流星群
「ねーねー、夏休みさ、流星群見に行こうよ!」
美紀の提案に、みんな賛成する。
「いいねー! 一回流星群見てみたかったんだよ!」
「わたしもー!」
きゃらきゃらと場が盛り上がる。
わたしは、その場の雰囲気を壊さない様ににこにこ笑っておく。
くだらない、と思う気持ちを押し隠して。
***
少しこの状況を説明します。
場所は、通学路。時間、下校途中。メンバー、いつもの四人。
皆、『わたし達、親友だよねー!』を合言葉に行動している。
因みにこの『親友』という言葉、『場を盛り下げない、空気読め、悪口には基本同意、付き合い悪いと即退場してもらいます』と言外に牽制し合いながら使うのが正しい。
今は、グループのリーダー美紀が流星群を見るから付き合えと提案したところだ。
女王の命令に全員が同意した所で、日時と場所の確認。スマホにメモをする。
はぁー……。憂鬱だわ……。
こんなに嫌な気分になってまで何故、この人たちと付き合っているのかというと、ぼっちになるとクラスのボスグループに虐められるからだ。
という訳で、貴重な夏休みの一日をわたしは無駄にする事になったのだ。あーぁ……。
***
来たる流星群の日。
美紀の家に、午後一時に集合する。
「宿題、一緒にやっちゃおうよ!」
という提案の為、昼から集まったのだ。
わたしは、一つだけ宿題を残して、あとは全て片付けておいた。
終わっていないのは、数学である。残り半分。
そんな訳で、わたしだけ早く終わった。「もっと持ってくればよかった~」なんて言っておいて、面倒事は回避しておく。
ぺっちゃらくっちゃら無駄口叩きながら時間が過ぎ、美紀のお母さんに出してもらった夕飯を食べ、一人一人お風呂に入り(夜遅くまでいるので、泊まりになるのだ)、屋上へ上がる。
「楽しみだねー」
「そうだねー」
「ねー」
ワクワクした面持ちの三人と、それを偽っている一人が夜空を見上げる。
やがて。
一筋の光が走り、それを筆頭に沢山の光が雨の様に降り始める。
「うわー始まった! きれいだね~」
「ホント!」
「こんなにきれいなんだー」
確かに、とても美しい。
その正体が宇宙の塵やゴミが燃え尽きるときの光だという事を知っていても、そんな事を忘れてしまうほど、神秘的で、綺麗だ。昔の人が願いを託そうとした理由が分かる気がする。
そんな中、わたしは冗談交じりでこう願ってみた。
『――この日常が変わればいいのに。』
もう、変に気を使ったり、空気を読むことで自分を偽りたくない。
冗談だったはずなのに、わたしは途中から本気で願い始めた。
……でもこれは、少女漫画じゃない。
キラッキラの大きなお目目の自称普通な女の子に起きたことの様に、わたしにも同じ様な素敵な出来事が起きるはずは無いのだ。
虐められるか、自分を偽るか……。
圧倒的に大きく、そこを絶対に動かない現実に打ちのめされているうちに、最後の流星が消えた。
「あー終わっちゃったね」
「でもすごくきれいだったよね」
「また見たいなー」
「来年も見ようよ!」
「いいねー!」
うわ、まじで御座いますか。
来年も見なきゃいけないのか……。
まあ、仕方がない。虐められない為には。
ネガティブな答えを導き出し、結論付けた。
そのあとは、直ぐに寝る事になった。
夜も遅かったし、皆ずっと空を見上げていたので疲れたのだ。
わたしもかなり疲れていたので、正直助かった。
***
夏休みが明け、新学期が始まった。
またいつもの様な、偽りの日々が始まる。
――けれども、これは自分が選択した道だ。
どれだけネガティブな答えでも、もう決めてしまったのだ。
短ければクラス替え、長くても卒業までだ。この位我慢できなくてどうする。
現実を認識した、あの流星群の日。
日常は変わらなかったが、確かに変わったものがある。
それは、自分の覚悟。
自分を偽りながらも、大切なものを見失ったりしない様にしよう。
――そう覚悟を決めたわたしは、この現実に向き合える。




