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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag5―真冬の桜―(9)

「ふふっ……レディちゃん? 何か言い残したい事はありませんか?」


「あわわわ……」


 やばい……何がやばいかって言ったらあのルーナが怒ってる。そしてただ怒ってるだけじゃなくて変なスイッチが入ってる……。


 怒られているレディの顔は青白く世界の終わりを見たような表情をして小刻みに震えてしまっている。


「つ、ツカサ……」


 俺の寝ているベッドの足を背にもたれにして三角座りをしながらそう心配そうに話し掛けてくるコーチの声は酷く震えていた。


「言うなコーチ……俺もあの時の恐怖は思い出したくない」


 “あの時の恐怖”とは、俺とコーチが初めて会った日に起きた爆風飛び交うアクシデントで、結果としては俺とコーチが友情を深めるきっかけとなった出来事だ。


「これから……何か起こるの……?」


 同じく俺の寝ているベッドに腰掛け、首を傾けながらそう冷静に聞き返してくるノスリだが彼女も雰囲気から何かを察し、不安なのか俺の服の右袖をギュッと両手で握っている。


「ノスリはわからないのか……でもな、知らない方が幸せな事もある……」


 そう言って遠くを見つめる俺にノスリは一瞬不機嫌そうに眉をひそめたが、それ以上は何も聞いてこなかった。


「で、何も言い残さないのですか? レディさん」


 そう言ってレディに笑顔でゆっくりと詰め寄っていくルーナ。


「ぼ、ボクとしては生きたいかなー……アハハ……」


 地面に尻を着けて後退るも壁に阻まれ震えているレディ。


「じゃあ……逝きましょうね?」


「ねぇルーナちゃん!? それって言葉のニュアンスが違うんじゃないかなあ!?」


「ふふっ……気のせいですよ……?」


「違う! 絶対気のせいじゃ無いよ!」


「でもそれはレディさんがいけないんですよ?」


「いや、うん! 反省してる! すっごく反省してるから!!」


「反省していても……やっぱりお仕置きは必要ですよね?」


「ぼ、ボクは本当に、しっかりと、反省、していますから! だからその手に集めてる魔力をどうにかしてくれないかな!? それにそれはお仕置きじゃなくて力による一方的な支配だから……ちょっとみんな!? 助け……だからぁぁぁぁ! に゛ゃあああああああ!?」


 その時のコーチは空っぽな瞳で虚空を見つめ、俺は空いている左手でノスリの視界をそっと遮った後、考える事を放棄した。





「ツカサ……ツカサ……?」


「……はっ!」


 目の前に居たのは銀目銀髪でツインテールのちっさい女の子……ノスリだった。


「さっきから……揺さぶっても無視された……」


「えっ!? いや、ごめん……ずっとボーッとしてて……」


「むぅ……」


 そう言ってむくれるノスリ。


 そう言えばレディはどうなったのだろう? 確かルーナに……生きてるかな?


 そう思い周りを見渡すと右には制服の乗った机の奥に、ベッドを仕切る為の白いカーテン、前には何故かベッドの上に上がり、掛け布団越しにだが俺の足の上に乗っかる様に座るノスリ、後ろは壁で左を見ると笑顔のルーナに制服は少し焦げているものの安堵の表情を浮かべるコーチ、そしてボロボロで這いつくばっているゾンビとボロ雑巾が混ざったかの様な状態のレディが居た。


「なあノスリ」


「何……? まだ結婚出来る年齢じゃないよ……?」


「そうだな……それでも俺は結婚したい……ってなんでじゃあああ!」


「この……ロリコンめ……」


「一瞬悪ノリしただけでロリコン呼ばわり!? と言うかノスリは自身をロリだと!?」


「ロリはロリでれっきとした長所になりうる……だからロリがマイナス要素だと言うのは……大きな間違い……悔い改めなさい……」


「す、すみませんでした……」


 あれ? この子こんな子だったっけ。


「大丈夫……私は幼女じゃないけども……ツカサを受け入れるから……」


「どうしてそうなった!? そもそも俺はロリコンじゃねぇし受け入れられるられないの問題でもない! そして俺が聞きたかったのはプロポーズの答えでもなく何があったかだ!」


 そもそもプロポーズ自体していない。


「むっ……素直じゃない……」


「はあ……俺は気持ちを全てさらけ出しましたよ……?」


 今のノスリには何を聞いても無駄だろう……他に当たろう。


 そう思いノスリを退けてベッドから立ち上がる。一瞬体に痛みが走ったが我慢出来無い程では無いので特に気にしなかった。


 そして一番まともな人であるルーナの元へ行く。


「なあルーナ、何が原因でこんな風になったんだ?」


 こんな風とはレディがボロ雑巾になってしまう様な状況の事だ。


「特に何もありませんでしたよ?」


「えっ? そんな筈は……」


「何もありませんでしたよ? 何を言ってるんですか司さん? 疲れてるんですか? そうですよね? やっぱり疲れてるんですよね? 当たり前ですよね? あれだけ頑張ったんですから。でも頑張ると無理は違いますよ? だから司さんは体をゆっくり休めて下さい。いいですか? 体を横にして目を閉じるんですよ? 何も気にせずに……ね? 何があっても気にしなくてもいいんですよ? わかりますか? 私もあなたも何も知らない、何かあっても何も無いんですよ……?」


「だ、大丈夫……だからこのままゆっくりするよ……あははははは……」


 駄目だ……渇いた笑いしか出てこない。自分でもわかる……今の俺の笑顔は凄く不自然だ。


 こうなれば頼みの綱は変態か……。でも一人はボロ雑巾みたいになってるし……。


「なあコーチ……何が原因でこうなったか教えてくれるか?」


「ツカサ頼む……! 俺は関係無いんだ! 被害者なんだ! だから俺に思い出させないでくれ!」


 俺がボーッとしている間に一体何があった……?


「い、いやあ……ごめんねボクのせいで……」


 そんな時、うつ伏せに倒れていたレディがゾンビの様に起き上がった。


「レディ……生きてたのか……」


「なんとかね……」


「とりあえず質問していいか?」


「うん、構わないよ」


「まずレディが元凶だってのはわかるんだけど何をしたんだ?」


 あのルーナが怒る程だ、何をやらかしたのだろうか?


「ボクとしてはおふざけのつもりだったんだけどねー……」


「おふざけでこうなるのか?」


「ちょっとした冗談で言ったつもりだったんだけど……流石にこれはボクとしても予想外だったかな……」


「予想外でも結果が結果だからな……」


「うっ……そりゃまあボクだって反省しているよ……」


「で、何を言ったんだ?」

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