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あなたのやり方で抱きしめて!【改稿版】  作者: 小林汐希
第二十三章 仲直りの一夜
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八十話 はじめてのお泊まり


 体は菜都実さんに手当をしてもらったときに拭いてもらったのでもう大丈夫。


 でもまだやっていないことがあって……。


 包帯の手では出来ないから、お願いするしかない。


「先生、ひとつお願いがあるんです」


「なんだ?」



「あの……、髪の毛を洗って貰えませんか? やり方はお任せしますので」


「そんなことか、分かった。任せておけ」


 私の言うとおり、先生は流し台の前に用意をしてくれた。


 先月からこのお部屋のお掃除をしていたから、この部屋にあるものとか、流し台でお湯が使えるとか、椅子の高さとかも分かっていたのが幸いした。


 流し台に背を向けて、少し後ろに傾けた椅子の上に雑誌とクッションで高さを揃えて、その上に抱え上げて座らせてもらう。


 床にマットも敷いてくれたから、椅子が滑って倒れることもない。


「さて、こんな感じですかねお客さん。きつくないですか?」


「はい、大丈夫です」


 濡れないように肩と背中に何枚もタオルを重ねてくれて、先生は私を椅子に座らせてくれた。


「リクライニングがないから苦しいだろう。すぐ終わらせてやるからな」


「本当に平気ですよ。ここまでやっていただけるなんて……」



「それじゃ始めるぞ」


「はい」


 先生は意外にも慣れた手つきで、私の髪をシャワーにしたお湯で少しずつほどいてくれた。


 もともと浴衣を着る関係で、お母さんに強めに結ってもらっていたから、その癖をヘアブラシを使って取り除くところから始めてくれる。


「お湯の加減は大丈夫か?」


「はい。ちょうどいいです」


 あの入院生活の時には看護師さんに髪を洗ってもらっていた。


 あの当時はもう切り落として短くなっていたから、いつもあっさり終わってしまったけど……。


「今更だけどさ、結花の髪ってこんなに柔らかかったんだな」


「いつも撫でてくれていた髪の毛です。約束どおりお見せできる長さに戻りました」


 今の私が後ろ髪を下ろすと腰の上くらいまである。その長くなっている髪の毛に混ざってしまった砂をシャンプーを泡立てながら少しずつ丁寧に取り除いてくれる。


「髪が長いから首筋がほとんど焼けてないんだな。これのことを言うんだなぁ……」


「不健康みたいですかね?」


 何故か先生が納得したように頷いているんだよ。


「いや、昔から男の話題で女性の上品な色気のことをうなじが綺麗と表現する。こういうのを言うんだな。実際に色白で黒髪と似合って綺麗だよ」


 「男性用のリンスインシャンプーで申し訳ない。今度から女性物の整髪料も用意をしておくから」と、私が使うシャンプーとコンディショナーの銘柄をメモしてくれた。


「さぁ洗うのは終わったぞ。起き上がれるか?」


 椅子の傾きを戻し、バスタオルで水滴を拭き取って、ゆっくりとドライヤーを当ててくれた。長髪で一番大変なのはこの時間のかかるブローなのに。先生は嫌な顔もしないし、逆に楽しそうにヘアブラシを使って温風を当ててくれる。


「先生、お上手ですね。美容院にいるみたい」


「そうか? まぁ、結花の家事ほどじゃないが、俺にだってこういう隠れた特技があってもいいだろう?」


 ドライヤーを片付けると、いつも一緒にごはんを食べるテーブルの横に座らせてくれた。


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