身内の命と引き換えに、無敵の力を1日使える伝家の宝刀、ホントウ嘘を断ち切れず
我が家には家訓と共に【伝家の宝刀】が伝わっていた。
家訓には【伝家の宝刀】を抜いてはならぬ、とある。
【伝家の宝刀】は、鞘から抜けば、必ず勝利をもたらす無敵の宝刀だとの言い伝えだ。
ただし、【伝家の宝刀】を使用すれば家から男の死者がでる。
使用した者の父か、使用者の父の子供の男性、つまりは使用者の兄か弟、もしくは使用者本人。
そのいずれかが翌日【呪】で命を落とす。
例えば男4人兄弟の僕が【伝家の宝刀】を使用すれば、父上か、僕等4人兄弟の誰か1人が【呪】で命を落とす。
かわりに1日だけ無敵に近い勝利を得る。
我が家の【伝家の宝刀】は、そんな家宝。
ある日、『武装した盗賊』に家を襲われた。
夢中になって応戦していたが、勝てそうに無かった。
無我夢中で僕は【伝家の宝刀】を持ち出して抜いてしまった。
伝家の宝刀はいい伝え通り、凄い切れ味
盗賊を剣や鎧ごと一刀両断してしまった。
盗賊をあっと言う間に始末出来た。
でも……
「しまった。いい伝えどうりなら、父上か僕か弟達が死んでしまう。僕はなんて事を……」
僕が悔いていると父上が優しく
「良いんだ。あのままでは、どっちみち全員殺されていた。良くやった」
と褒めてくれた。
確かに、だいぶ危なかった。
「父上。でも……」
「みなまで言うな。私はオマエさえ助かれば命など惜しく無い」
僕は長男、この家の跡継ぎとして大切に育てられた。
3人の弟達も、まだ状況を把握出来ないくらい幼い弟ですら、僕を責めるどころか肯定してくれた。
我が家の家訓【伝家の宝刀】の言い伝えが正しければ、明日には僕等5人の中の誰かが死ぬ。
僕は泣いた。
両親と僕達4兄弟は、その日の夜、別れの盃を交わした。
と言っても兄弟全員未成年。
産まれて初めてのお酒。
美味しくは無かったが、忘れられない味
僕が父と楽しく食卓を囲んだ最後の記憶になりました。
翌日の朝。
『隣の家の家長』が、一目でわかる酷い呪いで死んでいた。
我が家の言い伝えと死体の状況からみて間違い無い。我が家の【伝家の宝刀】の呪いだった。
僕等の家からは死人は出なかった。
つまり……
僕等兄弟は死人が出なかった事に歓びあったが、母上が青い顔でガタガタ震えていた。
父上は怒った顔でぷるぷる震えていた。
「オマエ……」
「アナタ……」
両親は見た事もない夫婦喧嘩を始めたが、結局父上が夫婦喧嘩に勝ったらしい。
その日を境に父上は、母上を問い詰め責め殴りはじめた。
母上はモノモイエナイホド精神を病んだ。
【伝家の宝刀】の呪で父上も母上も兄弟も死ななかった。
隣の家の男が死んだ。
と言う事は、つまり……
僕の本当の父上は……
優しかった父上は死ななかった。
母上も喋れ無いほど病んだが生きている。
でも、その日から、あんなにも僕等に優しかった父上は、ある意味いなくなってしまった。
父上は荒れた。
母上に暴言暴力をふるいだし、僕にも辛くあたるようになった。
母上は
『誤解だ、何かの間違いだ』
と病む前は言っていたが、もう何も喋らない。父上は母上の浮気托卵を確信していた。
ある意味【伝家の宝刀】の呪いは隣家だけで無く、我が家にも降り注いだ。
僕は優しかった父上を失い、本当の父上も失い。
母上も不幸になったと思った。
あの日から、しきりに父上は、僕に【伝家の宝刀】を使う様に強制する様になった。
僕が【伝家の宝刀】を使って、多分僕の本当の父上、隣家の当主が死んだから。
更に僕が【伝家の宝刀】を使えば、僕の兄弟か僕の父上が呪われて死ぬ。
僕の父上らしき『隣家の当主』は死んだ。
つまりはもう一度【伝家の宝刀】を僕が使えば……
『僕』か『父が僕と同じ』兄弟が死ぬ。
『托卵』された子供が死ぬ。
僕の他、兄弟に『托卵児』がいれば死ぬ。
その事を我が家の父上が望んでいる。
僕等4人兄弟。
誰が『我が家の父上』の本当の子供で、誰が『死んだ隣の家の家長』の子供かわからない。
母上は病む前に、『全員父上の子供だ』と泣いてすがったが、父上は信じなかった。
父上は僕に【伝家の宝刀】を使わせて、托卵児をあぶり出し排除しようと計画したのだ
僕は【伝家の宝刀】を使う事を強制された
さんざ拒否したが、父上に母上を人質に取られ、【伝家の宝刀】を手に渡され、無理やり強力な山賊団討伐に行かされた。
山賊討伐には成功した。
山賊が略奪で集めていた財宝や美女は、丸々我が家が吸収して家は潤ったが……
その結果……
弟が【伝家の宝刀】の呪いで死んだ。
僕は次に戦争に参加させられた。
僕は弟の死に落ち込み、荒れ果て、捨て鉢になって死ぬ覚悟で敵陣に突っ込んだ。
僕が戦場で死ねば良い。
手には【伝家の宝刀】
結果、しゃにむに突撃して気がついたら敵将を討ち取り大手柄をたてていた。
国王から我が家は褒美を与えられた。
また弟が【伝家の宝刀】の呪いで死んだ。
【伝家の宝刀】の呪いで
弟が二人も死んだ。
弟二人も父上の子供では無かったのか?
