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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag6―心と約束と小さな樹氷―(8)

「じゃあ混合魔法の属性の割合についての説明をするわ」


 カーミリアさんは呆れた表情をしながらも説明を続ける。


「割合と言うのは簡単に言えば混合魔法に含まれる属性の比率ね」


「魔法によって比率が変わるのか?」


「そうよ。そして基盤って言うのは混合魔法の比率で一番多い属性の事ね」


 つまり混合魔法は基盤の属性を中心にして他の属性を組み合わせていくって事か? いや、ちょっと違う様な気がする。


「……なあ、基盤が無かったり二種類あったりする混合魔法は無いのか?」


「もちろんそれもあるけど基盤が一つの魔法の方がコントロールしやすいのよ」


「へー……でもさ、今更だけど俺は得意属性が無いのに大丈夫なのか?」


「アンタの努力次第ね」


「努力か……」


 無理とか無理に等しかったりする訳では無くて本人の努力次第。それなら得意属性がある人より大変だとしても希望が持てる。


「ところでさ、混合魔法ってやっぱり難しいのか?」


 俺の覚えている限りで混合魔法を使っているところを見た事がある人はカーミリアさんだけだ。


「人にもよるけど魔法の構成が複雑なのは確かね」


「それでも強力だし覚える価値は十分あるのになんで皆使わないんだ?」


 魔法の構成が多少複雑な位ならもっと使う人が多くても不思議では無い筈だ。


「魔力の消費量が多い上に本人と魔法が合わなかったりする事もあるからよ」


「本人と魔法が合わないって言うのは?」


「相性が悪いって事ね。簡単に言ったらいつまで経っても使える様にならないのよ」


「何で?」


「それについてはまだ解明されてないわ。本人の練習が悪いのか才能の問題なのか使える前に挫折するのが多いとか可能性としては沢山あるけどね」


 そんな事もあるのか……。練習をしてもその時間が無駄になる可能性もある。それを恐れて混合魔法を敬遠している人も多いのかもしれない。その上、俺は得意な属性が無いらしいので、少し不安になってくる。


 しかしそう考えると疑問が浮かび上がってきた。


「本人と魔法の相性が悪いとか判断する方法ってのは無いのか?」


「無いわね。わかるなら今頃混合魔法を使える人は大量にいるわよ」


「じゃあ、もし俺が混合魔法の練習を始めてもその魔法との相性が悪かったらどうするんだ?」


 俺がそう言うとカーミリアさんは少し妖しい笑みを浮かべた様な気がした。


「それは絶対に無いわ」


「言い切れるのか?」


「ええ、アタシが教えるんだから当たり前よ」


 何故そう言い切れるのかは不明だが、これだけ自信があるのなら教えて貰う俺としても頼もしい限りだ。


「そっか、じゃあよろしく頼むよ」


「アンタは一体誰に頼んでるの? アタシが教えてあげるんだから無理矢理にでも叩き込むわ……例えアンタが嫌って言ってもね」


 カーミリアさんはそう言うと今度ははっきりとわかる妖しい笑みを浮かべた。


 ああ……この人が女王ブラックだった事すっかり忘れてたな……。今更ながらこの人に頼んでよかったのかちょっと後悔してきた……。


「どうしたの? 何か問題でもある?」


 すると俺の心の中にある焦りや後悔を読み取ったのか、カーミリアさんはそう言いながら俺を睨みつけてきた。


「い、いえ……何もございません……」


 本当の事を言うなら問題しか無い様な気がするが反論したら攻撃されそうなので今はやむを得ない……。


「そう、じゃあ始めるわよ」


 すると俺が文句を言わない事に満足したのか、カーミリアさんは先程よりも少し機嫌が良さそうにそう言った。


 そしてカーミリアさんがもう一度口を開こうとした時、何者かが会話に割り込んできた。



「俺を忘れちゃ困るぜ」



 そう言ったのは赤目の茶髪オールバック……つまり馬鹿と変態の二足のわらじを履きこなしている自称ジェントルメンだった。


 俺はとりあえず何故か勝ち誇った顔をしているコーチに拳と疑問をぶつける。


「何でお前が居るんだ?」


「酷い……」


 そう言って地面に膝と手をつけて落ち込むコーチ。ごめん、思わず。


 しかし落ち込み始めて少しするとコーチはムクリと起き上がり、今度はカーミリアさん目の前まで行き、すがる様な目でカーミリアさんを見つめだした。


「カーミリアさんは覚えてるよな?」


「何をよ? 気持悪いわね」


 コーチには可哀想だが確かにその行動は気持悪いと思う。


「何でツカサもカーミリアさんも覚えて無いんだよ!? 俺は魔変石の件から無視されてたけどずっと居たじゃねぇか!」


「えっ?」


「そういえば……」


 俺とカーミリアさんは顔を見合わせる。話しに夢中で気付かなかったが確かに居た様な気がする。何だ構って欲しかったのか。


「で、それがどうしたの?」


 しかしそんなコーチをも簡単にぶったぎってしまうカーミリアさん。その諸行はもはや流石としか言い様がない。


「俺だって教えて貰う為にここに居るんだよ!」


「そう、わかったわ……」


 涙目で懇願するコーチに、意外な反応を見せるカーミリアさん。

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