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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag6―心と約束と小さな樹氷―(17)

 屋形へと戻るとナイトさんが何か小さなアルバムの様な物をニタニタとしながら見ており、俺に気付くと服の内ポケットに急いで隠していたが俺は何も見ていない。無論、そのアルバムの題名が『ルーナ成長日記~隠し撮りの章~』だったとしても。


 そして俺が知らないふりをしていると、ナイトさんは安堵の為か、一度ため息を吐くと、打って変わって真剣な様子で口を開いた。


「さて、司君」


「はい」


 何やら雰囲気が違うので俺もそれに合わせ、返事をする。



「やっぱりルーナは可愛いよね。嗚呼、なんて愛らしいんだ……」



「…………」


 真面目な話かと思って損した。俺が知らないふりした意味もないし……。


 その上俺が黙っているにも関わらずナイトさんは独りでに「ルーナが産まれた時は……」とか「ルーナが魔法を始めた時は……」等と喋りだす始末。もちろんずっと聞き流していると、チャーリーから声がかかった。


 どうやら着いたらしい。このままナイトさんの話を聞いているのは正直ツライので助かった。


 その後はチャーリーと別れ、俺はナイトさんの後ろに着いて王宮の中へと入って行った。




 そして何やら大きな扉の前へ。扉には『王の自室、勝手に入っちゃらめー!』と書かれている……。


 先程王宮に入る時、ナイトさんは勝手に入っていたが、こんな事をする王だったら仕方のない事なのかもしれない……。


 しかしだからと言って自室まで来て良いのだろうか?


 何だか遣る瀬無い頭痛に襲われる俺を知ってか知らずか、ナイトさんは勝手は知ったるといった様子で扉を開き、中へと入っていった。


 俺も今更こんな所で取り残される訳にはいかないので着いていく。


 中に入ると、金色の短髪に青い目をした中年の男性が、人の良さそうな笑みを浮かべ、椅子に座っていた。


「やあ、ナイト。久しぶりだね。後ろの子は初めまして」


 ……扉に『王の自室、勝手に入っちゃらめー!』と書いてた人とは思えない。誰かの悪戯だったのかなんて考えていると、ナイトさんは少し呆れた様子で中年の男性を見た。


「……はぁ、ゲイブ。この子は男だぞ?」


 するとゲイブと呼ばれた王様らしき人はあからさまに落胆した表情を見せると、近くにあった小さな椅子に足を乗せ、テーブルに片肘をつけて鼻をほじり始めた。


 何なのこの人。


「司君、信じられないかもしれないけどコレがこの国の王、ゲイブ=アーク=ハルバティリスなんだよ……」


「どうもぉー王でーす……はぁ……男とか……」


 何だろう……凄く馬鹿にされてる気がする。特に肘をついたまま手を上げて、指だけ動かしているのは喧嘩を売られているようにしか思えない。男で悪いか。


「まあまあ、司君。抑えて、抑えて。これでも一応王だしその内慣れるよ」


 その内慣れるもののなのか些か疑問だが、確かにムカついて手を出すのは得策ではないので今は堪える事にする。


 ちなみに王様が「一応って酷い……でも感じちゃう……」等とチャーリーの様な事を言っていたのは聞かなかった事にした。


「ところでナイトさんは何で俺をここまで連れてきたんですか?」


 流石にこんな人と言えど王様だ。わざわざ手間をかけて部外者を会わせる様な事はしない筈だ。


 するとナイトさんは一度ハッとした表情をすると、今度は優しそうな笑顔になった。



「ああ、そうだった。それはね、司君の住んでいた世界に帰る方法が見つかったかもしれないんだよ」




   ‡  ‡  ‡




「時間潰しをしろって言われてもなぁ……」


 俺は先程、元の世界に帰れる可能性のある事が書かれた史料を纏めるとナイトさんに言われ、置き去りにされてしまった。


 俺の為にしてくれている事なので勿論俺が口出し出来る筈もなく、王様の部屋には俺と王様が残され、途方に暮れていると王様に『今暇だよね? 暇以外に何でもないよね? そっかぁ暇かぁ。暇なら王宮見て回ったら? 無駄に広いから暇潰しになるんじゃね?』と言われ、部屋を追い出されてしまい、王宮を散歩する羽目になってしまっている。


 そうして学院に似た色合いの廊下を歩き回っていると、何やら陽当たりの良い、庭の様な場所へと来てしまった。


 確かにここは無駄に広いから暇潰しには最適かもしれないが、現在地がわからない……。


 俗に言う迷子だ。


 流石にこのままここで一夜を明かすとなると不味い……というか恥ずかしい。というわけで誰か居ないか庭を見渡してみると案外簡単に二つの人影を見つけた。


 少し近づくと、その二つの人影は向かい合い、木で出来た剣を構えている事が確認出来た。


 更に近づくと二人の容姿がはっきりとわかった。


 一人は金髪に緑の瞳をした、まだあどけなさの残る綺麗な顔をした青年で、動きやすそうなラフな格好ではあるが一挙一動に気品があり、服装の質素さを感じさせない。


 そしてもう一人は金髪に緑の目をした青年よりも少し歳上に見える容姿で、綺麗な装飾が施された銀色の鎧を来ている…………白髪ロン毛で青い目をしたイケメン。


 ……そう言えばチャーリーがこんな感じの人見たら気をつけろって言ってたな。


 そんな事を他人事の様に考えて二人を見ていると、ふと、白髪ロン毛で青い目をしたイケメンと目があった。


 すると白髪ロン毛の青い目をしたイケメンは目を大きく見張らせ、手に持っていた木剣を地面に落とすと、脇に携えていた剣を鞘から抜き、一瞬にして俺の目の前まで移動し、剣を降り下ろしてきた。


「へっ? くそっ!」


 予想以上のスピードに避けきれないと判断した俺は、咄嗟に《暦巡》を取り出し、なんとか剣を受け止める。

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