死んだ弟達は、それでも僕の兄弟で、母上の子供には違い無かった。
僕も病んだ母上も泣いた。
父上までも真っ青な顔色になった。
この段階で父上の子供の可能性があるのは、1番父上に似ている、1番小さな弟一人。
僕は……
「もう嫌だ。僕を殺してくれ。」
と父上に泣いて頼んだ
僕【伝家の宝刀】を使う事を、拒否した。
そしたら、その日の夜に父上の配下に寝込みを襲われた。
襲われたとき僕は寝ていた。
反射的に身を守る為、カタナを抜いた。
枕元に置いていた僕の刀が【伝家の宝刀】にすり替えられていた。
僕はまた【伝家の宝刀】を使用してしまいました。
僕か、残った最後の弟が明日には死ぬ。
残った弟が父上の子供なら僕が百%死ぬ
兄弟二人共が父上の子供で無ければ、二分の一で僕が死ぬ。
「どうか僕が死んで下さい」
そうすれば最後に残った1番小さな弟は、父上の子供かどうか判断出来なくなる。
幸い1番小さな兄弟は父上に似ている。
父上の事だ。
今回僕が死ねば、最後に残った弟は、父上の子供として大切に育てられる事になる。
この家の跡継ぎとして
僕はそれを望んだ。
1番下の弟は誰よりも僕になついていて、僕にとって僕よりも大切だったから。
「もっと早く僕が自害すれば良かった」
阿呆の知恵はあとから出る。
僕は後悔した。
そして……翌日
最後に残った幼い弟も【伝家の宝刀】の【呪い】で死んだ。
兄弟の中、僕だけが生き残った。
もう、僕に兄弟はいない。
そして……
既に死んだ、たぶん僕の本当の父親。
『隣家の家長』には男の子供がいなかった。
つまり……僕にはもう、血の繋がった父も、男兄弟も多分いなくなった。
僕の本当の父親に、隠し子でもいない限り、次に【伝家の宝刀】を使えば僕が死ぬ。
もしも隠し子がいれば、四連続で僕の本当の父親、兄弟×3人が、立て続けに死ぬ事は、たぶん確率的に無かっただろう。
つまり、
ほぼ確実に、
僕に兄弟は、もういない。
次に【伝家の宝刀】を使えば僕が死ぬ。
今までは死にたかった。
他の兄弟を生かす為に、【伝家の宝刀】を使って死にたかった。
でも……今死ねば犬死にだ。
意味が無い。
父上の、怒りが幾分晴れるだけだ。
モット早い段階で、父上を斬り殺せば良かった。と後悔したがもう遅い。
少なくともそうすれば、兄弟達は死なずにすんだ。
まさか兄弟全員の父親が、僕と同じだとは思わなかったから……
僕一人が父親が違うと自己憐憫してたから
僕は父上にも、まだ情があったから
ズルズルと兄弟達を死なせてしまった。
こうなるとわかっていれば……
知っていれば……
悔やんだが遅い。
母上は真実を伝えてくれず、病み喋れなくなる前に、子供達は全員父上の子供だと言っていたのに……
母上が、せめて僕にだけでも本当の事を話してくれていれば、こんな事には……
母上が浮気なんてしなければ……
僕等は産まれて来なかったかもしれないが、こんな悲しい事にはならなかった。
僕は母上が憎かった。
母上は父上との夫婦喧嘩に敗れ精神を病んで話せなくなった。
父上は憎かったが、母上に裏切られて、可愛がっていた子供達は全員自分の子ではないと思い込み、父上も精神をやられている。
