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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag4―血と汗と涙の魔術学院―(5)

「ツカサ……」


「それじゃあ始める――」


「ツカサー!」


 コーチが嬉しそうに飛び付いて来た。


「おいやめろ! 引っ付くな気持ち悪い! って聞いてんのか!?」


「大丈夫大丈夫、くふふふっ、優しいなぁツカサ君はぁぁぁ、俺に惨敗したツカサ君はやさすぅいなぁぁ!」


「そんなことだと思ったよ! ブーイング結構気にしてんじゃねぇよ! 鼻息気持ち悪いから離れ――」


「キャー!」


「――って何だキャー……っておい! あの女の子血だらけで倒れてるぞ!?」


 俺は急いでコーチを突き飛ばして女の子の元へ駆け寄った。


「あの、大丈夫ですか!?」


 俺は女の子を抱き起こし、安否を確認しようと話しかけるもぐったりしていて反応が無い。


「おい! 何で二人共そんなに落ち着いてんだよ!?」


 こんな状況にも関わらずコーチとルーナが異様に落ち着いている事に気付き、俺は二人に詰め寄った。


 すると二人から少し気まずそうに言葉が洩れた。


「いや、だってなあ……」


「司さんは初めてかもしれませんが……いつもの事ですからね……」


「……いつも?」


「それはボク自信が説明するよ」


 俺が困惑している時、俺の腕の中で血だらけで気を失っていた筈の女の子が声を発した。


「まず、自己紹介からね、ボクの名前はレディ=ロッテン! 気軽にレディって呼んでねツカサ君!」


 そう言ってレディは握手を求めて来る。


 レディは綺麗な顔立ちをしており、目尻が垂れ気味で、サファイアの様に青い瞳と、肩あたりで緩やかに巻いた金髪が特徴的で、纏うミステリアスな雰囲気とスタイルの良さが相まって大人っぽい印象ををかもちだしている。


「ああ、よろし……じゃなくて何で血だらけ?」


 いつの間にか自然な流れで握手しようとしていたけれど、血だらけで自己紹介とかホラーだ。


「えっ? 確かに血だらけじゃ握手出来無いね……」


「……いや、握手とかどうでも良いから理由を……」


「どうでも良いとか……やっぱりボクの見立て通りツカサ君は攻めだね!!」


「う、ん……?」


「一見大人しそうな男の子が口を開けば辛辣な言葉が飛び出してくる! ……良い! そしてツカサ君の場合はコーチ君をその言葉で攻め立てるんだね! そして押し倒して! 悪戯な笑みを浮かべて攻めを楽しむ!」


 ……最初のイメージを返して欲しい。


「トドメは最後の最後で甘い言葉を耳元で囁く……良い! 実に良いよツカサ君! ……はっ! 待てよ!? もしかしたらツカサ君が二人っきりになったら受け身になるのかも! 普段はキツイ事言ってるけど二人だけの世界になると急に弱気にな……ぶへぇあっ!」


 まさかのレディの独壇場に呆気に取られていると何故かいきなりレディは鼻血を吹き出して倒れてしまった。


「えっ? おい! 大丈夫か?」


「大丈夫……いつもの事だから気にしないで……でも、こんな短時間に二回も出してしまうなんて……」


「あのー……レディさん? 凄い良い顔してますけど、今あなた血だらけですからね?」


 目の前に居た俺も血塗れである。制服下ろし立てなのに……。


「そ、そうだね洗わないと……」


 洗いに行くのは良いのだが、とりあえずこれだけは聞いておきたい。


「あのさ、何でさっきから鼻血出してんの?」


「そ、それは……あまりにもツカサ君とコーチ君が美味しす……ぶはっ! ……三度目……だと? ふふふっ……ごちそうさまです」


「へ、へー……ソッカー……」


 聞かなかった事にした。


「と、とりあえず血を洗いに行こうか……」


 そう言ってレディを促す。


「……コーチはここで……いや、ルーナもだな……自分の練習をしといてくれ……」


 俺は二人にはそう告げて演習場の外に出ようとした。


「いや、俺達も着いて行くぜ」


「そうですよ! 洗うのお手伝いします!」


「いや、……ごめんレディ、ちょっと待ってて。あと、二人はこっち来てくれ」


 俺はコーチとルーナを近くに呼んでレディには聞こえない様に声を抑えて話す。


「考えてみろ……この状態のレディの近くに俺とコーチが居たら血溜まりを大量生産することになるぞ?」


「言われてみたら……」


「そうですね……」


「じゃあルーナちゃんだけ連れて行くのは?」


「はあ……それも出来たら察して欲しいんだけど……」


「何を?」


「えっと……それはそう言う事……ですよね?」


 ルーナは気付いたのか少し顔を赤くしてモジモジしていて何かこうグッと来る…………じゃ無くて、落ち着け俺。


「えっ? ルーナちゃんはわかるの?」


「はい、一応……」


「はあ……これはあんま俺の口からは言いたく無いけどお前を置いて行こうとしたらレディは『そうやって突き放すんだね!? 放置プレイなんだね!』みたいな事言ってどうせ鼻血出すだろ?」


「確かに……」


 コーチが納得したとこでレディの所へ戻り、演習場の外へ向う。


「待たせてごめん、行こうか」


「良いよ、ところで何を話してたの?」


「えっと……二人には学校始まるまでに魔法を教えて貰ってたんだけどちょっと気になった事があってそれを忘れない内に聞きたかったんだよ」


 と、とりあえず言い訳はこんな感じで良い筈……。


「へー……ツカサ君案外真面目だねー」


「ま、まあ……田舎から出て来たばかりだからまだまだ魔法は初心者なんだけどね……」


 どうやら信じてくれた様だ。


「じゃあどこら辺の田舎なの?」


「えっ? あ、えーとそれは……あっ! その前に先生に演習場から出て行って良いか許可を取ろう!」


「それもそうだね」


 予想外の質問にしどろもどろになってしまったが演習場の出入口の近くにネアン先生が居たので無理矢理話題を変える事でなんとか免れる事が出来た。


 ちなみに現在レディの頬は赤い、しかし俺と居る事で頬を染めている訳では無く、何によるかは明言したく無いが極度の興奮によるものだ。


 そして俺達がネアン先生の元へ辿りつくと、気付いた。

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