。無論、混合魔法なんて使うと下手をすれば一回で魔力が無くなってしまう。


 となると、いつも通りになりつつあるのは気のせいだと思いたいが、多少の博打は仕方ないだろう。まあ、俺の実力が足りないので、それも仕方がないと言ってしまえばそうなのかもしれないのだが。


「〝地鎧〟」


 俺は地属性の鎧を纏って傷を塞ぎ、《暦巡》を構え、更に闇の鎧に切り換える。


「また闇属性か……君は本当に嫌味が好きな様だね……〝風よヴァン〟」


「勘違いしているみたいだけどさ、俺は俺の為に戦っているんだよ。まあ、確かにエルの事もあってお前のこと気に入らないけどさ。……なあ、知っているか? 何故闇の属性強化が攻撃の威力を弱めることが出来るのか……」


「君は変な事を訊いてくるね」


「闇属性には重力を操れるって特性があるんだよ。とはいっても少しだけだから、魔法の密度が低いとあまり意味はないんだけどな」


「それ位は常識だよ。馬鹿にしないでくれないかな? 〝風よヴァン〟」


 俺は地面を蹴り、ユーリ=カリエールの元へと真っ向から向かって行く。そうして《暦巡》を相手目掛けて振り抜いた。


 ユーリ=カリエールも風を纏わせた自身の武器を振り抜き、風と闇がぶつかり合う。


 俺はなお一層魔力を込めることで闇の属性強化を増幅し、操れる重力の密度を濃くし、ユーリ=カリエールへ更に重圧を加える。


「どうだ、わかったか?」


「ああ、確かに君は嫌がらせで闇属性を使った訳ではなかったのは理解した。けどね、僕の前ではそれも無力だ」


「冷や汗垂らしてるくせによく言えるな……」


「少し油断しただけだよ。〝吹き飛ばせラファル〟」


 ユーリ=カリエールがそう言うと、これまで以上に強い風が起こり、押し返されてしまう。


 ――やはりまだ手はあったか。


 風の塊は砂を巻き上ながら俺へと迫り……呑み込んだ。


 ユーリ=カリエールはそれを見て涼しげな笑みを浮かべ、自身の武器の剣先を下げる。


 ――けどな。



「だからお前のは誇り何かじゃなくて傲りだって言ったんだよ」



「なっ!?」


 俺は残りの魔力を魔力付加へと回し、砂埃の中から飛び出してユーリ=カリエールに肉薄し、反撃する暇を与えずに力ずくで叩き伏せて首元へ《暦巡》を突き付けた。


「な、何故だ?!」


「誰が《暦巡》の能力があれだけと言った。真っ直ぐ現実を見ろ。この結果はお前自身が生み出したものだろうが」


「ふ、ふざけるな……何故あれを防げた……!」


 ユーリ=カリエールは自身を押さえ付けている俺の左腕を退けようと掴み、藻掻く。


「何がふざけるなだ! お前にとって自分よりも実力がないやつと戦うのは意味のないことか? 本当に意味が無いなら、お前は負けてないだろうが! こんなふざけた結末なんてもっての他だ」


 捕まれていた左腕の圧迫が霧散する。


 圧迫していた主からの抵抗がなくなると同時に審判の先生の声と歓声が会場内に鳴り響く。試合が終わった事を確認した俺はユーリ=カリエールから離れた。


「……嬉しくなさそうだね。そりゃそうか……当たり前だね……」


 呟く様な声に答える必要は、自己完結しているのだからないだろう。


「……ねぇ、一つ良いかい?」


「……疲れたから手短にしてくれ」


「最後、一体何をしたんだい?」


「あれは属性強化を混ぜたんだよ」


 混ぜたのは闇と水。そうすることで物理的な衝撃を大幅に減らす事が出来た。《暦巡》のもう一つの能力。


「納得したよ……けど、次は負けない」


 ユーリ=カリエールはそう言い、笑みを浮かべる。


「俺も負けるつもりはないよ」


 負けを前提で戦うつもりなんて更々ない……けど、この笑顔を見る限り次は勝てる気があまりしないのが本音だ。


「それと、エルシーのことはちゃんと彼女を見て判断することにするよ」


「驚きの変わり様だな」


「知ってるかい? 負けて学ぶことだってあるんだよ」


 ユーリ=カリエールは、してやったりとでも言いたげな、満足そうな表情を浮かべた。



「ありがとう。多分僕はずっと、こうなりたかったんだ」



   ‡  ‡  ‡




 降り積もった雪の上に足跡がある……恐らく、これは二人分だろう。


 魔闘祭の期間中、自由に行動して良い変わりにルイスに一度見回りをしてから、と言われ、私は手短に済まそうとしていたタイミングでこの仕打ち。もう少し私に優しくしてくれても良いのではないだろうか神様。いや、そもそもそんなもの存在していなのだから私は困っているのか。


 吐く息は白く、一面の銀世界を見ると余計に寒そうに感じる。まあ、実際は防寒効果のある魔法陣が画かれたローブを着ているお陰で寒くはないのだけれど。


 あの人の試合に間に合うだろうか等と、この場とはあまり関係無い事を考えながら足跡を追跡する。


 それにしてもこの山、中々に広い。これが全てエバイン家の私有地だと言うのだから驚きだ。……そのせいで時々迷い込んでくる人が居る為、こうして私が駆り出されているのだが。


 やはりルイスは頭がおかしいと思う。普通、こんなところの見回りを中等部の生徒一人に押し付けないだろう。とはいっても、私と彼女の仲なので仕方がないのかもしれない。


 そうこうしている内に足跡は一つの洞窟へと続いていた。確かこの洞窟は予選の時、あの人達が間抜けにも相手に会話が筒抜けの状態で作戦会議をしていた洞窟だった気がする。


 ……そんなことは今はどうでも良いか。今は足跡についてだ。やはりあの足跡ははり遭難者のもので、うろうろしている内に洞窟を見つけたので入ったのだろうか。


 私が洞窟へと入ろうと足を動かそうとした時、丁度そのタイミングでフードを被った、見るからに怪しい人が二人、洞窟の中から呑気な声色で話をしながら出てきた。


「キョウカさーん、これ一体何に使うんですかねぇー」


「コクジョウ君に説明しても多分わからないよ?」


「ちょ……その言い方は酷くないですか……」


 声や会話の内容からして少年と少女だろうか。


 それにしてもこの人達……。


「ちっさい……」


 少女の方は私と同じ位で少年の方は私達よりも更に低い。


「んだとゴラァ!!」


 あっ、少年の方がキレた。


「チビ……」


「てめぇも小せぇじゃねぇか!」


「貴方は私よりも低い」


「ぐぬぬぬぬぅ……」


 ああ、この子馬鹿だ。

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