哀れでもあった。
父上は更に僕に【伝家の宝刀】を使わせようと、あの手この手。
僕を殺したいようだ。
もはや父上も精神を病み悪鬼の様だ。
僕は【伝家の宝刀】を使う事を拒否していたが、父上に責められ、父上に責められる母上を見てるうちに、だんだんどうでも良くなってきた。
この頃には、僕は可愛がっていた全ての兄弟を無くし自暴自棄になっていた。
弱ってやけになっていった。
父上の【伝家の宝刀】使え圧力もあった。
僕は死に場所を探した。
どうせならと、この国最強の男に生死不問の『一騎打ち』を申し込んだ。
勝っても呪いで死ぬ。
負けて死んでも良い。
死んで元々
ならば国の頂点に挑んでみたかった。
死ぬ前に死力を尽くしてみたかった
アッサリと僕の願いは叶った。
前の戦争で大手柄を立てていた僕。
先方は僕に少し興味を持っていたらしい
戦う理由を全て伝えて、どっちにせよ、あらかじめ僕には余命が無い事を伝えた。
そして……
「せめて国最強の英雄と戦って死にたい」
そう願いでると、国最強の英雄は応えてくれた。
この国の英雄は……僕の憧れ。
僕が小さな時からの英雄。
僕には勝ち目など無い程、無敵で、素敵で、僕の憧れの人だった。
僕は願ってもない、素敵で無敵な死に場所を得た。
死力を尽くして死ねる、最高の死に場所。
久しぶりに心が踊った。
【伝家の宝刀】を手に、僕は国王の前で国の英雄と殺し合い、そして……勝った。
国王の前で、後々まで語り継がれる程の熱戦の末、僕はぎりぎり勝ちを拾った。
勝ってしまった。
その日の僕は強かった。
僕は死ぬ程不幸だったから……
死んで元々覚悟も段違い。
死を覚悟した僕は大胆で【伝家の宝刀】の力もやはり絶大だったから……
あと、死んだ弟達も僕の背中を推してくれたのかもなぁ。
僕は、絶対に勝てないと思われていた、この国の英雄を殺した。
予想外の結果に観戦していた国王一同驚き、英雄の死を嘆き、しかし新たな若き英雄の誕生、僕を褒め称えてもくれた。
僕の憧れの英雄は最後に
「満足だ。儂の最後にふさわしい熱戦だった。我が国に老木は去り若木が芽生えた。満足だ」
そう言って僕との戦いの中死んだ。
僕の憧れの英雄は、かなりの高齢で、彼にも余命があまり残っていなかったと後から聞かされた。
彼は、この戦いが決まると僕に同情し、そして……この戦いを、喜んでいたらしい。
『老骨が我が国の若者の役に立てる』と
僕はどうせ死んでしまうのに……
手心を加えられたのかも知れない。
手心を否定したかったが、
その反面……僕の英雄は手心を加える、そういう男であっても欲しかった。
彼は言った。
「不幸が我が国の男を強くする」
と……
僕の憧れた英雄は、最後までも憧れのままでいてくれた。
僕は満足だった。
初めて【伝家の宝刀】を使ったあの日から、父上の怒った顔色は、僕が英雄に勝った後も最後まで変わらず。
父上は僕を褒めてくれなかった。
この日が父上と僕の最後の別れになる。
翌日【伝家の宝刀】の呪いで、
父上が死んでいた。
僕は生きていた。
わけがわからなかった。
なんで???
