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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag6―心と約束と小さな樹氷―(6)

「……アンタ達計画性無いの?」


 カーミリアさんは呆れた顔でそう言うと俺に何か手渡してきた。


「何これ……」


 見た感じ手の平サイズの丸い水晶だ。重さはあまり感じない。


「説明は後でするから今はとっとと立ち上がりなさい」


「えっ……休憩は?」


「無いわよ」


「えっ?」


「無いって言ってんでしょ」


「立つだけでも足が震えるんですけど……」


「つべこべ言わずとっとと立ち上がりなさいよ!」


「は、はい……」


 カーミリアさんの迫力に負けた俺は既にガタが来そうな足に鞭を打って立ち上がる。


 その一方で未だに倒れているコーチに目を遣ると素晴らしい笑顔で声には出さず『グッジョブ!』と伝えて来た。


「……カーミリアさん、この馬鹿どうします?」


「串刺しにしてでも立ち上がらせなさい」


 カーミリアさんがそう言うとコーチは顔を青くして一瞬で立ち上がった。なお、コーチの足は疲労と恐怖により小刻みに震えている。……ざまぁみろ。


 コーチが俺を恨めしそうに睨んできたが俺はそれ無視してカーミリアさんと向き直った。


「で、これは何なんだ?」


 俺はさっき渡された水晶を覗き込みながら、その先に見える上下が反転しているカーミリアさんに問い掛ける。


「アンタは自分が得意な属性とかって考えた事ある?」


 質問を質問で返された……。しかし得意な属性か……そう言えば前にショウシやコーチも言っていた気がする。


「あんまり無いな……」


 俺がそう言うとカーミリアさんは何故か一瞬安堵の様な表情を浮かべたが、すぐにいつもの不機嫌そうな表情に戻った。


「それはその属性を測るものよ」


「へー……カーミリアさん準備良いんだな……」


 正直なところ俺は感覚で得意だとか不得意だとかはわからなかったのでこれは助かる。


「そ、それくらい当然よ、感謝なさい」


「うん、ありがとう」


「べ、別にアンタの為じゃないわよ……」


 そう言うとカーミリアさんはそっぽを向いてしまった。


 デレか? デレなのか!? 訊ねてみたいけど、話し掛けない方が良さそうだ。攻撃されかねない。


 しかしそれとは別で疑問があった俺は心もとないがコーチに聞いてみる事にした。


「なあコーチ、この水晶ってどう使うんだ?」


魔変石まへんせきの事か? ただ単に魔力を流すだけだぞ?」


「コーチ……成長したな」


 まさか、本当に答えられるとは思わなかった……。


「いや、一般常識だから」


「マジで?」


 な、何だよそれ……俺が常識の無い人みたいじゃねぇか。



「アンタ何も知らないのね」



 膝を地面に着く俺。このサディスティッククイーンめ……。


「俺はもう駄目だ……」


「まあまあツカサ、誰にだって一度や二度の間違いはあるもんだ」


「お前にだけは言われたくない」


「アンタの間違いは一度や二度の話じゃ無いでしょ」



 ……やっぱりコーチはカーミリアさんから見てもそう見えるんだ。まあ、『お前のパンツは何色だぁ! ゲーム』を提案した時点で既に色々と間違っていたからな。


 しかしそんな事を考えているとショックを受けてた俺が馬鹿みたいに思えてくる。


「はぁ……とりあえず魔力込めてみるか……」


 俺はそう軽く呟き、魔変石を掴んでいる手に魔力を集めていく。すると手に集めただけの魔力は勝手に魔変石へと吸い込まれていった。


「…………あれ?」


 思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


「な、なあ、カーミリアさん」


 少し焦り気味になりながら俺はカーミリアさんを呼んだ。


「何よ?」


 カーミリアさんは相変わらず不機嫌な表情で返事をしたが俺は構わずに話しを続ける。


「魔変石の原理ってわかるか?」


「原理? 簡単に言ったら近くにある魔力を集めてそれを光に返還するって説が有力ね」


 説って事はまだ完全に解明されていないのか……?


「じゃあ属性の判断基準は?」


「光の色よ。色が変化する理由は魔変石がその人の体内魔力を変化しやすい属性を表す色へ変化させるらしいわ」


 なるほど、だから魔変石って名前なのか。



「じゃあ……光が発せられないって事はあるのか?」



 俺がそう言うと少し沈黙が発生したが返事は案外普通に返って来た。


「あるわよ」


「あれ……? あるのか?」


「ええ」


 そう言った時のカーミリアさんの表情は尚も不機嫌そうで変わらないが対照的にコーチはいつもと違った少し浮かない表情をしていた。


 少し気になった俺はコーチに問い掛けてみると、少し考えるような素振りを見せてから口を開く。


「お前……もしかして《色無し》なのか?」


「《色無し》って?」


「その名の通り得意な属性が無い人の事だ」


「多分それだと思う……珍しいのか?」


 確かにさっき魔力は吸収された感じはしたが全く光は発せられなかった。


「かなりな……ツカサ、お前は悔しく無いのか?」


「何が?」


「得意な属性が無いって事が……だ。中には得意属性を複数持ってたり全部だったりって奴も居るんだぞ?」


 コーチは悲しそうな表情で唇を噛みながらも、しっかりと俺を見据えて言った。

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