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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag6―心と約束と小さな樹氷―(14)

「なあルーナ、実はお茶菓子買って無いんだけど……」


「そ、そうですか……」


 流石ルーナ。誰かさん達とは違って物分かりが良い。しかし、俯き気味に微笑んだその瞳は少し潤み、涙が零れそうになっていた。


「……って言ったらどうする?」


 焦りを隠して少し戯けながら言う。もし俺が泣かしたとなるとみんなからの批判の視線と一部の人の攻撃が俺に殺到するだろう。流石にそれだけは避けたい。


 言ってしまった事を後悔しても今更遅いし……俺は何か無いものかと周りを見渡すと、短い針が七を、長い針が零をそれぞれ指しそうになっている手の平サイズで立方体の時計が目に入った。


「そ、そうだルーナ! お茶菓子も良いけど俺が作るからご飯食べていかないか?」


「ツカサさんの手作りですか?」


「ああ! どうだ?」


「作ってくれるんでしたらお茶菓子は食べない方が良いですよね……」


 ルーナは少し名残惜しそうに言う。本当はルーナを泣かせない様にとっさに言った事だが料理は出来無いわけでは無いので大丈夫だろう。


 しかしよくよく考えると、ここでこんな事を言ってしまえば……。



「ツカサ君料理出来たんだー!」


「流石ツカサちゃんね……何時でもお嫁に行けるってわけね……」


「な、なんでアンタがそんな事出来るのよ……負けた……」


「ごはん……」


「悪ぃなツカサ、ご馳走になるぜ」



 やっぱりこうなるのか……しょうがない。作る量は俺を含めて七人分か……これだけの人数分作るのはかなり久し振りだ。


 確か最後に作ったのは來依菜と一緒につむじの家に行ってお世話になっているおじさんとおばさんにご馳走した時だっただろうか?


 確かあの時作ったのは五人前……いや、つむじが無駄に食うからもっとか……。とは言えあの時は來依菜と手分けして作ったので楽だったが一人で作る今回は少々大変かもしれない。


 一先ず何を作るか考える為に冷蔵庫の中身を確認しに行く。


 中に入っていたのは人参、ピーマン、キャベツ等……いずれもそれらしきものだが。


「ツカサー俺ピーマン嫌いー」


「ごめんねボクもピーマンはちょっと……」


「アナタ達好き嫌いは駄目よ?」


「コーチさん、レディさん、ピーマンに謝って下さい」


「苦いの……や」


「アンタ達子供みたいね……」


「アラッ? ラナちゃんも小さい頃から苦いの苦手じゃなかったかしら? 確かピーマン食べられなくてよく泣いてたわよね」


「き、気のせいよ……」


 よし……ピーマンたっぷりの野菜炒めにしよう。あとコーチにはセロリを生で食わしたい。


 そう考えた時、俺の頬を何かが擦り、後ろの壁が焦げた。


「アンタ……随分楽しそうな顔してるわね」


「き、今日は寒いから鍋にでもしようかなー……」


 間違ってピーマンとか出してしまったら体とこの部屋がもたなそうだ……。


 俺は苦い野菜は出さない様に細心の注意を払いながら鍋の準備に取り掛かる。まあ、楽だし良しとしよう。


 そして鍋の内容について俺が相談をすると何鍋にするか戦争が起きそうになったものの、結果的には何とか全員が満足出来る結果となった。


 しかし食事が終了すると、コーチが休日の親父の如く寛ぎ始めるといういつかのデジャヴを見たが、悪乗りを見せるその他大勢を含め、何とか帰らす事に成功した。




   ‡  ‡  ‡




「おや? 司君、その子が來依菜ちゃんかい?」


 眩しいほど白く綺麗な廊下で、ほっそりとした体格にメガネと白衣が特徴的という、いかにも研究員と呼べる風貌をした若い男性は幼い黒髪の男の子を見つけるとにこやかに話しかけた。


「そうだよ。ほら、來依菜も挨拶しなよ?」


 司と呼ばれた幼い黒髪の男の子はそう言うと司の後ろに隠れる様にぴったりと着いて来ていた空色の髪をした幼い少女――來依菜が少し怯えた様子で顔を出す。


「は、初めまして……ひい……らぎ……く……いな……です……」


 來依菜がそう言うと今度は司と來依菜の少し後ろにふてぶてしい態度で着いて来ていた黄色の髪をした幼い少女が笑いながら司達の前へと移動してきた。


「あはは! 來依菜はいつまで経ってもおどおどしてるな!」


「來依菜はつむじとは違っておばかじゃないんだよ!」


「おばかって何だよぅ!」


 そんな少年達のやり取りを見ている研究員の男性は苦笑いを溢す。


「まあまあ、二人とも。來依菜ちゃんが困っているだろう?」


 そう言われて司とつむじが後ろを振り向くと、オロオロしながら大きな瞳いっぱいに涙を浮かべ、今にも溢れ出しそうになっている來依菜が居た。


「ううっ……」


「わ、私は別に來依菜を嫌いで言っていた訳じゃないぞ?」


「お、俺だって來依菜を無視していた訳じゃないからな?」


「ほんと……?」


「ああ!」


「ほんとだよ!」


 司とつむじは何度も強く首を縦に振る。


 すると來依菜に二人の必死さが伝わったのか來依菜は笑顔になり、瞳いっぱいに溜めていた涙は消えていた。


「ところで司君、今日はどこに行く予定なのかな?」


 そう言われた司ははっと何かを思い出した様な表情をする。

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