わけがわからない。
謎が解けたのは数日後……
父上の葬式の日
謎がアッサリと解けた。
死んだ父上の棺桶に取りすがって、『隣の家の死んだ家長』の母親が号泣していた。
尋常では無く、父上の死を哀しんでいた
その様子を見て、そこで僕は理解した。
1番最初に死んだ、
『隣の家の家長』は僕の父親では無かったのだ。
『僕の兄』だった。
僕の兄弟だった。
だから【伝家の宝刀】の呪いで死んだ。
父上は、兄の事を知らなかったのだ。
たぶん……
つまり……母上が『隣の家の家長』と浮気して僕が産まれたのでは無かった。
僕が産まれるかなり前に、父上が『隣の家の家長の母親』と浮気していた。
それで『僕の兄、隣家の家長』が産まれていたのだった。
僕の兄は『托卵児』で一人っ子だった。
誰にも知られず隣家の家長になった。
父上も兄本人も恐らくは知らぬ間に、隣家を遺伝的に滅ぼし乗っ取った。
父上は浮気しておきながら、『隣の家の家長が自分の子供』だと気が付きもせず、その母親からも、知らされてなかったのだろう。
父上の長男は僕だと聞かされていた。
もしも兄がいたら、兄が例え『隣家の既婚女性が浮気で産んだ托卵児』であっても
父上は強引に子供を取り上げ、我が家の時期家長にすえたはずだ。
恐らくは『兄の母』もそれを知っていて子供を奪われるのを恐れ黙っていた。
もしくは父上よりも旦那を愛していたのかも知れない。
なら、浮気托卵などするな。と思ったが、浮気托卵する様な倫理観に、何を言っても無駄だろう。
浮気者は頭でなく下半身でモノを考える。
何も考えて無いに等しい。
そのせいで、惨劇がおこった。
せめて父上と不倫した隣家の女が、父上に本当の事を伝えていれば……
僕の兄弟も父上も全滅しなかったのに、僕は悔しかった。
僕は『死んだ隣家の家長』の父(兄の育ての親)に全てを打ち明けた。
兄の父は話を聞いて激怒、兄の母の浮気と托卵を問い詰めた。
隣家は大騒動になった。
三日三晩夫婦喧嘩した結果、隣家は母親が夫婦喧嘩に勝ったようだ。
兄の母は浮気も托卵もしていない。
兄は僕の兄ではない。
僕が嘘をついていると、そういう結論になっていた。
兄の父は、初めは僕の言葉を信じていたが、最終的に兄の母の言葉を信じたかった様だ。
無理もない。
既に兄は死に、証拠も無いに等しい。
兄の母の一族も嘘を偽証する証人をたて、兄の父はそれを信じた。と言うか信じたかったのだろう。
僕は本当の事を語ったが嘘に負けた。
とかく嘘をつく事と、秘密を隠す事において、男は女に遠くおよばない。
女の嘘がバレたりバレなかったりで、傷口をひろげるのもまた、女の特徴でもある。
男と女
男女相克。
狸と狐の莫迦試合。
男性は女の嘘に、女性は男の突拍子も無い行動に振り回されて、この世に悲劇は満ちていく。
親の因果が子に巡り。
僕はその莫迦達の莫迦試合に巻き込まれた
僕は、そのせいで兄弟全てと、莫迦な父上を失ってしまった。
その後
僕は山賊退治、戦争の手柄、英雄との死闘
それらが功績と認められて、王家の末姫との婚約が決まりかけているが……
僕はその段階で、既に年下の末姫の女の嘘に振り回されて、うろたえている。
我が家に伝わる【伝家の宝刀】を持ってしても、女の嘘は断ち切れそうに無い。
可愛い末姫に良い様に騙され、ふりまわされている僕は、まるで道化の様だ。
しかし……我が家は兄弟が全滅した為に、僕には家長を降りて逃げる事もできず、僕のかわりに、嘘つきな末姫を押し付ける兄弟もいないのである。
国の英雄を倒した僕も、女の嘘には、また勝てそうに無かった。
年下の小娘に振り回される僕を見ていた母上が、久しぶりに笑っていた。
母上の病が治って、また話せる様になれば良いな。
と思っていたが……そう思えたのは、
それが最後の日になった。
翌日から母上は、また話せる様になった。
そして、その日に母上と末姫の二人は……壮絶な嫁姑戦争を引き起こす。
恐ろしく拮抗してドロドロした戦争。
僕は、それに巻き込まれて死にかけるが
嫁姑戦争においては【伝家の宝刀】は、なんの役にもたってくれなかった。
女は強かった。そして怖かった。
【伝家の宝刀】の呪いが父系中心に発揮されて、女には効かないのもむべなるかな。
浮気をしておらず
本当の事を言っていた母上。
浮気をしていた父上
