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2人の少年

春の暖かい光が差し込む朝、山の朝はまだ少し肌寒い。木々の間から柔らかい木漏れ日が漏れ、川をきらきらと反射させている。その川を上流へとたどっていくと、ひっそりと佇んでいるひとつの家がある。


「っおし!あと1杯くんでくるだけだわ」

両手に持っていた木のバケツを、少し深い井戸のようなところにひっくり返す。そこには水が溜まっていて、ジャボンと大きな音をたてて波紋が広がった。貯水場に蓋をおき、空になったバケツをひとつ右手で掴んで家を飛び出した。


この家にはナツが15の時から1人で住んでいる。川から水を、森から木の実や枝を、魚や鳥や小動物の命を、自然の恵みを少しずつ分けてもらいながら毎日を生きている。今は2日に1回の水汲みをしているところだ。貯水場はバケツ5杯でいっぱいになり、そこから水を食事や掃除などに使っている。あと1杯。


地面を思いきり蹴って進む。今日もいい天気だ。なんだか嬉しくて川までの道を走り抜ける。バケツを持っている右手は大きく広げられていて、円を描くように振りまわしていた。

水辺までくると、ゆっくり息を吐き出してそっと屈み込んだ。透き通った水に、バケツを沈めてーーー


ーーガラガラッ



なに⁉石が崩れ落ちる音と、人の叫び声のようなものが聞こえた。とっさにバケツを放り投げて音がした方向へと走り出す。葉や枝をかき分けて進んだ先には、倒れている1人の少年とそばに膝をついている1人の少年が目に飛び込んできた。


「ターナさん!大丈夫ですか⁉お怪我は⁉」

「…っ、大丈夫ですよ。ただ、少し足を痛めたようです。」

そう言うと倒れていた少年、ターナはゆっくりと体を起こした。

「…すみません。私の不注意です。足を見せていただけませんか?」

心配そうな顔をする少年に、ターナはさすっていた足をゆっくりと前に伸ばした。


っっ!

ターナの足は離れた場所にいたナツでも、はっきりとわかるほど赤く腫れ上がっていた。


「っっ!こんなに腫れて!早く冷やさなくては…。ターナさんはどこか安全な場所で座っててください。」


ーーとっさに声が出た。


「っはい!!私の家ならすぐ近くだわ!簡単な手当もできるし、こっちに来て!!」


驚いた顔をした少年はとっさにターナの顔を見た。ターナも少し驚いた顔をしたが、少し微笑むとゆっくりと頭を下げた。

「すみません。お願いします。」

少年も一緒に頭を下げて、感謝します。と、一言礼を言うとターナの左肩に素早く回り込み、腫れた左足をかばうように支えながらナツの後についていった。

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