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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag3―試験と試練―(4)

 そして、愚図る大人を放って、俺達子供二人は、室内運動場の様な、一般人も無料で自由に使える演習場へとやって来た。


 演習場は、こういったオーソドックスなタイプのものの他に、的があったり、特殊な環境を想定したもが有るらしく、そっちは有料で利用出来るそうだ。


 周囲を見渡すと魔法の様なものを練習している人や、剣を握って素振りする人などをちらほらと見かける。


「ここではあまり大きい魔法は使えませんがとりあえず魔法の基本をするのには問題ないと思いますよ」


「そっか、わかった。でも魔法って具体的にどうすればいいんだ?」


「そうですね……じゃあ理論から説明しますね」


「よろしく頼む」


「はい! 簡単に言うと魔法は魔力を消費して発動するものです。但し、魔力には体内魔力と存在魔力の二つがあります」


「体内魔力ってのは体の中にある魔力って予想が着くけど存在魔力って?」


「存在魔力と言うのは空気中に存在する魔力のことです」


「今って魔法を使う場合の話をしているんだよな……? それなら体内魔力と存在魔力の説明って必要ないんじゃないのか?」


「いえ、それが重要なことなんです。存在魔力はこの世界にほぼ無限に満ちているのですが、体内魔力は有限で、人によって魔力量は違いますから、重要になってくるんです。司さんは魔法に使うのが体内魔力だけだと思っていませんか?」


「違うのか?」


 何だか話が難しくなってきたような気がしたが、要は魔法の発動方法が二種類あるらしいという事だった。


 一つは体内魔力だけで発動するもの。もう一つは体内魔力と存在魔力を織り混ぜて発動するもの。そうする事による違いは、魔力のコントロール……威力や魔法の発動しやすさ、体内魔力の消費量に違いが出てくるらしい。


 体内魔力を多く消費すれば、威力を上げたり、発動しやすかったりするが、それではあまり魔力を使い続けられない。一方、同時に存在魔力を織り混ぜる事が出来れば、体内魔力の消費を抑え、長く魔力を使い続けられるが、慣れない魔法や、体内魔力だけでも辛うじてでしか発動出来ない魔法を使おうとすれば発動さえ儘ならないという事らしい。


 なるほど、通りでわかり難い筈である。ルーナ達にとって、魔法は二通りの発動方法があるのが当たり前で、魔法の発動方法が一つだけという発想の俺の方が珍しい……というか、可笑しいのだ。


 この世界の事をルーナやナイトさん、チャーリーから聞いたつもりなのだが、俺はまだまだ知らないことが多過ぎる。


「ルーナ聞きたい事があるんだ」


「何でしょうか、司さん?」


 とはいえ、一応は魔力については理解出来た。しかし、だ。


「魔力ってどうやって使うんだ?」


 そう、俺は生まれてこの方、魔力なんて使った事も無い。さあ、魔法の練習だ! とか言われても無理なのである。


「えぇっと……そうでしたね。なんか、こう……体の内にあるものを感じて捻り出す感じで……無理ですか?」


「無理です」


「私は今まで感覚でしてきたので……」


 ここに来て理論が逃亡しやがった。


「考えるな感じろって事ですかね……?」


「うぅっ……すみません……こればかりは理論でどうのって方が難しいので……」


「魔法以前に引っ掛かるとはなぁ……。それじゃあ、ルーナは最初はどうやって魔力を感じたんだ?」


「わ、私は物心ついた時には使えていましたので……てへっ」


 俺がナイトさんなら確実に許してた。まあ、そもそも俺は許す許さない以前に文句が言える立場でもないけれど。


 すみませんと謝られる。ルーナに悄気られると、申し訳無い気持ちで一杯になる訳で。


 どうしようか、ルーナにもわからないのなら、俺がわかる筈がない。下手な発言をしてこれ以上ルーナの顔を曇らせるのも嫌だし……。


 そんな時、突然声がしたので振り向くと、そこには茶髪のオールバックで前髪が二本だけ前に跳ねている髪型と、切れ長の赤い瞳が特徴的な長身の男が居た。


「あれ? ルーナちゃん、こんなところで何してんの?」


 一見、整った顔立ちをしているものの、その髪型や目付きから、近寄り難い印象を受けるが、調子の良い声色や、快活な笑顔を浮かべているのを見ると、そんなに悪い人には見えない。後、何かチャラい。


「珍し……って、えっ!? ルーナちゃんに男……だと……!?」


「ち、違います! し、親戚です! 親戚! アッハーハー!」


 何最後の高笑いとも言えないオペラっぽい変な笑い……。


 俺達の関係について他の人に怪しまれ無い様にどう説明するかは前もって打ち合わせはしたけれど……これは明らかに不自然だ。


「ああ、親戚か!」


 ……どうやらこのイケメンは頭が少々弱いらしい。


「ソ、ソウデスヨー。まったくぅ、何を言うんですかぁー!」


 ウフフーと大袈裟に、上品に笑い声を上げるルーナ。目が笑えていない。こちらも少しヤバいのかもしれない。


「ルーナちゃんにこんな親戚居たんだな、初めて見た。でも、何でこんなところにいるんだ?」


「え、えっとそれは……」


 しどろもどろになりながらも、説明しようとするルーナ。ちょっと見ていられないので、俺が口を挟む。本来はルーナに言ってもらう方が説得力があるんだろうけれど、今なら変に口を滑らしてしまいかねない。別に俺だけが、何言ってんだコイツと思われるのは別に構わないが、ルーナまでそう思われてしまうのは避けたい。


「俺さ、育った場所がすげー田舎だったから、魔法使えないんだよ」


「へー……今時魔法が使えないなんて珍しいな」


「ああ、だから恥ずかしながら、こうしてルーナに教えてもらってるんだけど、魔力の感じ方がわからないんだよ」


「この年で魔力を感じるところからするのは大変だろうな。でも何で今更魔法を覚えようと思ったんだ? 今まで使わなくてもそれなりに生きてこれたんだろ?」


 くっ、意外と鋭いとこを突いてくるな……。頭が弱そうとはいえ、侮れない。


「まあな、けど、いつかこの世界を旅したいと思ってて。その為にはまず色んな事を知らなきゃいけないし、魔法も使えないといけないから通おうと思ったんだけど、学園長に試験を受けろって言われちゃってさ」


 嘘はついてはいない……筈だ。さて、どう来る? 無茶な言い訳なのには変わりないけど、その中でも一番自然な言い訳だと思う。


 しかし、それに対する反応は俺の想定していたようなものとは全く違った。……というか、警戒する必要なんてなかったらしい。


「学園長……だと……?」


「それがどうかしたのか?」


「学園長は滅多に姿を見せないから、じっくり見れる機会が中々無いんだよ」


「へー……」


 それは多分あの性格だから、サボっているだけなんだと思う。今思い出しても、何故あんな人が学園のトップに立てているのか疑問である。やっぱり、あれでもちゃんとした能力があるのだろうか?

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