浮気父上に母上は信じて貰えなかった。
その父上も浮気相手の嘘に長年騙されて、結果我が一族は絶えかけた。
隣家は托卵で血を継承する者がおらず、一族が今後絶える。
女の嘘や托卵は
ある一族の血を簡単に絶やす
なので我が家の家訓に【托卵禁止】を追加した。するのもされるのも禁止だ。
僕は、この事を忘れぬ為
後の子孫の為に
【伝家の宝刀】に文字を刻む事を考えた
【本刀嘘を断ち切れず。】
一族が絶滅しかけた経緯を書いた文書、家訓と共に、子孫へ嘘や托卵には重々注意する様にと戒めを込めて
【伝家の宝刀】の刀身にそう刻もう。
過ちを繰り返さぬ為に
嘘は怖い。
本当の事で嘘を断ち切る事もあるが
時に嘘は本当の事を断ち切り災いを呼ぶ
嘘は見抜くのが難しく、人はまた容易に利益の為に嘘をつく
利害関係を見れば、嘘を見破る事も可能だが……
嘘をつく証人が複数いれば、嘘を見破り証明する難易度は跳ね上がり、本当で嘘を断ち切る事は不可能に近くなる。
なので先祖代々、コレからも受け継ぐであろう、憎く大切な【伝家の宝刀】に言い伝えと共に恨みを込めて
【本刀嘘を断ち切れず】
と刀身に文字を刻もうとして、僕は自らの過ちに気がつき、頭を抱え悩む事になる。
国の英雄に勝った新たな英雄の話、
【伝家の宝刀】の話と共に、この話は尾ビレ背ビレがついて広まった。
この話が広まったせいで
僕は悲劇の英雄扱い。
隣家の兄の母は嘘がバレて離婚された。
隣家の兄の父は真実を見抜けぬ阿呆扱い。
自分も浮気や托卵をしている者だけが、必死に僕を罵り隣家を庇う。
浮気された者達は、その逆に必死に僕を庇い、隣家を罵る。
そして……女の尻に敷かれている全ての男達が僕の熱烈な味方になった。
世の中に、こんなにも嫁の尻に敷かれ、嫁姑戦争で敗北した男達がいるとは思わなかった。
嫁姑戦争に悩む沢山の相談を持ちかけられたが、僕もまた嫁姑戦争の敗者である事を伝えると、
『国の英雄でもそうなのですか?』
と、驚くと共に、何かのつきものが落ちたかのように、苦笑して帰っていく男達に……
「離婚したいなら『姑の味方』を、離婚したくないなら『嫁の味方』をすると良い」
と僕はアドバイス。
いい嫁を持った離婚したくない男達は『嫁の味方をする』と言う。
悪い嫁を持った離婚したい男達は『姑の味方をする』と言う。
無駄なのに。
普通の戦争ならいざ知らず。
嫁姑戦争で、わざわざ僕に相談しに来るボンクラ男が、男と女の莫迦試合に勝てる訳が無いと思う。
相談する相手を間違うボンクラ達だ。
たぶん負けるだろう。
ただ、彼らは莫迦試合の戦いに勝っても負けても、僕の味方でいてくれた。
彼等にとっては僕もまた、同類に見える様だ。
僕が戦争に行くと、彼等もいる。
僕は強力な軍団を手に入れたに等しい。
僕は【伝家の宝刀】を抜かなくても、無敵になった。
何せ僕の軍団は無敵で素敵な連帯感で結ばれている。
嫁姑戦争以外は怖くない。
酒が飲める様になってから、隣家の兄の父と和解した。
老いた彼は謝罪の後、酒屋へ誘われた
それから、たまに二人で酒を飲む事がある
僕等が酒屋で飲んでいると、我が軍団員も集まってくる。
それから『嘘を見抜けぬボンクラ』と呼ばれた兄の父は、『嘘を見抜けぬ、嫁に騙された可愛そうなボンクラ』へとランクアップした。
何せ我らが軍団員も、その同士か予備軍だ。 他人事ではない。ある意味仲間だ。
酒の肴に【伝家の宝刀】の噂が尾ヒレがついて更に広がった。
代を重ねる家に、
後年いつの間にか【伝家の宝刀】と共に、我が家の家訓は、
我が国の【伝家の宝刀】と王家の家訓へと変化、代々受け継がれる事になっていった。
後年その刀身には【本当、嘘を断ち切れず】と刻まれている
【本刀嘘を断ち切れず】と刻まれている
と2つの説がでたが、
確認する為にも、刀身に文字を刻む為にも【伝家の宝刀】を鞘から抜かなければならず。
鞘から抜けば呪いで死人が出るので、確認する事は難しく、刀身に文字を刻むのも、当時の状況から不可能だったはずだ。
と、刀身には何も刻まれて無い説が更に加わり【伝家の宝刀】と僕の噂に更に尾ヒレが増えた。
その後、そんな言い伝えがあってさえ、なお托卵を見破れ無いボンクラ末裔王が現れ【伝家の宝刀】を継承、妻に托卵されるまでの間、我が国は栄えたそうだ。




