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日本語とは

 日本語というのは実にフレキシブルな言葉である。

……と、断言しちゃうと正統派の人たちに「日本語の乱れ」だとか言われちゃいそうだけど、そこはまあ……コメディですんで?


 洒脱なことを表す「ハイカラ」という言葉がある。そもそもは明治のころに洋装である高襟ハイカラーを着るような西洋かぶれっぷりを揶揄する言葉として生まれたものだ。

 実はここで既に日本語のゆるさが現れている。


「かっこいいだろ、high collar」

「は? はいこらー?」

「違うって、ハイ、カラー」

「ああ、ハイカラ!」

「もう……いいよ、それで……」


 こうして日本語風の発音を得たがゆえに、「ハイカラ」は日本語として使用されるようになった。本来の否定的な意味合いもはずれ、ちょっと西洋風ですよ……ぐらいのニュアンスで使われるようになったのである。

 「ハイカラ髪」「ハイカラ定食」など名詞に冠しての使用法。「あんたハイカラだねぇ」「ほんとほんと、ハイカラよ」などの形容動詞的用法のほかに、「ハイカる」なんて動詞的用法もあったらしい。

 そして現代では普通に日本語の一単語として認められているこの言葉。つい最近耳にしたのはウチの息子とじいちゃんの会話の中で、である。


「ばあちゃんが最近、『中二○でも○がしたい』ってアニメを見てるよ」

「おお、ばあちゃんハイカラな~」


 さすが我が息子、思わず耳を疑うほどのセンスである。

 彼的には年寄りを褒める言葉として「ナウい」「洒落てる」「イケてんじゃん!」などいくつかの候補が脳中を駆けたに違いない。そしてその中から選び出したのが「ハイカラ」だったのだ。


 こうして英語をもとに誰かの作り出した一単語が、れっきとした日本語として現代まで通用してしまうのも日本語の適当なところである。

 そこでアザとー、「マスる」という言葉を作ってみた。クリスマスを一人で過ごす寂しい男子諸君のために作った言葉である。


「お前、今年のクリスマスはどうよ?」

「だめだな。仕方ないから今年もマスるよ」

「お前もか。あ~あ、彼女欲しいよなぁ……」

「マスり仲間を集めてさぁ、クリパでもする?」

「やめとけ、余計むなしいぞ。ヤローばっかりでマスりあいなんて」


……多分、日本語として定着はしないだろう。

 ちなみにこの言葉、クリスマスの『マス』と右手が恋人男子の……こほん……な行為を掛けたものであるが、実はこういう掛詞の手法は和歌の中にも見られるほどにその歴史は古いのだ。

 例えば百人一首で有名な「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふるながめせしまに」という和歌、この中にある「ふる」は雨が『降る』と歳を『経る』の掛詞だという。「ながめ」が『長雨』と『眺め』の掛詞であるということも併せて考えれば、日本人が昔っから駄洒落好きだということがお分かりだろう。

 こういうフレキシブルな言葉の使い方が許されるのは日本語が感覚的なものに重きを置く言語だからでもある。

 そして、友達との会話の中などではこの駄洒落や造語の名人なのに文章を書くのは苦手だという人が多いのは、学校での『作文教育』によるものだ。

 例えばうちの娘が小さいころに書いた作文……


『おともらちが、あたし、にゆいました。』


 これがきっちり添削だけされてしまう。


『おともだちが、わたしにいいました。』


 アザとー的には余計なことすんなああああああ!なのである。

 小さい子が普段は発音しかしていない言葉を文字で表そうと苦心惨憺する、その愛くるしい可能性が台無しである。

 『おともらち』はさすがに舌っ足らず過ぎるだろう……と、萌えツボではあるが、『言う』の表記が『ゆう』なのか『いう』なのか、『ゆー』なんて書いちゃう強者もいるぐらい、子供達の悩みどころなのだ。

 これこそが感覚的に日常の中で使っている言葉を文字にする難しさであり、われわれ書き手が大いに利用するべきものでもある。

 先出の作文をもう一度見てみよう。


『おともらちが、あたし、にゆいました。』


 「あたし」の後ろになぜ点を入れたのか、小さな子供と会話しているつもりでこの文章を読めば分かる。何かの理由があって「あたし」を強調して発音したかったのだ。

 さあ、その単語だけを強調したいとき、あなたはどうしますか?

 そして、ウチの娘の作文がそういう意図で書かれたものだとしたら、不正解だとあなたは言い切れますか?



「文章表記の落とし穴と利用法(予定)」に続くっ!

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